走ってナンボ

アルファ・ロメオを始めとする「ちょっと旧いイタ車」を一生懸命維持する中での天国と地獄をご紹介します。

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地獄クルマを訪ねて ~その拾壱~

各方面から絶大な支持?をいただいているこの企画ですが、クルマを取り上げることはもちろん、そのオーナー像を勝手に(笑)想像して描写することも大切なテーマと考え連載して来ましたが、ようやく久々に正真正銘の変態オーナー?が所有する大変態車!に出会うことができました。それもかねてより取材したいと狙っていた地獄クルマです。
そのクルマとは…

MASERATI QUATTROPORTE Ⅲ

です。

MQP001.jpg

今でこそ、マゼラーティは日本でもメジャーなブランドとなりました。特に東京の都心部ではマゼラーティを見ない日はありませんし、現行の5代目となるクアトロポルテはスタイリッシュかつスポーティな高級セダンとして独自の地位を築いており、コダワリのセレブ?が多く所有しているようです。
しかし、マゼラーティというブランドは少し前までは殆ど知られることはなく、知っていたとしてもそれは声をひそめて、しかめ面をしながら囁くように語るブランドで(笑)、イタ車オーナーに対しては、より悲惨な例として引き合いに出すことにより、現状を慰めるためのブランドでした。
例えばアルファ・ロメオが壊れた際には…、

「まだアルファ・ロメオだからこんなもんで済んだけど、これがマゼラーティだったらなぁ…」

という使い方です。

マゼラーティオーナー以外は一度は聞いたことのあるであろうこの表現ですが、私たちはどれほどこの表現によって慰められ、心の平安を得てきたことでしょう(笑)

すなわちマゼラーティというブランドは、イタ車の変態界の頂点にありながら別格であり、それは一種の魔界と言えるほどミステリアスな世界だったのです。

しかし昨今はこの魔界の底が抜け、随分と一般社会に溶け込んでいますので、トライデント(三つ槍)をこうして身近に見ることができるようになったのですが、ビトゥルボ系以前のマゼラーティは工場で整備を受けているところを見ることはあっても、元気に走っているところを見ることは稀で、その姿を見ただけでも感涙に咽ぶ…クルマでした。

マゼラーティほど悲劇と皮肉に満ちたブランドはそうはないと思います。そもそもマゼラーティ社は1914年にイタリアのボローニャでアルフィエーリ・マゼラーティにより設立された長い歴史を持つ自動車メーカーです。その後に兄弟も経営に参加し家族経営で発展したのですが、1937年には経営難から会社はモデナの実業家であったアドルフォ・オルシに譲渡されることになります。そしてオルシは買収に当たって10年間は創業者であるマゼラーティ兄弟が会社に残ることを条件とします。
これには諸説あり、オルシがマゼラーティ兄弟に対して温情を施したという説と、マゼラーティというブランドの価値を維持するために創業者兄弟を拘束したという両説なのですが、実際はその両方であったのかも知れません。マゼラーティ兄弟はその約束を守りましたが、きっちり10年後にマゼラーティ社を離れ、O.S.C.A.社を設立します。約束の10年が経ってすぐに会社を離れたことからも、マゼラーティはやはり自分たちで思うようにクルマを造りたかったのでしょう。この時点で、マゼラーティはその社名こそ残ったものの、創業者の許を離れ独自の道を歩むこととなります。

しかしオルシによる経営も長くは続かず、1965年にはシトロエンに売却されてしまいます。さらにシトロエンがプジョー傘下に入り、プジョーも経営難のマゼラーティを手放してしまうこととなります。次に新しく名乗りを上げたのがデ・トマソで1975年から1993年まで何とか会社を存続させたのですが、やはりここでギブアップし、最終的にはフィアットが面倒を見るという他のイタリアの自動車メーカーと同じ末路(ランボルギーニは別)を辿ることとなります。しかし、皮肉なことにフィアット傘下に入ったマゼラーティはそのブランド力からフェラーリのグループに組み入れられ、さらに製造品質も劇的に改善されて、高級GTカーのブランドとして復活を果たすこととなります。その後の経営回復は皆さんもご存知の通りで、今やフェラーリとマゼラーティはうまく市場の中で棲み分けをしながらフィアットグループの中で唯一好調な経営を続けています。

