走ってナンボ

アルファ・ロメオを始めとする「ちょっと旧いイタ車」を一生懸命維持する中での天国と地獄をご紹介します。

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悲劇のDelta ~事故修復の現実~

長らくお伝えしてきたC.A.E. Stratosの事故修復記ですが、その事故修復は少なくともその修復技術に関しては、日本でトップクラスの技術が結集されて完了した例だと思います。しかし、このように徹底的に事故修復されるのは稀で、同じ事故修復であってもそれが私たちオーナーが期待するレベルで、「正しく」行われないとどのような結果になるか・・・というお話がこれから皆さんにお伝えするこのDeltaのことです。

貰い事故の場合であれ、過失割合が発生する事故であれ、殆どの皆さんは自分自身も任意保険に加入しているでしょうから、それは保険事故として扱われ、基本的に代金の支払いは保険会社から修理工場になされます。その支払い方そのものは何の問題もないのですが、こと板金修理に関してはメカニカルトラブルと異なり、その外観をもって修復されたかどうかを判断するしか術がなく、残念ながらその作業内容はブラックボックスと化しており、果たして期待に見合うものであったのかどうかが分からないのも実際ではないでしょうか。

YDC001.jpg

これは私の主治医であるクイック・トレーディングにリセットのために持ちこまれたLANCIA Deltaの例です。
「リセット」とはクイック・トレーディングが永年LANCIA Deltaを扱ってきた経験から、単に外観をリフレッシュしたり、対処療法的に壊れた部品を交換するだけでなく、まず徹底的に分解し、ボディそのもののベースからの修復と塗装を含めて将来のトラブル発生の可能性を検討し、交換するべき部品は交換し、さらに現代の技術で弱点をカバーする対策を施して再度組み上げる手法で、その完成度は製造から20年を経た中古車とは思えない仕上がりなのですが、それは単に中古車を販売するための手段だけではなく、自身の愛車をこのリセット作業に預けるユーザーも多く、それだけこのLANCIA Deltaというクルマを愛するユーザーが多いことの証明だと思います。

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Y氏は仙台でLANCIA Deltaの最終モデルであるCorrezioneに新車から乗り続けて来た生粋のイタ車乗りの方です。Y氏はこのDeltaに惚れ込んでおり、ずっと乗り続けたいと考えて遠く仙台からクイック・トレーディングへ愛車をこのリセット作業のために預けることにしました。

YDC004.jpg

実は、Y氏のDeltaはこのリセットで入庫する数年前に事故を経験していました。その事故とは信号待ちの際に後方から追突されたというもので、Y氏はその愛車の修理を新車で購入した地元のディーラーに任せることにしました。Y氏とこのディーラーとの付き合いは長く、日常のメンテナンスもお願いしていましたのでこの判断は至極当然であり、さらにY氏は「追加費用がかかっても構わないので完全に修復して欲しい」とお願いしました。これがY氏の板金修理の「期待レベル」であったことは明らかです。
Y氏からすると、こうして板金するのであるから仮に事故に関係していない部分に錆などの問題があったとしても、丁度良い機会なので手入れをしたいとの思いからだったのですが、私たちのようなクルマ好きからするとこれも自然なことで、「災い転じて福と為す」というポジティブ思考によるものでした。

YDC003.jpg

そしてディーラー経由での板金修理は完了し、DeltaはY氏の許に戻ってきました。修理費用は後方からの追突でしたので全額相手の保険会社から支払われました。
外観は板金と塗装により美しく修復されていましたが、Y氏には気になった点がありました。それはリアゲートの合わせで、どうしても少し浮いているように見え、実際に信号待ちで停まっていると後ろのクルマのドライバーから、「リアゲートが閉まっていないよ」と親切に教えてもらうことがある程でした。
リアゲートの開閉そのものは多少スムーズではないものの、ロックされないといったことはなかったために、Y氏はあまり気に留めてはいなかったのですが、今回リセットに持ち込んだ際にその点を指摘し、クイック・トレーディングは初めてこのクルマに事故歴があったことを知ることになります。
しかし、後方からの追突による板金修理などは一般的な事故修復で、前回のストラトスのような大事故であればともかく、今回の事故修復はごく一般的な?追突であり、全損と両天秤にかけるようなものではなく、多かれ少なかれ永年クルマを運転していると経験するレベルの事故だったのです。

