走ってナンボ

アルファ・ロメオを始めとする「ちょっと旧いイタ車」を一生懸命維持する中での天国と地獄をご紹介します。

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東京物語

私のような飛行機ヲタクにとっては、映画、小説、アニメといったメディアを見る際に、飛行機が登場するとなると、その描かれている飛行機にリアリズムを求めてしまい、どんなにストーリーが素晴らしくても、その小道具としての飛行機が正しく描かれていなかったり、リアルさに欠けていたりすると一気に興醒めしてしまうものです。

恐らく、数ある飛行機が登場するアニメの中で、一番有名な作品が宮崎駿氏の「紅の豚」だと思うのですが、その登場する飛行艇は実在した飛行艇をベースに宮崎氏のコダワリにより架空で改造されたもので、仮にそれが実在しなくとも、その作品の世界にとってそれは必要な改造であり、そのストーリーの素晴らしさと相まってこの作品を名作たらしめていると思います。

東京物語

そんなアニメ作品の中で、最近気に入っているのが滝沢聖峰氏の一連の作品です。滝沢氏は北海道出身の1963年生まれとのことですから、私より3歳年下で恐らく幼少時代はどっぷりとプラモデル造りにはまった年代であろうと思われます。
氏の作品の素晴らしいところはその飛行機の描写だけでなく、ちゃんと素晴らしいストーリ展開が裏打ちをしているところで、飛行機を描かせたら恐らく世界でも三本の指に入るのではないかと思われるほどのリアリティに満ちた描写力が決して突出することなく、ちゃんとストーリーでぐいぐいと読ませてくれます。

特に最近気に入っているのが本日ご紹介する「東京物語」です。

主人公、白河大尉は陸軍航空隊に所属し、1943年の夏にビルマ戦線で戦っていました。当時のビルマ戦線では連合軍の反抗作戦が本格化し、新型機の配備もままならない中、次々と投入されてくる連合軍の新型機を前にして、中だるみの厭戦気分が漂っていました。そんな中にあって白河大尉は異動命令を受領します。新しい任地は陸軍航空審査部飛行実験部で、新型機や鹵獲した敵機などを試験評価したり、新しい兵装や戦術を実験する部隊でした。
こうして内地に帰還した白河大尉は、自宅のある東京の国立から福生にあった飛行実験部に「通勤」することとなります。そして、まだB-29による空襲が本格化する前の東京では、戦時下の厳しい統制生活ではあったものの、まだ日常の暮らしが営まれており、白河大尉は妻の満里子とのつかの間の平和な日常生活を送りながらも、厳しさを増す戦局の中、様々な航空機の試験飛行を行うこととなります。

この主人公白河大尉には恐らくモデルとなる実在の人物がいたと思われます。その人物とは主人公の所属する飛行実験部に実際に所属していた黒江保彦少佐で、陸軍のテストパイロットとして有名な方です。
黒江少佐は、二式戦「鍾馗」の試作機部隊に所属し、その後にあの有名な加藤隼戦闘隊と呼ばれた飛行第64戦隊の中隊長として着任し、加藤戦隊長の戦死後は戦隊長を務めた後に、飛行実験部に異動となり1944年1月に内地に戻ります。そしてさまざまな試験を行ったのですが、その中でも最も有名なのが鹵獲したP-51 Mustangを駆って各部隊を廻って行った模擬空戦で、現代で言うアグレッサー(仮想敵機)役を務めながら味方の戦技向上に尽力したことです。黒江少佐は戦後は航空自衛隊に所属し、航空団指令在任中に趣味で出かけた磯釣りで高波に呑まれて亡くなるのですが、この黒江少佐の姿に主人公の白河大尉の姿が重なって見えるのは、テストパイロットという優れた飛行技術に加えて、冷静な分析力や判断力を要求されるその人格を、作者がうまく写し取ったからではないかと思います。

そしてこの作品が単なる飛行機ヲタクのための戦記アニメで終わっていないのは、丁寧に描かれた妻の満里子との日常生活です。この作品を読まれたならこの満里子のファンになってしまうのではないかと思うのですが、彼女は決して当時の当たり前であった理想的な「軍人の妻」ではなく、夫と喧嘩はするしイタズラもするちょっと「やんちゃ」な女性です。この作品がその戦時下の夫婦生活をベースにしているところにこの作品の素晴らしさがあり、飛行機に興味がない方にも安心してお勧めできる作品です。

