しかし、こうしたショートサーキットを走った経験がある方はお分かりかと思いますが、ショートサーキットでは大排気量車のアドバンテージがなく、あらゆる排気量のクルマが安全な速度でサーキット走行を楽しむことができる魅力があります。

今回の茂原のコースをご紹介しましょう。茂原は数少ない反時計廻りのサーキットです。フロントストレートは殆ど無いに等しく、しかも上り坂となっています。スタートするとすぐに①、②コーナーという複合コーナーをクリアしなければならないため、そのわずかなストレートでもトップギアでアクセルを全開にすることはできません。
従って、「踏めば速い」大排気量のクルマもスピードを出すことができず、小排気量のクルマに追い回されることになります。また、各コーナーはロングコースの基準からするとその全てが「S字」、「ヘアピン」というレベルのコーナーで、ロングコースばかり走っているドライバーがショートコースだから・・・とナメて走ると、その休む間の無いハードさに自分の体力の無さを思い知ることとなります。
サーキット走行は各クラスに分かれ、午前と午後の2ヒート制で実施されます。
クラスは5つに分かれており、モンツァ、スパ・フランコルシャン、シルバーストーンA、B、そして船橋とネーミングされています。
これも主催者がこのイベントをどのように考えているのかを良く表していると思います。これらのクラスは車両の製造年や排気量といった一般的な分類ではなく、エントラントが自らの愛車をどんな風に走らせたいか・・・という「思い」での分類なのです。
この主催者の姿勢はレース運営にも顕れており、予選などはなく、スターティンググリッドはタイム順ではなく任意で選ぶことができます。ピットロードから先頭でコースインすればフロントローからスタートすることができ、最後尾からスタートしたいと思えば、最後にコースインすれば良いのです。主催者が計時を行わないのも、レースの結果に順位をつけないのも、このイベントが勝敗を争うためのものではないことを表しています。

参加者も互いのクルマとドライバーのテクニックを見定めながらバトルを楽しんでおり、そこには勝ち負けといった無粋な価値基準はなく、お互いに「楽しかったね・・・」と言い合える結果こそがこのレースの全てであると言えるのです。
しかし、誤解をされないように書いておきたいのは、エントラントの皆さんは決してそうしたタイムを出す走り方ができなかったり、否定されているワケではなく、出走した方の殆どがベテランドライバーで、かつては、また現在もレースシーンで活躍されていた方々であることは、そのドライビングテクニックを見ると明らかです。
サーキット走行が単なる速度競技で、「速いのが偉い」と考える方にはなかなか理解できないかも知れませんが、全てのクラスにおいて、エントラントの皆さんがあのクルマとバトルしてみたいから・・・と明らかに速度調整をして相手を「待ち構えている」様子を見て取ることができました。それは敵機との空中戦ではなく、編隊アクロバット飛行のような趣であったと言えばお分かりいただけるのではないかと思います。
さて、最初のクラスは「モンツァ」というクラスでイタリア車を中心としたエントリーのクラスでした。
このクラスには本格的なサーキット走行が初めて・・・というZAGATORさんもエントリーしており、しかもそのクルマはALFAROMEO Giulia 1300GTJという彼が日常で乗るクルマとは全く異なるヒストリックアルファでした。

正直、それを最初に聞いたときには驚くと共に、クルマを壊さないか・・・と心配したのですが、何とか他の車両の邪魔をせずに、無事に走りきることができました(苦笑)。しかも、どうやら楽しかったことはゴール後の彼の表情を見れば分かりましたので、これからはサーキット走行にハマるのかも知れません(笑)。
気になった他の出走車もご紹介しましょう。

これもZAGATORさんのドライブしたGiulia 1300GTJと同じく、この大会の監事であるS氏が所有するALFAROMEO Giulia TI Superです。TI SuperはGiulia Sprint GTAが登場するまでALFAROMEOのCompetitionモデルとしてツーリングカーレースで活躍したモデルで、ノーマルのGiulia Superのエンジンをチューンし、ボディ各部を軽量化していました。Giulia Sprint GTAはあまりに有名ですが、現在ではそれよりもはるかに希少なモデルだと言えます。

同じくS氏所有のALFAROMEO Alfasud Sprintです。重心の低い水平対抗4気筒エンジンを搭載し、軽量なボディをFF方式で走らせるSudはアルファ・ロメオの歴代のモデルの中でも屈指のハンドリングマシーンと言われ、この茂原のようなショートサーキットでは生き生きと走らせることができるモデルです。

しかし、製造品質の悪さとボディの錆が原因で、サーキット走行以前の問題を抱える個体が多い中、このS氏のSudは新車以上のコンディションで、何の問題もなくサーキットを駆け回っていました。正直、こんなに生き生きと走るSudは初めて見ました(苦笑)。

AUSTIN Healey Spriteをベースにレンハムというコーチビルダーがグラスファイバーのボディを架装し、ル・マン24時間レースに出場したル・マンクーペと呼ばれているものです。

ベースとなったHealey Spriteは「カニ目」と呼ばれ(英国ではFrog Eye)可愛い印象であることに対して、このレンハムが製作したボディはその印象が全く変り、当時の英国の精悍なコンペティションマシンに変貌しています。

ショートサーキットが最も似合うのがこのABARTHではないかと思います。FIAT600をベースとした850TCですが、ABARTHの特徴であるリアのエンジンフードを開けた姿は、当時のサーキットでMiniのドライバーが悔しい想いで見送った後姿ではないでしょうか。


このALFAROMEO Spider Sr.4は女性ドライバーにより出走していました。Sr.4のSpiderはサーキットが似合わないと思っていたのですが、このボディカラーだと意外?にサーキットにマッチしていました。

そしてZAGATORさんのGiuliaと殆どヤル気のないバトルを繰り広げていた(爆)のがこのSpiderだったのですが、どうやらSpiderはそんな気はさらさらなく、一方のGiuliaはついて行くのが精一杯だったというのが真相なようです(笑)。

街中では随分と見かけなくなったMiniですが、サーキットでは健在です。コンペティションチューンされたMini Cooperはショートサーキットでは侮れない存在で、このレースでも一番勇ましくコーナーを攻めていました。
心配だったZAGATORさんのレースデビューも無事に終わり、私も気持ちの余裕が出てきました(苦笑)。
次回は「スパ・フランコルシャン」クラスから続けてレースの模様をお届けしたいと思います。
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