走ってナンボ

アルファ・ロメオを始めとする「ちょっと旧いイタ車」を一生懸命維持する中での天国と地獄をご紹介します。

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お台場の旧車三昧 ヒストリー・ガレージ~その参~

日本の自動車史において今までご紹介してきたクルマは名車と呼ばれるクルマ達でした。それは技術的に革新的であったりデザインが秀逸であったりと、何か新しいことにチャレンジしたクルマ達で、結果として少量生産しかできなかったり、レースで好成績を挙げたり、セールス成績が良かったりと名車となりうる実績が伴っています。

一方でトヨタのクラウンというクルマは決して名車と呼ばれるクルマではないでしょう。しかし、歴代のクラウンほど日本の経済成長と日本人の平均的な高級感の変遷を映し出したクルマはないのではと思います。
「いつかはクラウン」という名コピーが表していたように、クラウンは平均的な日本人の持つクルマの頂点でした。レクサスというブランドができた現在はその構図は変ってしまったのですが、それまでのオーナードライバーはようやくカローラを買えるようになり、所得が増えるに従ってコロナ、マークⅡとクルマを買い替えて、クラウンを買ったときに「ああ、オレもクラウンに乗れるようになったんだ」とそれまで頑張ってきた自分に満足したものでした。

私たちクルマ好きはクルマを絶対的な価値観で見ていますので、そのクルマの排気量や装備、価格で比べたりはしないのですが、日本の経済成長の歴史においてマイカーは自分の生活の豊かさの象徴で、クラウンが買える余裕がある人はカローラを買うことはありませんでした。そしてトヨタを始め日本のメーカーはその豊かさの「階段」に沿ったモデルをラインアップすることにより、販売を伸ばして来ました。
そしてその「階段」は以前の記事に書いたようなヨーロッパにある「階級」ではなく、日本においては誰もが頑張れば登ることができる階段であるからこそ、「いつかはクラウン」だったのです。
イタリアでもし「いつかはマゼラーティ」という宣伝をしたら、殆どの人は???となるでしょう。
すなわち歴代クラウンを見るときに、私達はその年代の日本経済の豊かさとその当時の日本人が考える「平均的」高級観を見ることができるのです。

しかし考えて見れば、そのようなコンセプトで一つのメーカーが大衆車から高級車までを生産し、その時代の要求に応じて(リードして)モデルチェンジを繰り返してきたメーカーはないでしょう。
ヨーロッパでは各メーカーが「分担して」そのヒエラルキーを維持していますし、それがブランドイメージを形成するものです。アメリカにおいてもキャデラック、リンカーンはそれをどこが生産しているかではなく、そのブランドは独立したものとして捕らえられています。
しかし、クラウンはあくまでトヨタのクラウンで、セドリックはあくまで日産のセドリックで、それを日本人の誰もが当たり前のこととして受け入れ、そのメーカーが同時に大衆車を造っていようとトラックを造っていようと気にはしませんでした。
実はこのことも日本において階級という考え方がないことの証明ではないかと思います。

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1955年に発表されたRSD型クラウンが日本におけるハイオーナーカーとしてのスタートでした。最初から自家用車として設計され、それまでの外国メーカーのノックダウン生産ではなく、国内技術のみで製造されたこのクラウンを見たときに、「ようやく日本もここまで来たか・・・」と日本人は戦後の復興の成果を肌で感じたのではないでしょうか。
一方でそのデザインは当時の日本人に最も馴染みのあった高級車であるアメリカ車の影響を色濃く映し出しています。おそらく当時の日本人にとって高級車のデザインに対する独自の見識がなく、結果として最も馴染みのあるアメリカ車のモチーフを模倣するしかなかったのだろうと思います。
実は、このRSD型クラウンの最初期モデルはフロントガラスがスプリットウインドウとなっています。発売当事において、ガラス製造を担当した旭ガラスにその曲面に対応した強化ガラスを製造する技術がなかったそうで、是非一度スプリットガラスの実車を見て見たいものです。

