走ってナンボ

アルファ・ロメオを始めとする「ちょっと旧いイタ車」を一生懸命維持する中での天国と地獄をご紹介します。

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私説Spiderの時代 ~916誕生~

ユーノス・ロードスターに触発されたヨーロッパの各メーカーは慌ててオープンモデルの開発をスタートします。
メルセデスベンツはSLKプロジェクトを急遽スタートさせ、BMWはZ3を、そしてポルシェはボクスターを開発します。
はるか昔にこのマーケットから撤退したイギリスのローバーもMGブランドを復活させMG-Fを開発し、マーケットに残る過去の伝説に少しでも肖ろうとし、Fiatも124Spider以来のオープンモデルとしてバルケッタを開発します。
市場はポストバブルで作れば売れる時代ではなく、こうしたニッチマーケットにも各メーカーが群がらざるを得ない状態だったのです。

このように他社のオープンモデルがその開発の経緯から、何らかの形でユーノス・ロードスターをベンチマークにしていることに対して、アルファ・ロメオにとってSpiderはユーノス・ロードスターがあろうとなかろうと開発されるべきモデルでした。アルファ・ロメオにとって新型Spiderの最大のライバルは旧型のSpiderであり、27年間という未曾有の販売期間の後の新型Spiderは絶対に失敗が許されないモデルでした。

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ユーノス・ロードスターが市場に発表された1989年の2年前に新型Spiderはピニンファリーナのチーフデザイナーであったエンリコ・フミアさんの手によりそのスタイリングデザインは完成していました。
しかし、問題はどのプラットフォームをベースにこのSpiderを開発するのかという点で、当時のアルファ・ロメオが持つシャーシーはアルファ・スッドの後継モデルである水平対抗4気筒エンジンを搭載したアルファ33、トランスアクスルが特徴のアルフェッタの末裔であるアルファ75に加えて、ようやくSAAB、Fiat、Lanciaとの共同開発であったTipo4プロジェクトの最後に開発が完了したアルファ164の3種類で、そのどれもが新型Spiderにはマッチしていませんでした。
ここでの疑問は、一体アルファ・ロメオは新型Spiderをどのプラットフォームをベースに開発しようとしていたのかという点です。
Fiatがアルファ・ロメオを買収したのが1986年で、Fiat Tipoの発表は1988年ですから、Spiderの企画当初からTipoシャーシーを使用することは決定されていたのかも知れません。事実、エンリコ・フミアさんもデザインする上での制約はTipoシャーシーのサイズだったと述懐しています。

しかし、そうであれば何故Berlinaである155より早くこのプロジェクトを進行させたのでしょう。同じシャーシーやエンジンをベースにしたBerlina、Sprint、Spiderという3種のボディラインアップはアルファ・ロメオにとって鉄板で、Giulietta、Giuliaと続いたこのバリエーションは久しく途切れていたのですが、開発の順番はやはりBerlinaが最初で、続いてSprintやSpiderといったスペシャルモデルが続くのが一般的ではないでしょうか。
いくら脳天気なアルファ・ロメオの経営陣でも、その当時の自分たちにBerlinaとSpiderを一度に開発することなぞできないことは分かっていたのではないかと思います。
これからの私の仮説を裏付ける事実は、1992年に発表されたアルファ155のデザインがそれまでのアルファ・ロメオのデザインに全く実績のないトリノのI.DE.Aだったことです。このI.DE.Aという会社はむしろFiat御用達で、Fiat Tipoをデザインしたことで有名になった会社です。
アルファ・ロメオは何故、一番重要なアルファ75の後継セダンであるアルファ155のデザインを自社のデザインセンターでもなければ、今まで関係の深いピニンファリーナでもベルトーネでもないI.DE.Aに任せたのでしょうか。この決定はFiatにとってもリスキーであったに違いありません。

アルファ・ロメオはFiat傘下になったときに、合併効率を高めるためにFiatとシャーシーやエンジンの共通化をしなければならないことを予測していたのですが、その可能性が一番高いTipoシャーシーはアルファ・ロメオにとってどうしても気に入らない点があったのです。それはリアがトレーリングアームであることで、アルファ・ロメオはFFであろうとも自分たちが納得できるドライビングフィールを追求すべきと考えていました。事実、アルファ・ロメオ独自のFFモデルであったアルファ・スッドやその後継モデルのアルファ33でリアサスペンスションに採用した形式はワッツ・リンクとパナール・ロッドの組み合わせだったのです。Fiat Tipoのトレーリングアームはスペース効率とコストの面で優れてはいましたが、クルマの運動性という面ではアルファ・ロメオにとってはとても許容できないものだったのではないでしょうか。