MQP002.jpg

そんなマゼラーティの歴代のラインアップの中で、さらに別格なのがこのQuattroporteです。
まずはその名前です(笑)。
日本語に訳すと…「四枚ドア」。こんなベタな、「まんま」の名前を平気でつける神経も相当なものです(爆)。
トヨタ「4ドア」なんて名前のクルマがあったらひっくり返るでしょう(笑)
しかし、初代のQuattroporteが発表された1963年当時のマゼラーティは3500GT、5000GT、ミストラルの三種のGTしか販売しておらず、マゼラーティが4ドアのセダンを発表することがいかに画期的であったかが良く分かります。すなわち、「4ドア」という名前を敢えて付けるほどそれは特別なことで、ショーファードリブン(運転手付き)のサルーンであってもハイパフォーマンスを求めるユーザーに対して、それがマゼラーティによってもたらされたクルマであることをアピールする必要があったモデルだったのです。

現在のQuattroporteは五代目となるのですが、面白いことに全てのQuattroporteはそのデザイナーが異なります。
初代はピエトロ・フルア、二代目はベルトーネ、この三代目は巨匠ジゥジアーロ。そして皆さんも良くご存じであろう四代目は天才ガンディーニ、現行の五代目はピニンファリーナ時代の奥山氏です。

MQP003.jpg

ハナシを三代目のQuattroporteに戻しましょう。マゼラーティを買収したデ・トマソによって1976年に発表されたQuattroporte(販売は1979年より)はデ・トマソの4ドアサルーンであったドーヴィルのシャーシーをベースにすることにより開発費を節約することに成功したのですが、エンジンはマゼラーティ伝統の4カムのV8エンジンを搭載し、サスペンスションは前後独立のダブルウッシュボーンというスーパーサルーンに仕立て上げられていました。
前述したように、デザインは巨匠ジゥジアーロで、アメリカ市場を意識したのかスクエアなボディにプレスラインを効果的に配置することにより、そのサイズからともすればボディ全体が冗長に見えてしまうことを防いでいます。
そして特徴的なのがアンバランスとも思えるリアガラスの角度と、リアのホイールアーチの形状です。このホイールアーチは四代目のガンディーニデザインでより強調されていますが、どうやらオリジナルはこの三代目であることが見て取れます。
このQuattroporteはメルセデスのSEL6.9くらいしかライバルがいなかったこともあり、マゼラーティの生産規模からするとスマッシュヒットとなりました。最終的には1984年の販売終了までに、マゼラーティとしては大量生産と言える1,876台が生産され、さらに販売終了後も後継モデルがなかったこともあり、引き続き受注生産で車名をマゼラーティ・ロイヤルと変更し、1990年まで265台が生産されました。

MQP006.jpg

今回主治医のクイック・トレーディングに入庫したこの個体は1985年が初年度登録ということですので、Quattroporte時代の最終モデルということになるのでしょう。オーナーは青森の方で、エンジンの片バンクの不調で整備を受けにやってきたのですが、ナンと!自走で東京まで来たとのことでした。
さらにこの個体の希少なところがそのエンジンで、標準で搭載された4.2L/255hpのエンジンではなく、オプションであった4.9L/300hpのエンジンを搭載しているのです。そしてメーカー公表値ながらこの4.9Lエンジン搭載モデルは最高速度230kmと言われたモンスターサルーンだったのです。

MQP005.jpg

助手席で少し走行体験もさせていただいたのですが、さすがに車重が2,375kgですので、スタートは矢のような加速ではありませんでしたが、明らかに最高速近くのクルージングでも極楽を味わえるであろうと思いました。それはエンジンの性格とサスセッティングによるもので、エンジンが温まるまでは少しガサついた印象のあるV8エンジンも、温まってくるとどんどんなめらかになり、大排気量V8エンジン特有のドロドロとした心地よい振動がフロントから伝わって来ます。
ダブルウイッシュボーンというスポーティなサスペンスション形式であるにも関わらず、そのサスの動きは運動性能のためというより路面追随性のために採用されたようで、実になめらかに路面をトレースしてくれます。

この乗り味は何かに似てる…とドライバーズシートのI工場長と話していたのですが、二人の結論は…

「上等なモータークルーザー」の乗り味でした。

MQP004.jpg

ロールスに代表される高級車がパッセンジャーに対して、「クルマに乗っていることを意識させない」静けさとフラットな乗り心地を提供しているのに対して、マゼラーティの提供する高級サルーンは明らかにロールスのそれとは異なっており、エンジン音を消すのではなく、心地よい音と振動をドライバーにだけでなく、後席のパッセンジャーにも適度に届けることにより、自分たちが単なる移動の道具に乗っているのではなく、世の中で最高のクルマに乗っていることを実感させるという独自の美学に基づいて設計されています。