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そして1962年に発表された二代目のRS41型クラウンは、初代のクラウンとは全く異なるトヨタ独自の・・・と言うより日本独自のデザインとして発表されました。
それは現在の目で見ても5ナンバーサイズでありながら、はるかに大きく見えます。そしてその押し出しの立派さこそがこの二代目クラウンの目指したもので、フロントグリルの間を一面のパネルで設え、リアもシンプルな造型のランプを極力端に寄せて、その間を同様に一枚のパネルで覆うことにより全幅を広く見せることに成功しています。同様にボディサイドのメッキラインも全長を長く見せるためのもので、このクラウンのデザインが日本国内特有の事情を反映したものであることが分かります。

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ところが1969年に発表された三代目のMS51型クラウンは、先代の見栄や虚勢から脱却したデザインです。
特にこの2ドアハードドップはクラウンを購入するオーナー層に精神的な余裕も出てきたことが表れています。
それまでのクラウンはあくまでコンベンショナルな4ドアセダンでなければならず、それはファミリーユースだけでなく、仕事でお客様を乗せたりするケースもあれば、冠婚葬祭などのフォーマルな場所にも乗って行かねばならない、ある種オールマイティな使い方をされなければならなかったのですが、この三代目となりようやく真のパーソナルユースとなったことが分かります。すなわち、「高級」が歯を食いしばって頑張って到達するものであった時代から、「贅沢」という生活の余裕となったことが覗われるのです。

このようにたった三台のクラウンを見ることにより、戦後の日本が歩んできた物質的、精神的豊かさの変遷が分かるのは実に興味深いことだと思います。それは単なるクルマのデザイン史ではなく、文化人類学的に考察することもできる対象で、そのためにはクラウンが最適であるところに、トヨタが行ってきた実に見事な日本経済と日本人に対するマーケティングの歴史をも見て取ることができるのではないかと思います。

さて、ようやく本来の目的であるノスタルジックカーショーの会場に向かうことにしましょう。

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テーマ:イベント - ジャンル:車・バイク

コメント

私はトヨタ嫌いじゃありません。AW11にも乗ってたしね。
で、特に思いいれも無いんですが、車好きの人の大部分(っても私の交友関係だけですが)は
「クラウンは日本でしか通用しない。」と言います。
実際タクシーくらいしか乗った事無いんですが、
なんであんなにウケが悪いんでしょう?
「どこが悪いと思うのか?」と聞いても明確な答えが返ってきたことないんですよね。

  • 2012/06/06(水) 07:52:42 |
  • URL |
  • S氏 #-
  • [ 編集]

「いつかはクラウン」を190さんが取り上げるとは意外と思ったら、なるほど日本の経済成長・生活水準と密に関わりがあるという内容になるほどと思いました
そんな事とは関係なく、国産車がどうこうと批判的な評価をよく耳にしますが、僕はクラウン、特にこの2HTモデルに限っては歴代どのモデルも今でも機会があれば手に入れたい程好きです
現代の「ゼロクラウン」以降のモデルも全方位隙の無いバランスのとれたスタイルと下手なスポーツカー顔負けの高性能で要はただトヨタと冠のエンブレムに偏見を抱いてるように感じます
じゃぁ、そんなに優秀なクルマなら買いたいか? 
それは何故か違うんですよねぇ・・・
「けっきょくクラウン」

  • 2012/06/06(水) 11:13:32 |
  • URL |
  • 笹本隆太郎 #-
  • [ 編集]

>Sさん
クラウンが日本でしか通用しないかどうかはともかく(輸出実績がないんですから)、記事に書いたように日本国内の綿密なマーケティングに基づいて開発されたことだけは確かで、そこには日本の法規制、道路環境、日本人の経済所得水準、文化的嗜好などを綿密に検討した結果の商品だと思います。パワートレインだけのことを言えば充分世界水準以上だと思います。あとは好き嫌いで、たまたた私達の周囲の人間が「他人と一緒はいや」という個性的な人の集まりに過ぎないのかも知れませんね(笑)。

