何だそんなに短いのか・・・と思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、ショートコースの10分間は充分な走行時間で、エアコンのないクルマの窓を閉めて(このコースでのルールは運転席側だけでしたが、一般的には全ての窓を閉めなければなりません)、レーシングスーツにヘルメットを被り、ノンパワーのステアリングと格闘する10分間は、普段あまりハードな運動をする機会のないオジサンに大汗をかかせるには充分な時間です(苦笑)。
特にショートコースではその走行時間の殆どがコーナリングをしていると言っても良い状態ですので、集中力を持続させるだけでも大変です。比べるのは失礼かも知れませんが、ボクシングであれば3分間戦えば休めるのに対して、この10分間は休む暇がないのです。
「モンツァ」クラスに続いてコースインしたのが「スパ・フランコルシャン」クラスで、今回のエントラントは国産車から輸入車まで様々なバリエーションに富んだものでした。


このクラスには「飛び入り参加」でALFAROMEO Giulia Sprint GTAが参加することとなりました。このGTAは外観は美しいストラダーレの装いが保たれていますが、その中味はAUTODELTAのチューニングパーツが奢られており、オイルパンも軽量化のためにマグネシウム製に交換されているそうです。


早速パドックにS氏所有のALFAROMEOと並べて写真を撮らせていただいたのですが、その眺めは壮観で、そこだけ当時のイタリアのサーキットにタイムスリップしたかのような眺めでした。

レースそのものは皆さんのスキルが高く、スピードの速いポルシェ911やロータス23Bは全く危なげなく他車を追い越して行きます。


注目していたドタ参のALFAROMEO Giulia Sprint GTAですが、最初は「大人しく」速いクルマにはラインを譲りながら走行していたのですが・・・。

だんだんドライバーのウォーミングアップも出来てきたのか、徐々にペースが上がり始め、明らかに攻めた走りに変って来ました。

やはりGiulia Sprint GTAはこうじゃなくてはいけません(笑)。
続いてのクラスは「シルバーストーンA」というクラスで、どうやら英国車を中心としたチューン度が高い、もしくはドライバーのスキルが高い上級者(車)のクラスのようです。

注目すべきはやはりロータス23Bでしょう。

ロータス23はコーリン・チャップマンによりクラブマンレース用に開発されたレーシングマシンですが、日本での活躍はやはり1963年の第一回日本グランプリでの活躍でしょう。出場した三台のロータス23は表彰台を独占し、ワークス状態で参戦していた日本のメーカーとの差を見せつけられました。ちなみにその時のロータスのドライバーの一人が後のF-1チームマネージャーとなるあのピーター・ウォー氏であったことはあまりに有名なエピソードです。
軽量、安価で戦闘力が高いロータス23は人気があり、ロータスが販売を終了した後もレプリカモデルが販売され続けたのですが、今回参加した2台はオリジナルとのことで、一台にはHOLBAYチューンのエンジンが搭載されていました。

このクラスのドライバーがサーキット走行に慣れたドライバーであることはすぐに分かりました。
スタート直後の第2コーナーでも全く危なげなくバトルを繰り広げて、見る側を楽しませてくれます。

そしてここから今回のイベントで白眉となるレースが展開されました。
スタートから先行する2台のロータス23Bを後方から一台のMGBが追い上げ始めたのです。
このMGBの速さはタダモノではなく、排気量にして倍もあるBig Healeyも簡単において行かれてしまいます。
そしてラップしてロータス23の後方に付けるとその間隔をどんどんと詰めて行きます。それは明らかに着いて行くというよりオーバーテイクのチャンスを狙っているドライビングでした。


そして最後にはホームストレートで多くの観客が見ている前で、2台のロータス23Bを鮮やかに抜き去り、観客の喝采を浴びていました。

そのままロータス23Bを後方に従えて走行するMGBは決して限界というより、まだ余裕があるように感じられました。

聞けばドライバーはかつてサニーをチューンし、ツーリングカーレースで活躍したO氏とのことで、このMGBもO氏自らがチューンしたものとのことです。MGBといえば搭載されているエンジンは単なるOHVエンジンで、常識で考えれば、チューブラーフレームにDOHCエンジンをミドに搭載した純粋なレーシングカーであるロータス23Bとは勝負にならないと思うのですが、目の前で繰り広げられたこのデッドヒートはその常識を見事に覆してくれました。もちろんロータス23BのドライバーがO氏に「敬意を表して」譲ったのかも知れませんが、少なくとも私にはどちらも手を抜いていたとは思えませんでした。
こうしたヒストリックカーイベントでのレースの楽しみの一つが、往年のライバル同士のバトルやレースでの名場面を再現できることで、ドライバーにその知識とそれらに対する敬意があれば、単にヒストリックカーがサーキットを走っている姿だけでなく、こうして観客を唸らせるバトルを楽しむことができるのです。
コース上ではまだまだ魅力あるクラスのレースが続いて行きます。
クリック↓お願いします!


にほんブログ村
スポンサーサイト