YDC005.jpg

このように外観を見るとワンオーナーの上物で、通常中古車のDeltaとして流通するのであればグッド・コンディションと呼ばれるレベルです。それをさらにリセットするのですから、オーナーのこのクルマに対する愛情と思い入れを感じることができます。
それはクイック・トレーディングも同じで、当初は通常レベルのリセット作業で充分リセットは可能だろうと想像していました。
リセットをするためにはその対象となる個体のレベルが重要で、どんなクルマであってもリセットは可能とのことですが、その費用対効果を考えるとやはり「これは無理」という個体はあるそうです。
一般論では、やはり中古車として様々なオーナーの手を経てきた個体と、ワンオーナーでずっとディーラーメンテナンスを受けて来た個体とでは、リセットベースとしての程度は大きく異なっているものです。

リセット作業にあたってはメカニカルパーツを極力取り外し、ボディの程度をチェックすることから始められます。いかにワンオーナーの上物とは言え、製造から15年以上が経過していることを考えると、やはり見えない部分の程度はボディを丸裸にしてチェックしなければ分からないのです。

そしてボディのチェックをしていたときに驚愕の事実が発覚します。

YDC010.jpg

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それは事故修理の板金作業で、その作業が例のリアゲートの「浮き」に大きく影響していたのです。
後方からの追突によりリアボディが歪んでしまっていたのですが、どうやらそれを修復せずに、新品のリアゲートを取り付けようとしたのですが、当然ながらボディ側が歪んでいるのでリアゲートはすんなりと合わず、それを無理矢理合わせるために、折角の新品のリアゲート側を曲げて調整したために、ゲートが浮いたように見えてしまっていたのです。

YDC009.jpg

内部には職人が忘れたのか研磨スポンジが残っていました(苦笑)。

YDC006.jpg

さらに追突によりリアのメンバーも交換されているのですが、ここでさらにこの板金修理の作業レベルが明らかになります。通常メンバーのようなパーツは無塗装で供給されます。それを取り付ける際には板金塗装をする側が下地に防錆処理を施してサーフェイサーを塗って塗装するものなのですが、このメンバーを見ると部品番号のラベルがそのまま残っていたのです。

YDC008.jpg

つまり、この板金工場は部品として入荷したメンバーをそのまま防錆処理をせずに取り付け、その上からボディ色を塗装をしたのです。ラベルに付着したスプレーミストからも分かるように、その塗装も「パー吹き」という一回サッとスプレーしただけの塗装で、こんな状態で取り付けられたメンバーであればすぐに錆びてしまうと思うのですが、これも開けてみなければ分からない「パンドラの箱」でした。
そして、さらにここにも「つじつま合わせ」の跡が残っていました。ボディ側の歪みをそのままにしてメンバーを取り付けなければならなかったためにボルト穴が合わず、メンバーを曲げて調節していました。

YDC007.jpg

一口で「板金修理」と言ってもその作業品質は大きく異なります。それは単にコストをかければ出来るというものではなく、どこまで修復するか(できるか)・・・という目標(技術)レベルが大きく影響するのです。
すなわち、外観だけ治せば良いという目標レベルであると、この程度の板金作業は「当たり前」と言えるかも知れません。そして、メカニカルなメンテナンスとは異なり、一度塗装されてしまえば内部は分からなくなってしまい、私たちオーナーはこの「パンドラの箱」を開けて見る機会はなくなってしまいます。
それをプロである業者は良く知っているからこそ、事故歴のある中古車が敬遠されてしまうのでしょう。

結果として、オーナーのY氏の「期待レベル」の事故修復とはかけ離れたレベルでの修複(これを「修復」と呼ぶのであれば・・・)となってしまっていたのですが、敢えて言わせてもらえば、この作業は一般の国産車ユーザーが脚代わりに乗っているクルマであったとしても、とても許容できる修理とは言えないでしょう。これが正規ディーラーの外注先であったこの板金塗装工場の技術レベルであったのか、その発注をしたディーラーの見識であるのかは定かではありませんが、もしこれが世間一般での事故修復作業の平均レベルであるのであれば、私たちのようなクルマを移動のための道具以上に愛する者にとっては、とても安心して修復を任せることはできません。

ストラトスの記事でも書きましたが、その目標レベル、言い換えれば板金工場の作業(技術)標準が高い場合は、事故車は「新車以上」になる可能性があるのですが、残念ながらそのような作業標準を持つ板金工場は稀で、しかも私たちはその作業内容を知る術がないのも現実なのです。

こうしてリセット作業は、事故板金の「後始末」から始まることとなりました。

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テーマ:イタリア車 - ジャンル:車・バイク

コメント

うーん・・・この場合のディーラーってのはマツダの系列店なんですかね?
私、わりとマツダ車好きで、長いことお付き合いしてました。
マツダが悪いとは今でも思いませんが、部品交換以外はほとんど外注で
私も納得のいかない板金修理されたことがありました。(クレーム再修理にした)

その時も思いましたが、ディーラーもちゃんと責任もってチェックして欲しいところですね。
プロなんだからさ。

  • 2012/02/11(土) 08:42:13 |
  • URL |
  • S氏 #-
  • [ 編集]