  • 2012/06/06(水) 11:41:10 |
  • URL |
  • 510190 #-
  • [ 編集]

>笹本さん
歴代クラウンの設計コンセプト、マーケティングの歴史はそのまま戦後日本の経済発展と日本人の最大公約数的な豊かさに関する概念の変化の歴史に通じると思うんですよね。
日本人の多くはクラウンを買うこと、もしくは買えるようになることを目指して、一生懸命働いて来たと思いますし、その「ご褒美」足り得るクルマとしてクラウンはその時代の日本人が考える「分相応」の豪華さを身に纏って来たのだと思います。
現在のトヨタを始めとする自動車メーカーの悩みはレクサスを買える所得と余裕があってもクルマを買わなかったり、敢えてプリウスを選ぶ富裕顧客層が一部の変わり者ではなく、無視できない量になってきたことで、自社のラインアップでクルマのヒエラルキーを作り、セールスマンが車検のたびに上位車種への買い替えを勧める・・・というこれまでの販売手法が通じなくなって来たことだと思います。
笹本さんが大型セダンをベースにしたハードトップに魅力を感じるのは良く分かります。それは一番「贅沢」なクルマのスタイルで、ロールスのコーニッシュのような、ショーファードリヴンのクルマをあえてオーナーがドライブするように仕立てるという贅沢に通じるものではないかと思います。
私もキャデラックのエルドラドクーペとかは大好きです(笑)。

  • 2012/06/06(水) 11:54:00 |
  • URL |
  • 510190 #-
  • [ 編集]

大型クーペの贅沢さには憧れますね.ベンツもこういうのは得意でした.中途半端なリアドアを付けるぐらいなら
2ドアにする,というのがベンツの美学と思っていたんですが,最近は変わってきているようですね.

  • 2012/06/07(木) 00:35:19 |
  • URL |
  • Hiroshi #-
  • [ 編集]

>Hiroshiさん
メルセデスのラインアップの中でもSLではなく、SECがやはりパーソナル感があってお洒落だと思いますね。合理的じゃないし、効率も悪いかも知れませんが、その無駄こそが贅沢なんだと思います。贅沢は余裕がないとできませんので、そういうクルマが売れる(造られる)環境はその市場の経済状況を色濃く反映していると思うんですよね。

  • 2012/06/07(木) 06:49:05 |
  • URL |
  • 510190 #-
  • [ 編集]

>S氏さん,
クラウンは日本でしか通用しない,というのは純粋なハードウェアの性能というより,ブランド力がまだそこまで育っていないというのが大きいと思います.高額な車を買う人にドイツ車を差し置いてまで選んでもらえないということです.
もちろんブランド力も企業の絶え間ない努力の結果獲得できるもので,公正な競争です.トヨタも頑張ってほしいですね.

  • 2012/06/07(木) 10:30:46 |
  • URL |
  • Hiroshi #-
  • [ 編集]

>Hiroshiさま
こんにちは
>ブランド力がまだそこまで育っていない
うーん、そうかな?でも、ぽっと出のセルシオは大ウケだったじゃないですか。
セルシオは認めても、クラウンはダメってのは日本向けのチューニング(高速安定性とか?)だから
とかそういう話なのかな?
センチュリーをオーナーカーとして乗り回してる若いのがたまにいたりしますが
センチュリーも日本のみって感じですよね。

  • 2012/06/08(金) 09:43:50 |
  • URL |
  • S氏 #-
  • [ 編集]

>S氏さん
外国では,とくくってしまうのが乱暴でしたね.
おっしゃるとおり北米ではトヨタ(とホンダも?)ブランドとして認められていると思います.私のコメントは欧州のことだけを考えて書いてしまいました.
北米でクラウンが通用するかどうかは興味深いですね.ハードウェア性能については自分はクラウンもドイツ高級車も運転したことがないので意見する資格無しです.

  • 2012/06/08(金) 22:32:59 |
  • URL |
  • Hiroshi #-
  • [ 編集]

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