走ってナンボ

アルファ・ロメオを始めとする「ちょっと旧いイタ車」を一生懸命維持する中での天国と地獄をご紹介します。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

妄信への警鐘

Toyotaemblem.jpg

トヨタのリコール問題はもはや一企業の起こした製品の品質問題に留まらず、豊田社長のアメリカ議会公聴会出席により政治問題の様相をも呈しています。公聴会への出席が本当に必要なことなのか単なる政治ショーなのかはさておき、トヨタの製造する自動車の不良問題がこれほどまでに世界中に影響を与ええていることだけは確かでしょう。

それは、コストダウンのための部品の共有化が過度に進んだため、その部品に一度不良が発生するとその問題が世界規模で蔓延してしまい、余程の重大な問題でない限り、その利益への影響を考えると自動車メーカーにリコールをためらわせてしまう…といった自動車を製造する上での問題提起であったり、トヨタがこの品質問題をもっと手前の設計段階で防ぎ得ずに、結果として販売後のクルマでしかも大規模に起こしてしまったというプロセスでの品質管理上の問題であったり、起こった後の対応に関わる企業の危機管理の問題であったり、様々な側面から論評されていますが、そのどれもがその通りでありながら、何となくそれがこの大騒ぎとなってしまった問題の本質ではないような気がしています。

今回の問題を一企業の起こした品質事故と捕らえると、問題が起こったとき、若しくは起こったことが分かったときに、トヨタがその組織構造の中で何を認識して、何を認識しなかったのか。そしてその問題の原因は何で何故見過ごされてしまったのか。トヨタがその後に行ったことと行わなかったことが合理的であったのか…といった検証はこれから行われるのでしょうし、その検証のための事実が全て揃ってはいませんので、そのことについてはまだ論評は控えるべきでしょう。

今や世界中の人々がトヨタが日本の自動車メーカーであることを知っており、そしてその自動車が世界で最も大量に生産され、その品質において最も優れていることを知っています。
世界地図で日本がどこにあるかを知らなくても、日本の首都も首相の名前も知らなくても、トヨタというクルマは知られているのですから、その認知度で言えばトヨタは日本を代表する象徴的な存在であると言って良いでしょう。しかも、そのトヨタの代表に現在は創業者の末裔である豊田氏が就任しているのですから、今回の一件で今や彼はミスター日本とでも言える存在になってしまいました。

一方でヘンリーフォードがその大量生産の方式で後の製造業全てに影響を与えたように、トヨタが考え出した生産管理方法であるカンバン方式や、日本の多くの製造業が採用した品質管理の手法であるカイゼン活動は、それがもはや国際語になるほど世界中に認知されるようになりました。
すなわち、トヨタが代表する日本の象徴がその高い生産効率と品質管理であったのですが、その神話が崩れたのが今回の問題だったのではないでしょうか。それはトヨタへの信頼が崩れたのみならず、日本発のグローバルスタンダードであるこれらのシステムにも限界があることが判明した事件でもあったのです。

豊田社長が公聴会の冒頭で述べた「私たちは完璧ではない」という台詞は、実に含蓄に富んだ台詞だと思います。
それは世界最高品質と認められ、トヨタの製品に間違いも問題もないと妄信する顧客に対してだけではなく、同時に自分たちトヨタの社員に対しての台詞でもなかったでしょうか。


私は以前にトヨタの社員の方々と一緒に仕事をしたことがあります。そこで私が会ったトヨタの皆さんは自分たちのシステムに絶対の自信を持っていました。決して現状に満足せず、常に何かしら改善改良をすることを求められ、またそれを当たり前のこととして行っている彼らを見るにつれ、それは企業文化を通り越してある種の宗教的な信仰にも似た思考様式のようなものを感じたことを憶えています。
そんな彼ら自身が、いつしか自分たちの製品には重大な品質問題は起こらないと信じるようになってしまったのではないでしょうか。もちろん設計段階や製造段階で様々な品質問題は発生します。しかしその問題を関係する各現場が寄ってたかって解決し、さらにカイゼン活動により再発防止に工夫を凝らすうちに、その数多くの関門をパスして製品として販売された自動車には最早、重大な品質問題なぞ残っているはずがないと考えるようになったのではないでしょうか。
事実、世界の自動車メーカーの中で最も魅力があるかどうかは別にして、最も品質の優れた自動車を製造するのはトヨタであることに異論を唱える人はいないでしょう。
そして、その品質を妄信しているのは顧客だけはなくトヨタの社員もまたそうだったのではないでしょうか。そう考えれば、当初暴走事故の全ての原因をフロアマットの問題にしたり、ブレーキの問題をドライバーの違和感と片付けたりした言動にも納得できます。それは欠陥を隠そうとしたのではなく、本当にそう信じていたのではなかったでしょうか。

私たちのような「ちょっと旧い」イタリア車の品質問題で辛酸をなめたユーザーは、トヨタ車のユーザーのように決してクルマを妄信したりしません(笑)
ちょっとした異音からでもトラブルを予測し、ブレーキやアクセルペダルの違和感を感じたらすぐに点検する習慣が身についているのは、決して安全運行のためだけではなく、それらが消耗部品や交換部品の早期発見のためでもあるのですが、そのチェックを五感を使って日常から行っていると、クルマの異常で命に関わるような問題には意外に遭遇しないものです。