>Sさん
板金塗装は殆んどが外注だと思います。だからこそ、ディーラーもメンテナンス・ガレージもその作業内容に関する理解と、外注先の作業レベルの把握が必要だと思いますね。
住宅建築に例えれば、施主である私たちは元請の会社に発注したので、そこで水周りを担当した外注先の作業が悪くても、それはあくまで元請の管理責任の問題であるのと同じだと思います。

  • 2012/02/11(土) 11:09:08 |
  • URL |
  • 510190 #-
  • [ 編集]

ひじょうに由々しき事案で

いつも大変読み易い文章構成で、文字が多いとその時点で怖じ気づいてしまう私でもすーっと入っていけて、いつも有り難く読ませて頂いてます。

今回は、あぁ。。。と目を被いたくなる事案で由々しき事ですね。
ディーラーやメンテナンスガレージを信頼して修復してもらう場合はとくにでしょうが、
信頼した板金屋さんに頼む場合でも、そのおっしゃるブラックボックスの内容を、作業中や作業後に訊ねるのは至難の技かと感じます。
きちんと作業してくれる板金屋さんに限って、当然?職人気質な方が多く、細かな説明や詮索を極端に嫌われる方が多いのも事実だと思います。
綿引自動車さんの様に、その技術が組織として高いレベルで機能しているケースは稀で貴重な存在ですね。
ただその分、フロントスタッフが必要だったりと必然的にコスト増になる訳なのでしょうけれど。。。
友人の(ある面で技術特化した)板金屋さんに頼んだり、信頼しているメンテナンスガレージから紹介されたりして、何軒もの板金屋さんにお世話にもなりましたが。。。今まで期待値を裏切られる事が余りにも多かったです。

  • 2012/02/12(日) 03:02:20 |
  • URL |
  • tanos #OF6QCt7M
  • [ 編集]

>tanosさん
ありがとうございます。「ブログなんだから三行程度で・・・」と言われることもあるのですが、個人の日記ではなくなってしまっていますので、どうやら私の記事はブログではないのかも知れません(汗)
それでも、何とか読みやすく理解していただき易いように工夫はしていますので、それが多少なりとも役に立っているのであれば嬉しいことです。
板金塗装の実態はなかなか見せていただける機会がないと思います。もちろんその職人さんの気質にもよりますが、作業環境の問題からなかなか入れていただけないという問題もあるかと思います。
今回は膨大な量の写真を頂くことができました。それはクイック・トレーディングが「見るのが初めて」という部分もあり、今まで表に出ることがなかった作業内容だと思います。
板金塗装の作業内容だけでなく、メカニカルリセット作業も含めて、このDeltaの完成までをリポートしたいと考えていますので、ご期待ください。

  • 2012/02/12(日) 09:21:28 |
  • URL |
  • 510190 #-
  • [ 編集]

以前事故を起こしたとき、新品になったバンパーに止められたナンバーステーのリベットが叩かれておらず、「刺しただけ」状態でした。
見えるところは確認しますが、見えないところは...難しいですね。

  • 2012/02/12(日) 11:10:15 |
  • URL |
  • pekepeke #-
  • [ 編集]

>pekepekeさん
見えないところは・・・というのが実態なのかも知れませんね。
その見えないところにどれだけ高い意識で取り組んでいるかをご紹介したいと思っていますので、続編をご期待ください。
こうした仕事はもっと評価されるべきだとつくづく思いました。

  • 2012/02/12(日) 12:21:13 |
  • URL |
  • 510190 #-
  • [ 編集]

う~ん、これはひどい板金ですね。。。
板金、塗装は外注ですが、やはり輸入車のオーナーはクルマに対してこだわりが強いですから、慎重にやってもらいたいですねぇ。結局フレーム修正は保険ではなく自腹になってしまったわけですから。

整備とはなかなか難しい商品(サービス)だと思います。ユーザが求めるレベルと金額とをきっちりとあわせないと不具合になりますから。私も買ったときの某店でものすごく高い整備料をとられたのにめちゃくちゃな整備でどえらい思いをしました。

やはり信頼できる整備工場にめぐり合うというのは大変なことですよね。

  • 2012/02/12(日) 14:16:51 |
  • URL |
  • masaking #-
  • [ 編集]

>masakingさん
結局、全てのサービス業に共通することだと思うのですが、コンサルテーションだと思います。最初に顧客と同じ完成イメージを共有しておけば、それが100%の結果でなくても、お互いに納得しているのですから問題にはならないのですが、結果は80%、期待値は100%、お値段は120%だから問題になるのでしょうね。

  • 2012/02/12(日) 14:23:59 |
  • URL |
  • 510190 #-
  • [ 編集]

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