走ってナンボ

アルファ・ロメオを始めとする「ちょっと旧いイタ車」を一生懸命維持する中での天国と地獄をご紹介します。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

筆塗りだけでの模型造り ~その四~

模型製作の続きの前に、読者の方から海外には日本のような味方識別の方法はなかったのか?というご質問をいただきましたので、前回の記事でご紹介した味方識別帯のハナシをしたいと思います。
確かに、敵か味方かを識別する問題は交戦国双方の課題であったろうと思いますが、イギリス機の一部に主翼前縁に色を塗った例があるくらいで、恒常的なカラーリングの例はありませんが、例外的なカラーリングがInvasion(侵攻) Stripeと呼ばれる黒と白のストライプです。

Invasion Stripe

写真はイギリス空軍のスピットファイアに描かれたInvasion Stripeですが、これは連合軍のヨーロッパ大陸への大規模な反撃作戦のきっかけとなったノルマンディ上陸作戦に参加する機体に描かれたものです。様々な機種が多数この作戦に参加したために、地上から味方に攻撃されないためや空中での同士討ちを避けるために、作戦期間中限定(ヨーロッパ大陸に侵攻するにつれて引き続き残された例もあり)で描かれたカラーリングです。確かにこれだけ派手だと目立ちますので間違いも少なかったでしょうが、結果は地上の味方を鼓舞するという成果はあったものの、ノルマンディ上陸作戦当日に反撃したドイツ空軍機は2機のフォッケウルフFw190のみで、これだけ周到に準備したにも関わらず、空中での同士討ちはおろか、空中戦そのものがなかったというのは皮肉な史実です。

さて、本題に戻りますがクルマのモデルと違って、飛行機のモデル(特に軍用機)は単に綺麗に色を塗っただけでは、いかにもプラモデルといった感じになり、それが小さいモデルであっても全体的にのっぺりと見えてしまいがちです。
したがって、仕上がりでより実感を高めるためには、クルマのモデルの塗装とは異なったアプローチが必要となります。

Zero037.jpg

まずは機体上面の退色表現です。前述したように、この機体は工場ではなく基地で整備員の手で機体上面色を塗装されたように思われます。すなわち、工場と違ってそれほど念入りには塗装されなかっただろうと想像できますので、紫外線で退色した表現をするために主翼上面と水平尾翼のところどころを1500番~2000番程度の細かいペーパーで削ってやります。そうすることによって、最も紫外線が当たる翼の上面に最初に下地として塗ったカーキグリーンを部分的に露出させることができます。
南方のラバウルなどに配属された機体だと、相当退色が激しかったと思われますが、内地配属の機体ですのであまりやりすぎないように止めます。
ペーパーで機体表面を削りますので跡が残りますが、これはこの後の工程である程度修正できます。それでも削る箇所は最小限に止めるようにします。

Zero034.jpg

Zero035.jpg

次にエナメルシンナーにレッドブラウンをベースにフラットブラックを少し混ぜた塗料を垂らす程度に薄め、そのシンナーを大き目の平筆で機体の進行方向(つまり機首から後方へ)に塗ります。これはウォッシングという技法で、機体の汚れを表現する方法です。最初は色がついているかいないか程度に薄めて、物足りないようであれば少しずつ色を足して塗り重ねるほうが良いでしょう。

ここまで出来上がったら残った注意書きのデカールを貼ります。全て貼ってからウォッシングをしても良いのですが、小さなデカールはウォッシングの際に剥れてしまうリスクがありますし、折角の繊細な注意書きがウォッシングのせいで隠れてしまうのも残念なのでこの順序としました。どのデカールを先に貼っておくかはその大きさをベースに決めれば良いと思います。

Zero036.jpg

主翼上面に貼る赤い警戒線はデカールでは「ロ」の形になっていますが、貼るときに曲がってしまいますので、「ロ」ではなく「コ」状にカットしておきます。私はそれを怠って左側が少し曲がってしまいました(泣)。また貼ってから気づいたのですが、右翼側にだけ記載のある「足踏」という文字が天地逆になっています。やはり日本語の読めないスタッフが校正をしたのでしょうから仕方ないでしょう(苦笑)。もしこの記事をご覧になって製作される方は、予め文字部分を切り取っておいて逆に貼ってください。(全く目立ちませんが・・・)
他の注意書の中にもアヤシイものもありますが小さくて読めませんし、単調な塗装の機体が少しでも賑やかになりますので一応指定どおり貼ることにします。

さらにこのキットの最大の特徴でもある良くできたスジ彫りにスミ入れをしてパネルラインを強調します。
機体上面にはブラック、下面の明灰白色部分はブラックだとハイライトが付きすぎますので濃いグレーでスミ入れをすることにしました。

Zero038.jpg

Zero039.jpg

スミ入れには以前ご紹介したガンダム用のリアルタッチマーカーを使用します。リアルタッチマーカーはスジ彫りのみを残して綺麗に拭き取るのではなく、すこし汚れを残し目にして拭き取ります。ちょっとやりすぎの感がありますが、この辺は好みの分かれるところだと思います。