考えて見れば、何かあれば即、命に関わる機械を操縦するにしては、自動車という乗り物は随分とお手軽になってしまったものです。命に関わるという点では自動車も飛行機も同じだと思うのですが、方や飛行機の操縦には機械的な知識をはじめ航空法や航法の知識、そして操縦そのものの技能に加えて緊急時の処理手順までみっちりと訓練を受け、免許の更新には健康診断まで要求されているのに対して、自動車に関してはその機械的な知識はおろか、緊急時のことなぞ何も知らないまま、ただアクセルを踏みさえすればどんなドライバーであっても時速100マイル以上で走ることができるのです。
だからこそ、これだけの自動車が世界中で販売されたのですが、やはり自動車は冷蔵庫や洗濯機とは違い、どちらかというと飛行機に近い機械だと思うのです。
もし、自動車運転免許レベルのパイロットが空を飛行機で飛びまわっていたらどうでしょう。緊急時の対処を全くすることなく墜落事故が起こったときには、落ちない飛行機を造れ…と航空機メーカーを吊るし上げる前に、そんな技能レベルのパイロットに何故免許を交付したんだ…と大々的に問題視されるはずです。
しかし考えて見れば、軽飛行機の墜落事故と自動車事故では一件あたりのその死者の数は大して変わらず、その発生件数は比べ物にならないほど自動車の方が多いのです。

自動車メーカーも自動車が公道を走ることを許している政府も、ドライバーに対して自動車を運転することにもっと厳しい資格を要求しても良いのではないでしょうか?

もちろん今回のトヨタ車の事故は何らかの欠陥によるもので、ドライバーの技術不足の問題ではありませんが、誰が悪いかを論じる前に、ドライバーに危機管理の知識と技術があれば、欠陥があったとしても死亡事故にまでにはならなかったのではないかと思います。
今回のトヨタの問題は、トヨタのクルマ造りを目指している世界中の全ての自動車メーカーと、そうして造られたクルマを「妄信」して、いざというときに自らの命を守る術を持たないまま平気でクルマを運転するドライバー全員に突きつけられた問題ではないかと思います。

人間が不完全であると同時に、その人間が作った機械も不完全であることを忘れてはならないと思います。

クリック↓お願いします!
b_01.gif

スポンサーサイト

テーマ:ひとりごと - ジャンル:車・バイク

コメント

トヨタをはじめとする日本の自動車メーカーにとってはいい教訓になったのではないでしょうか。
もっとも、米国のやり方がGM・フォード・クライスラーへの助け舟に見えて仕方ないです(笑)。
問題発覚のタイミングも、新規参入メーカにとっては「ハイブリッド=トヨタ」の方程式を揺るがされた今、ジュネーブショーが開催されてることが皮肉かはたまた策略か(大笑)。

プリウス問題に限って穿った考えをすれば、ホンダをはじめとする後発HVに対してのアドバンテージを得るために、
1.発売を急ぎすぎた。
2.燃費稼ぎを回生ブレーキに頼りすぎた。
3.価格を抑えすぎた。
ってトコでしょうか。

どちらにせよ、古いハイドロシトロエンに比べればブレーキの信頼性は格段に上なのは事実ですが(笑)。

  • 2010/03/04(木) 13:08:49 |
  • URL |
  • pekepeke #-
  • [ 編集]

>pekepekeさん
トヨタの問題の取り上げ方に米国の政治的な配慮があったかどうかはともかく、トヨタ側に隙があったのも確かだと思います。
別な言い方をすればトヨタは世界No.2でいるのが一番平和で、プリウスの技術はロイヤリティーを取って米国のメーカーに渡せば八方うまく納まったのかも知れませんね。

確かに世界一のメーカーにしては隙が大きすぎですね(笑)。
GMとかが躓いて得られたNo.1の称号に続いて躓いた、と(^_^;)。

  • 2010/03/05(金) 12:28:56 |
  • URL |
  • pekepeke #-
  • [ 編集]

再生を急ぎすぎたというのは当たってますね!CO2削減のためだけにあれだけ低価格にしたなら電子スロットルはいらないでしょう!フライバイワイヤーはミニバンに慣れた人たちには欠陥と思えてしまう?と思います。

  • 2010/03/05(金) 20:55:52 |
  • URL |
  • P-幹事長 #-
  • [ 編集]

>pekepekeさん
世界一のメーカーを目指していたワケじゃなかったんでしょうね(笑)
「出る釘は打たれる」という諺は日米貿易摩擦の際に実感してますからね。

>P-幹事長さん
先日はどーも(笑)
そもそもハイブリッドなんて中途半端な技術は熟成させても短命に終わると思っていた各自動車メーカーを尻目に、周辺産業の技術総動員で化石燃料自動車延命大作戦を展開したのですから、実は日本の産業基盤がなければ成立しない技術だったでしょう。
ところが、どんなにハイテクを詰め込んでも、燃費で見ればノーマルのガソリン車と大差ないのですから、お値段の取りようがないんですよね。だからあれこれテンコ盛りにせざるを得なかったのでしょう。
プリウスってなんだか安くて旨いから流行ったラーメン屋が勘違いして高級食材をトッピングして作った高級ラーメンみたいですね。

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://ig510190.blog83.fc2.com/tb.php/731-c930df8f
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。