走ってナンボ

アルファ・ロメオを始めとする「ちょっと旧いイタ車」を一生懸命維持する中での天国と地獄をご紹介します。

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ストラトスの苦難4 ~隠された職人技~

リアカウルの修復に際してクイック・トレーディングが選択したのは、現状のパーツから新しく型を作ってFRPボディを製作するというものだったのですが、それは決して一般論として「どこかに頼めば出来るだろう」と考えたのではなく、その作業を行う技術を持った信頼できる業者を知っていたからこそ決めた選択でした。それは群馬県の伊香保にあるポリクラフトという会社で、様々な国産/外国車のFRPパーツを製造している実績のある「知られざる名社」でした。
もちろん検討された選択肢の中でコストも時間も一番かかかる方法ではありましたが、完全に修復するという目的からすると、その信頼できる会社に頼むことさえできれば一番リスクの少ない方法であることも確かでしたので、保険会社の担当者を実際に伊香保の工場にまで案内しその作業内容を説明することにより、そのコストを承認してもらいました。

FRPで造られるパーツの造り方についてはご存じない方も多いのではと思いますので、この機会にその工程も含めて実際に行った作業についてご説明しましょう。

そもそもFRPとは、繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastics、FRP)の略称で、ガラス繊維などの繊維を樹脂の中に入れて強度を向上させた複合材料のことを言います。「ガラス繊維など」と書きましたが、近年はガラス繊維の代わりに様々な材料が使われており、皆さんが良くご存知の材料がカーボンファイバーと呼ばれる炭素繊維があります。ガラス繊維に比べて軽量かつ強度が高いのが特徴で、ガラス繊維を用いたFRPに対してCFRPと呼ばれています。さらにケブラーやダイニーマなどの材料も用いられていますが、基本的な製作方法は同じです。

FRPで整形品を作る場合は、まずマスターモデルと呼ばれる型を作ります。通常はケミカルウッドと呼ばれるポリウレタンで作られるのですが、名前の通り木材のように加工性には優れているにも関わらず、木材のような木目がないためにマスターモデルの製作には適した材料です。しかし強度はそれほどありませんので、そのままマスターモデルを製品として使うことはできません。今回はマスターモデルを造る代わりにこの破損したリアカウルを使用するのですが、当然のことながらこれだけ破損していますので実際にはベースモデルとしてしか使えません。欠損した部分やヒビが入った部分を樹脂で補い、さらに各所に補強を入れてマスターモデルとして使用できるレベルまで仕上げなければなりませんでした。

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マスターモデルを製造する際には、型から成型品を抜く際にひっかかって抜けないように、型割りと呼ばれるパーツ構成をしておかなければなりません。今回製作したマスターモデルは元々FRPで製造されていたパーツ割に準じることにしたのですが、それはカウル本体、ルーバー、トランクリッド、テールスポイラー、ルーフスポイラーの5点にも上りました。それぞれのパーツをオリジナルとなる破損したものから修復するのですから、それだけでも大変な作業です。

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マスターモデルが出来上がったらそれをベースにしてFRPで雌型を作成します。雌型とは本製品を製作するためのベースとなるものです。最終的にはマスターモデルから雌型を作成し、それを元に雄型(本製品)を製造するのですから本製品の厚さや収縮を見込んで雌型は製作されなければならず、この辺りの加減が上記の技術と経験がモノを言う場面なのです。マスターモデルとなる原型が出来上がったらチェックのために実際に現車にもう一度合わせてみて必要に応じて微調整を行います。FRPパーツの出来上がりを左右するのがこのマスターモデルと雌型の製作で、最も技術と経験を必要とする部分です。

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雌型が出来上がったらそれをベースに離型剤を塗り、ゲルコートを塗って硬化させたらガラス繊維に樹脂を染み込ませて気泡を抜きます(「脱泡」と呼ばれています)。気泡が少しでも残っていると強度がなくなるだけでなく最悪は硬化の際に割れてしまうこともあるので、この脱泡は重要な工程です。FRPボディの塗装表面がしばらくするとブツブツになるのはこの脱泡が不充分で、塗装後にFRPの内部から気泡が出てくることが原因です。そして充分脱泡できたら温風温熱乾燥炉で熱を加えて硬化させます。
硬化が完了したら常温まで自然冷却し、雌型から製品を抜き出します。余分な部分をカットして、さらに表面をサンディングし必要に応じて穴開け加工をしたり補強が必要な部分にはFRP樹脂板で肉厚を調整したりします。
さらに下地処理を行いサーフェイサーを塗って研磨して本塗装ができるまでに仕上げれば完成です。