Zero040.jpg

加えて、塗料が剥げてジュラルミンの地肌が露出した感じを表現するために、面相筆でエナメルのクロームシルバーを部分的にポツポツと塗って行きます。これはチッピングという技法なのですが、主翼上面の20mm機関砲の装填ハッチ、カウリングの継ぎ目、主翼付け根の搭乗員が踏む部分、地上で機体の向きを変えるために整備員が押す水平尾翼の前縁など、実際に塗料が剥れやすい場所を想像しながら、規則的にならないように注意して自然な感じを出すように表現します。今回は内地の機体であることから控え目にしました。

Zero041.jpg

さらに表現を加えて行きます。
この当時の日本の航空燃料は相当品質の悪いものであったと思われます。またエンジンの潤滑油やガスケットも同様で、ある程度のオイル漏れもあったでしょう。従ってかなり排気管からススが出たと思いますので、排気管からの排気汚れを表現します。これまた以前ご紹介したウエザリングマスターを使います。このときに注意すべきは主脚カバーで、飛行中はカバーが閉まっていますので、後で忘れないようにカバー側にも同様に汚れを表現します。

最後に主翼の20mm機関砲を発射した際に銃口と薬莢排出口から出る汚れも併せて表現して見ました。
この機体は訓練機でしたので、実際に実弾発射訓練を行ったかどうか定かではありませんが、教官が操縦して防空戦闘にも出撃したようですので、ここは敢えて汚して見ました。

このように機体表面に起こる様々な現象を再現することにより、モデルとしての実感がどんどん増して行くと思うのですがいかがでしょうか。

ちなみに、航空燃料といってもレシプロ機の場合は基本的には自動車用と同じガソリンで、最低でも現代のレギュラーガソリン程度のオクタン価がないと、エンジンが不調になったりして所期の性能が発揮できなかったようです。当時の標準的な日本の航空燃料のオクタン価は91で、後に開発された高性能エンジンはオクタン価100を前提として設計されていたそうですが、敗戦時までこのオクタン価のガソリンが安定して供給されることはありませんでした。
事実、戦中戦後に米軍に鹵獲接収された日本軍の軍用機を性能評価のために、米軍側できちんとメンテナンスし、ハイオクタン燃料(140オクタン)を使って試験飛行をしたら、その性能は全てにおいて日本で把握していた最高性能を上回ったと言われています。

Ki-84.jpg

例えば、当時米軍が世界最高という自信を持っていたP-51D マスタングに対して、陸軍の四式戦(キ-84)「疾風」はこのハイオクタン燃料を入れて高性能プラグ(米軍機の標準プラグ)に交換したところ、最高速度は高度6,000mにおいて687km/hをマークし、これはP-51Dより速かったと言われています。
また操縦性能も良好で、総合評価で米軍のテストパイロットにより、「日本の戦闘機のベスト」と評価されました。

その当時の国力の差を思い知らされるもう一つのエピソードをご紹介しましょう。

Ki-61.jpg

それは同じく陸軍の三式戦(キ-61)「飛燕」についてです。この戦闘機は日本では珍しく空冷エンジンではなく液冷エンジンを装備していました。液冷エンジンとは殆どの自動車と同様にラジエーターを装備しエンジンを冷却するタイプのエンジンですが、当時の同盟国であったドイツでメッサーシュミットMe109に搭載されていたダイムラー・ベンツ製のDB-601というV型12気筒エンジンをライセンス生産することにより搭載していました。しかし、物資不足からクランクシャフトの材質にニッケル合金を使うことができず、さらに精密工作機械がなかったことから、本来ならば型鋳造で量産するべきクランクシャフトを手造りでの切削加工(旋盤加工)で製造せざるを得ず、結果として所期の性能が発揮できない機種となった上に、エンジン製造が間に合わず、工場では「首なし」機体が溜まる一方という体たらくだったそうです。ちなみにこの「飛燕」も米軍のテストでは好成績を収め、「メッサーシュミットよりも良い」という評価を受けました。

ちなみに、このDB-601エンジンは同じくイタリアでもライセンス生産され、その生産を担当したのがアルファ・ロメオで、レースでの宿敵であったドイツのエンジンを製造することが余程悔しかったのか、アルファ・ロメオのエンジニアはさらなるチューニングを施し、アルファ・ロメオ製のDB-601は、オリジナルが1,100hpであったことに対して1,175hpを発揮したと言われています。

結局、戦争の勝敗は局地的な戦闘の勝利によって決まるのではなく、兵器ひとつを取って見ても、こうした要素技術や材料の品質などの積み重ねによる双方の国力の差で決まるものなのでしょう。仮にフェラーリのようなスーパーカーを設計し、製造することができても、粗悪な部品と組み立て技術に加えて(かつてのイタリア車のようなハナシですが・・・)、品質の劣る燃料を入れてしまえば、とてもマトモに走ることもできす、結局はナニゴトもなく走る軽自動車にも及ばないのと同じことなのですが、そんなことすら分からなくなってしまうのが戦争なのでしょう。

随分と脱線してしまいましたが、次回はいよいよ最終仕上げを行います。

クリック↓お願いします!

