走ってナンボ

アルファ・ロメオを始めとする「ちょっと旧いイタ車」を一生懸命維持する中での天国と地獄をご紹介します。

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イリュージョン

今までの人生の中で自分自身が行き詰ったり悩んだりしたときに読み続けて来たのが、本日ご紹介する「イリュージョン」という小説です。

かもめのジョナサン1

「カモメのジョナサン」という往年のベストセラーの題名を知っていても、その作者についてご存知の方は少ないのではないかと思います。
リチャード・バック氏はこの「カモメのジョナサン」で一躍有名作家として世界中に知られるようになりました。
氏は自身がパイロットでもあり、「カモメのジョナサン」で擬人的に飛行術を学ぶカモメを描きましたが、この「イリュージョン」は第一次世界大戦後のアメリカに多く存在したバーンストーマーと呼ばれる遊覧飛行パイロットが主人公です。

第一次世界大戦が終わり、従軍したアメリカのパイロットはその多くが除隊を余儀なくされました。膨大な戦費のために軍縮を行ったアメリカ軍は、戦時中に養成したパイロットを引き続き職業軍人として雇用することができなかったのです。しかし一度空を飛び、その魅力に取りつかれたパイロット達は飛び続けるためにある者は郵便飛行士に、またある者は旅客機のパイロットに転進するのですが、そういった組織に所属するのではなくもっと気楽に大空を飛びたいと考えるパイロットは、地方を巡業する曲芸飛行団に所属したり、主人公のように各地を気ままに渡り歩き、各地で遊覧飛行を行うバーンストーマーとなることを選びます。バーンストーマーとは「納屋の扉を揺らす」という意味で、飛行機が低空を飛行すると農場の納屋がガタガタと音を立てることから名付けられた名前です。
この辺りの物語はかつてロバート・レッドフォード主演の映画、「華麗なるヒコーキ野郎」に描かれていますので、興味のある方はそちらも見られてはと思います。

村上イリュージョン1

彼らは練習機として大量に生産され、戦争が終わると共に、余剰となって民間に払い下げられたカーチス・ジェニーなどを愛機として地方を飛び歩いたのですが、そんな二人の飛行士がこの「イリュージョン」の主人公です。
現代に「救世主」を職業とし、そしてそれを辞めてバーンストーマーとなったドナルド・シモダ。そしてそのドナルドに商売仇でありながら惹かれて行くリチャード。
ドナルドは「救世主」を求めて自分の許にやってくる群集に対して癒しを与えたり病気を治したり、ちょっとした「奇跡」を起こし続けることに嫌気がさしていました。
そして、群集に向かってこう言います。

「ええと、私は自分が好まない道は歩くまいと思うのですよ。私が学んだのはまさにそういうことなのです。だから君達も、人に頼ったりしないで自分の好きなように生きなさい、そのためにも、私はどこかに行ってしまおうと決めたんです」

そしてドナルドは救世主を辞めバーンストーマーとしてどんなに飛んでも汚れたりオイル漏れしない、そして燃料も必要としない複葉機で旅に出てリチャードと会うのです。

なぜドナルドは辞めた救世主の仕事をリチャードに教えることにしたのか。それは最初に会ったときにリチャードがドナルドに言ったこの言葉がきっかけでした。

「人間が長い間飛べなかったのは空を飛べるわけがないって考えている人が圧倒的に多かったからなんだ、うまく言えないけど、人間は鳥にだってなれたんじゃないかと思うんだ、そして、今だって鳥になれると思うんだ、人間の格好をしたままでさ、大事なのは、やる気みたいなもので、ちゃんと空を飛ぶ方法があって、それを学んだり勉強したりする気持ちが大事なんだと思うね俺は」

ドナルドはリチャードに救世主という仕事について語り始めます。

「どうしても言いたいことがある。自由が欲しいときは他人に頼んじゃいけないんだよ、君が自由だと思えばもう君は自由なんだ、リチャード、このことのどこが一体難しいんだ?・・・」

そしてドナルドは「救世主入門」というテキストをリチャードに見せます。そしてそのテキストにはページ番号も目次もなく、どこを開いても、任意にページをめくればそこに一番知りたいことが書いてあるとのことでした。

「君にふりかかることは全て訓練である。訓練であることを自覚しておけば、君はそれをもっと楽しむことができる」

「責任を回避する一番の方法を教える。「私はすでに責任を果たした」そう大声で言いたまえ」

リチャードは不思議なことに読むと心が落ち着いて、暗記するまで何度も読み返し始めます。

そして少しずつドナルドの気持ちを理解し始めます。

「わかってきたよドン、君はせっかく学んだものを誰かに正しく伝えたいんだろう? 奇跡を求めて車椅子を何十台も押してくるんじゃなくて、ちゃんと話しを聞いて欲しいんだな? それが本当の救世主の仕事だと思うよ。」

そしてドナルドはついに、地方のラジオ放送に自ら進んで出演し、リスナーの質問にこう答えてしまいます。

「てめえはいかさま野郎だ」

「もちろん俺はいかさま師だ、この世界に生きている人間はみんなそうだ、本当の自分じゃないものになりすまして生きているのさ、いかさま師じゃない人がいたら紹介してくれ」

ドナルドはその結末を予期していて、自らの意思でそれを選んだのですが、それは全てのこの世のことが「イリュージョン(幻)」であることをリチャードに伝えるためであったのかも知れません。

私はまだ高校生だったときに初めてこの「イリュージョン」と出会いました。そしてそれから30年以上、折に触れては読み返す愛読書となったのですが、何度読んでもその時の自分に対してこの本は何かを語りかけてくれました。
私が読んでいるのは残念ながら原書ではなく村上龍氏の翻訳なのですが、後にその若き日の村上龍氏がこの翻訳をかなり自身の作品として、通常の翻訳以上にドラマチックに仕立てる創作を加えたことを知るのですが、そのことがこの作品の魅力を殺いでいるわけではなく、むしろリチャード・バックと村上龍の合作のような作品となっているのではと思います。

集英社イリュージョン1

現在は村上龍氏の翻訳版は絶版となっているようですが、後に佐宗 鈴夫氏による原書に忠実な翻訳も刊行されており、こちらは現在でも入手することができます。私は読んだことがありませんので、ひょっとしたら今まで書いた内容と少し異なっているかも知れませんが、私にとって「イリュージョン」はこの村上龍氏の翻訳したものであり、私自身は文学研究者ではありませんので、敢えて読まないようにしています。

心が弱ったり迷ったりしているときに、「本」は何かしら答えを導き出すきっかけを与えてくれるものです。そしてその答えは「本」から得られるのではなく、自分の中にすでにあるその答えを再確認するためのきっかけに過ぎないのですが、その「きっかけ」となる愛読書をいつでも読めるように手許に置いておくことは大切なことだと思います。

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テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学

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