その美学に加えて、このクルマには古き良き時代のヨーロッパ車特有の上質と高級が詰まっています。

だからこそ、クルマ全体の信頼性はメルセデスには遠く及ばなかったものの、これだけの台数が販売されたのだと思いますし、一方で日本への輸入台数の少なさからその本質は日本人にはまだまだ理解し難かったのだろうと思います。

長くなってしまいましたので、次回はこのQuattroporteの内装を中心に本当の上質とは何かを考察して見たいと思います。

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テーマ:イタリア車 - ジャンル:車・バイク

コメント

絶対買おうとは思わないクルマ(メーカー)ですが
ガンディーニのデザインの時のは美しいと思います。

  • 2011/10/31(月) 09:32:01 |
  • URL |
  • S氏 #-
  • [ 編集]

>Sさん
マゼラーティは釣りで言うと「箆鮒」みたいなもので、最後はここに戻ると言われているんですよ。特に初代ギブリやインディ辺りはイタ車三昧の末に行き着くクルマだと思います。
案外、Sさんも70歳くらいになったら乗ってたりして・・・(笑)

  • 2011/10/31(月) 20:54:52 |
  • URL |
  • 510190 #-
  • [ 編集]

こりゃカッコいいですね!QPIIIは現車を見たことないです。
MASERATIはいろんな意味でステータスですね。いろんな意味で。

  • 2011/11/01(火) 12:35:29 |
  • URL |
  • pekepeke #-
  • [ 編集]

うっひょ~♪

ついに出ましたね!
実車は一度見た事があるだけですが、栃木のAさんも持ってましたよね?まだ持ってるのかな?
マセラティは没落貴族からちゃんとした貴族に復活しましたがこの時代の怪しさ満点な感じも好きです。
続きが楽しみ~♪

510さん、、、似合うかもよ(笑)

  • 2011/11/01(火) 18:03:53 |
  • URL |
  • こ~んず #JalddpaA
  • [ 編集]

>pekepekeさん
確かに神話には事欠かないのがマゼラーティですよね。このように旧いマゼラーティにさらりと乗るのが粋でしょう。

  • 2011/11/01(火) 21:14:35 |
  • URL |
  • 510190 #-
  • [ 編集]

>こ~んずさん
マゼラーティ。特にクワトロポルテは賃貸の青空駐車なんてしてはイケナイ車です(泣)
お城とは言わないまでもちゃんとシャッター付のガレージから静々と出て行かなければ・・・(苦笑)

  • 2011/11/01(火) 21:16:54 |
  • URL |
  • 510190 #-
  • [ 編集]

マゼラーティ登場ですかっ!

クワトロポルテⅣとシャマルに乗ってましたが、予想するほど手ごわくは無かったですよ、燃えた以外は(爆)
でも、馬鹿っ速いだけでドライビングプレジャーは今ひとつでした。

  • 2011/11/02(水) 23:37:30 |
  • URL |
  • 赤丹。@147GTA #D2os1cdk
  • [ 編集]

>赤丹さん
イロイロ乗ってますもんね(笑)
私もかつてギブリを買いそうになったことがありますが・・・(以下参照)
http://ig510190.blog83.fc2.com/blog-entry-474.html
これはメチャクチャ楽しかったですね。もちろんアルファ・ロメオのドライビングプレジャーが別格なのはよ~く存じてますが(笑)

  • 2011/11/03(木) 04:35:17 |
  • URL |
  • 510190 #-
  • [ 編集]

本国仕様のギブリ

確か、名古屋のLUSSOが引っ張ってきたマシンですね。
そういえば、自分が乗ってたアルファRZもLUSSOものをグースネックで買いました。

  • 2011/11/04(金) 03:40:07 |
  • URL |
  • 赤丹。@147GTA #D2os1cdk
  • [ 編集]

>赤丹さん
良くご存知で・・・(笑)
その通りです。当時はLUSSO、Garage ESTといったところが並行で輸入してましたね。

  • 2011/11/04(金) 21:29:32 |
  • URL |
  • 510190 #-
  • [ 編集]

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