FRP製造の工程は以上ですが、技術的に大別するとマスターモデルと雌型の製作と実際のFRP製造とに分けられ、マスターモデル若しくは雌型さえあれば、FRP製品そのものは比較的簡単に作ることができます。やはり一番難しいのがこのマスターモデルの製作で、今回のように既にある現物の微妙なラインに合わせるためには、FRPの特質を知りつくして完成品に発生する成型誤差を計算に入れた製作技術が必要となるのです。

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聞けば、ポリクラフトという会社はこのマスターモデルの製作がメインで、FRP製品そのものの製造は殆ど行っていないそうです。つまり自動車メーカーやパーツメーカーなどはポリクラフトにマスターモデルを発注し、そのマスターモデルや雌型を他のFRP製造メーカーに支給してFRPパーツを製造させているのが実際なのだそうです。今回はワンオフということで最終の製品までこのポリクラフトで製作してもらったのですが、そこには職人の誇りをを感じさせてくれるエピソードがありました。

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普通のFRP製品は硬化する際にヒケや歪が出るのは止むを得ないもので、その場合はパテを使って表面処理を行うのが普通なのだそうですが、本来ならばマスターモデルがちゃんと出来ており、その後の工程を完璧に行えばパテを盛らなければならないような修正は必要ないのだそうです。それはすなわちマスターモデルの出来が悪いか、FRP成型工程ミスのどちらかが原因なのですが、塗装工程でルーフスポイラーに僅かなヒケが見つかりました。塗装を担当した綿引自動車にとってはその経験からすると、この程度のヒケはFRPボディでは当たり前のレベルで、パテを盛って成型して塗装してしまうものだったそうですが、一応ポリクラフトにその旨を連絡したところ、ポリクラフトは再度製作し直したそうです。自分達の技術に対する誇りが後工程である塗装工場でのパテ修正など許せなかったのでしょう。

またこうして新しく製作したリアカウルは単に原型を修復しただけではありませんでした。それは使われた最新の特殊樹脂とその強度で、オリジナルと同じFRPパーツでありながら、エンジンからの熱に対応すべく最新の耐熱樹脂を用い、さらに重量を増さずに強度を高めることができたために、オリジナルのC.A.Eストラトスはおろか、ホンモノのランチア製のストラトスより優れた、おそらく世界中のストラトスの中で一番優れた品質のリアカウルとなったのです。
このことはオーナーのS氏も実感することができました。S氏によると以前はリアカウルを開ける際には片側を持ち上げるとカウルが撓み、すこし遅れて反対側が開いていたのが、修復後のカウルは片側を持ち上げるとちゃんと反対側も「一緒に」持ち上がるそうです。

その手間と時間は別にして順調に製作されたように見えるリアカウルですが、実はそれほど簡単ではなかったサイドストーリーがあったのです。

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テーマ:イタリア車 - ジャンル:車・バイク

コメント

毎度記事起こしお疲れ様です。カウルの出来に不満はまったくありませんが
どんなに素晴らしい出来であってもエンジンブロックと同じで枯らし期間は必要なようで、
去年の納車(7月)はそれこそぴったり合っていたのが、
最近は少し変形してきて開閉しにくくなってきました。
剛性が上がったのが逆に少しのズレも許容しにくくしてるようです。

気温変化でも変わると思いますが、残留応力がまだ徐々に開放されてるのかなと思います。
もう少し様子みてロックパーツやヒンジの微調整が必要になると思います。
あれだけでかい成型品なのでそういうところは仕方ないですね。

  • 2012/01/15(日) 07:42:36 |
  • URL |
  • S氏 #-
  • [ 編集]

とても興味深く拝見しています。FRP成形のノウハウ、自分で真似など出来ませんが。。。小物くらいなら何とか^^;でしょうか(笑)こういうスペシャリストが存在することは心強いですね。

  • 2012/01/15(日) 12:44:13 |
  • URL |
  • tano #PgtEBqSc
  • [ 編集]

>Sさん
残留応力ですか・・・有り得ますね。
ペラペラのFRPであれば吸収してしまうのかも知れませんが、強化FRPだとその辺りのバッファがないのかも知れません。あとはどの段階で調整するかですね。

  • 2012/01/15(日) 21:43:15 |
  • URL |
  • 510190 #-
  • [ 編集]

>tanoさん
小物の原型をコピーするのであればFRPでもシリコンでもレジンでも最近は様々な材料がありますよ。
模型専門店などでは離型剤など全てが小分けされたキットで販売していますからまずは試してみてはいかがでしょうか。
でも・・・クルマのパーツはやはりプロじゃないと無理だと思いますよ(笑)

  • 2012/01/15(日) 21:54:53 |
  • URL |
  • 510190 #-
  • [ 編集]

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