にほんブログ村 車ブログ アルファロメオへ
にほんブログ村
スポンサーサイト

テーマ:模型・プラモデル - ジャンル:趣味・実用

コメント

それにしても、なぜ・・・

510190さん

いつも興味深く拝見し、ポチッとさせていただいております。
しかし、どうしていろんなことにそんなにもお詳しいんでしょう???

私も第二次大戦中の戦闘機や戦車にはまって、プラモデルを作ったり、“丸”を読んだりはしてましたが・・・

いつか私の手持ちのプラモデル、DTM155('93)なぞ製作していただけると嬉しいのですが?!

  • 2012/02/06(月) 12:29:50 |
  • URL |
  • No.12 #-
  • [ 編集]

最初、本文を読む前にざっと写真を観た時はずいぶん腹の裏が汚ねぇ~なと思ったらなるほど!そうゆうことなんですよね 
こんなに細かいディテールまで拘っていくと作成過程でも十分に楽しみながら学べるもんなんですね
しかもコレ、かなり小さなスケールですよね?
いやぁ~190さんってスゴイですね

  • 2012/02/06(月) 15:14:31 |
  • URL |
  • 笹本隆太郎 #-
  • [ 編集]

>No.12さん
ありがとうございます。以前にも書きましたが、データまでアタマに入っている訳ではないんですよ。エピソードとして自分が面白いと思ったことが記憶として残っており、それを頭から引っ張り出して裏付けデータを調べて書いてますので、こんなヲタクネタがスラスラと出てくるワケではないんですよね(苦笑)。
155は田宮模型の1/24スケールでしょうか?私も持っていますが、あれはデカールがすぐに劣化してしまうのですが、お持ちのキットは大丈夫ですか?
デカールの表面にヒビが入っていると残念ですが使えませんので、もし大丈夫なら今のうちにジッパー付きのビニール袋にシリカゲル(お菓子に入っている乾燥剤)と一緒に保存されることをオススメします。
実物がクイック・トレーディングにあるために、資料には事欠かないので、いずれ造りたいと思っているキットですが、何せ順番待ちのキットが多いもので・・・(苦笑)

  • 2012/02/06(月) 21:00:31 |
  • URL |
  • 510190 #-
  • [ 編集]

>笹本さん
何せ、展示物以外の実物を見たことがありませんし、実戦でどのように機体が汚れるかを想像しながら表現するのはある種、アーティスティックな楽しみですね。
クルマやバイクのモデルはとにかく綺麗に造ることを追求し、飛行機のモデルは「実感」を追求するという別の楽しみがありますので、交互に造るのは息抜きになります。
1/72スケールの実物は手のひらに乗る大きさですから、確かに小さいですが、その前に1/144スケールの飛行機を造りましたので、それから比べると巨大?です(苦笑)

  • 2012/02/06(月) 21:06:20 |
  • URL |
  • 510190 #-
  • [ 編集]

そんな190さんがもしもフィギアを作ったら・・・
スゴイのが出来そう

  • 2012/02/06(月) 22:52:47 |
  • URL |
  • 笹本隆太郎 #-
  • [ 編集]

>笹本さん
昔は1/35の兵隊のフィギュアを造りましたが、あれは模型というより美術のセンスを求められますね。現在のフィギュアの塗装は殆ど「油絵」の世界ですので、美術のセンスのない私にはムリでしょう(苦笑)

  • 2012/02/06(月) 23:05:02 |
  • URL |
  • 510190 #-
  • [ 編集]

デカール

510さま

デカールにひび割れはありませんでしが、一部に塗料のパンフが張り付いてしまっていました(+_+)
とりあえず「新鮮保存パック」に
入れておきます。

  • 2012/02/07(火) 20:03:06 |
  • URL |
  • No.12 #-
  • [ 編集]

>No.12さん
それも田宮のデカールの問題なんですよね。表面の糊が強いようで、空気中の湿気で張り付いてしまいます。本当は無理矢理剥がさずにドライヤーで少し熱を加えてそっと剥がすと良いのですが・・・(苦笑)
場所にもよりますが最悪は補修できますので、どうぞ大事に保管しておいてくださいね。
プラモデルのコレクターの方は、買ってすぐにデカールをスキャナーでデータとして読み込んでおき、最悪はそのデータを基に複製するそうですが、最近は別売りのデカールがありますので、いっそのことコンバートしてしまうほうが手っ取り早いですね。でもそれよりも・・・デカールが劣化する前に造るのが一番でしょう(笑)

  • 2012/02/07(火) 20:23:10 |
  • URL |
  • 510190 #-
  • [ 編集]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://ig510190.blog83.fc2.com/tb.php/884-e2afe23a
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。