そしてこの作品のベースにあるのは徹底したリアリズムで、その生活描写も史実に基づく戦時下の暮らしが描かれています。また随所に描かれた飛行シーンも決して誇張された華々しい戦闘シーンではなく、あくまで史実に基づいたもので、作者が戦史と当時の航空機を知り尽くしていることが伺われるものです。

日本の戦時下では全ての日本人に精神論がまかり通っていたように思われがちですが、冷静に戦局を分析し、連合軍の技術力や工業力を正しく評価し、認識していた人々も多かったと思います。
その中でも実戦経験のあるパイロットは特にそうで、敵の航空機の性能やパイロットの技量を目の当たりにするのですから、他の兵士よりもはるかにそうした実情はナマで感じていただろうと思います。
その中でも特に主人公の白河大尉のようなテストパイロットという仕事であると、余計にそうした情報に多く触れることができたであろうと思いますし、この作品にも鹵獲したP-51 Mustangの性能に感心すると同時に、エンジンの油漏れがないことや、エンジン始動がコクピットからセルモーター一発でできることなどが描かれており、単に性能だけでなく、当時の日米の工業力の差についても触れられています。

ともすればヲタクを感心させるだけのマニアックな劇画となってしまう題材を決してそこで終わらせず、むしろ一般の方?でも読みやすく、かつどんな戦史よりも分かりやすく戦時下での暮らしを描いた作品として、この東京物語は今までになかった作品だと思います。

現在は上巻が発行されており、続けて下巻も近日発売されますので、興味を持っていただけたなら是非お読みいただければと思います。

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テーマ:漫画の感想 - ジャンル:アニメ・コミック

コメント

飛行機オタク的な興味と、また戦時下の家族を描いた、画期的な漫画として「東京物語」が読みたくなりました。

ご紹介ありがとうございました。

  • 2012/09/03(月) 10:41:22 |
  • URL |
  • ルッソ #-
  • [ 編集]

>ルッソさん
ありがとうございます。
たぶん買ってハズレはないと思いますよ(笑)

  • 2012/09/03(月) 23:25:16 |
  • URL |
  • 510190 #-
  • [ 編集]

表題とは違ってスミマセン。

>連合軍の技術力や工業力を正しく評価し、認識…。

父の話でも、当時の前線の上官によっても認識は様々だっったそうです。
もちろん、精神論第一な将校も居たし、思慮深い将校も多かったと。

父がオーストラリア軍に捕虜となった際、捕虜収容所のトイレの便器までもがステンレスだったことに、その差を改めて思い知ったそうな。(汗)

  • 2012/09/04(火) 23:26:04 |
  • URL |
  • maiko #-
  • [ 編集]

maikoさん
同じものを見ていても、それを正しく理解し分析できる人と見たくないものは見ないという人はいるものです。日本の不幸は指導者がその目を瞑る方だったことだと思います。

  • 2012/09/05(水) 10:24:41 |
  • URL |
  • 510190 #-
  • [ 編集]

本日、「東京物語」到着しました。(^^)しかし、アマゾンは早いですね。(笑)

  • 2012/09/05(水) 22:47:07 |
  • URL |
  • ルッソ #-
  • [ 編集]

>ルッソさん
買われたんですね(笑)。
また感想をお聞かせください。

  • 2012/09/07(金) 01:09:06 |
  • URL |
  • 510190 #-
  • [ 編集]

読みました。
読み応えがありました。!!飛行機の描写はさすがのレベルでオタク心も十分に満足であります。(笑)

戦時下の描写、特に満里子の妹が配属将校にバルザックを読んでいて殴られた件には、ハッとしました。

戦中派の母親から女学校時代に配属将校や、空襲(彼女は東京生まれの東京育ち、東京大空襲経験者)の話を聞いていましたので、リアリティがありました。

  • 2012/09/09(日) 20:39:41 |
  • URL |
  • ルッソ #UwkW36/E
  • [ 編集]

>ルッソさん
楽しんでいただけたようでよかったです。続きも楽しみですので、下巻が待ち遠しいですね。

  • 2012/09/09(日) 23:44:06 |
  • URL |
  • 510190 #-
  • [ 編集]

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