アルファ・ロメオは自分たちが納得できるドライビングフィールを確保するためにTipoシャーシーのリアを改造してマルチ・リンク形式にすることを考え付きます。マルチ・リンクであれば仮にFiat Tipoのシャーシーであってもアルファ・ロメオのスポーツアイデンティティは守られると考えたからなのですが、改造設計に時間がかかり、コスト面でも割高となるマルチ・リンクは、Berlinaに最初から使うにはFiatの抵抗が大きいだろうと考えたアルファ・ロメオは、その実現のための方法として、Spiderと続くSprint(GTV)の計画をわざと先行させたのではないでしょうか。これらのスポーツモデルであれば、マルチリンク化するコストアップにも価格的に対応可能ですし、そこで開発費を吸収してしまえば、続くBerlinaにも使用可能だと考えたのです。しかもこの順番はGiuliettaの発表のときと同じで、先にSprintを発表しアルファ・ロメオのスポーツイメージを先行させ、後にBerlinaを発表することにより販売を伸ばした実績もあり、Fiatを説得できるのではないかと考えたのです。
実際、Fiatに買収されたことによりアルファ・ロメオはどうなるのかという市場の不安に対して、アルファ・ロメオが守るべきはその伝統であるスポーツイメージでした。
そう考えるとアルファ・ロメオがピニンファリーナに1987年の段階でSpiderのデザインを発注していた理由になります。

ところがFiatはその計画に納得せず、やはりBerlinaの計画を先行させるよう指示します。実際に当時の販売モデルであったアルファ75はエンジンをツインスパークにすることにより多少のリフレッシュ効果を上げたものの、アルフェッタ以来のシャーシは旧態化しており、Fiatにとってまず何とかしなければならないのは量販車種であるBerlinaであると考えたのです。
この決定はアルファ・ロメオにとっては予想していたことでしたが、それでもマルチ・リンク化を推進したいアルファ・ロメオが意地を張ったために、結果としてFiatはアルファ155の計画をFiatサイドで推進せざるを得なくなり、そのことがI.DE.Aというアルファ・ロメオにとって実績のないデザイン会社に任せることになったのではないでしょうか。そして一方で、アルファ・ロメオはアルファ155の計画を先行させるという譲歩と引き換えにSpider/GTVのサスペンスションにはリアをマルチ・リンクに改造して使用する許可を取り付けることに成功します。と言うか、アルファ・ロメオにとってこの結果も想定内の落としどころではなかったでしょうか。
しかし、あれほど嫌っていたTipoシャーシをベースにすることにより、アルファ・ロメオの原点とも言える、Berlina、Sprint(GTV)、Spiderという三種のボディバリエーションを復活させることができたのは皮肉なハナシです。

いずれにせよこのストーリーはあくまで私の推論ですので誤解なきように願います。

かくして当初のデザインから7年も経った1994年に発表された916Spiderは、アルファ155と同じFiat Tipoのシャーシーでありながらその兄弟車と異なり、アルファ・ロメオ独自のマルチ・リンク式のリアサスペンスションを持つスポーティなモデルとしてアルファ・ロメオが堂々と世に出せるクルマとなりました。
しかし、結果として発表時期がライバル車と奇しくも同時期になってしまったのは、ひとえにアルファ・ロメオのこの開発スケジュールの遅れによるもので、私の推論のように仮に社内の交渉に勝利した結果ではあっても、販売的には916Spiderの不運であったと言えます。
もし当初の予定通りのスケジュールでSpiderを開発し、しかもATモデルを加えて北米でも販売していれば、ライバル車より早く発売することができ、ユーノス・ロードスターとその市場を分け合い、アルファ・ロメオは北米から撤退せずに済んだかも知れませんし、続くアルファ155はリアをマルチリンクとしたスポーツセダンとして後のアルファ156に匹敵する販売実績を上げたかも知れません。
しかし、残念ながらその恩恵に与ったのはアルファ・ロメオではなく、メルセデス・ベンツのSLKやBMW Z3といったドイツ車勢で、彼らは後発のメリットからユーノス・ロードスターを研究し差別化を図り、ユーノスが確信的に取りこぼしたオープン2シーターのアッパーマーケットを狙って販売を伸ばしたのです。

これほどまで苦労して開発されたシャーシですが、916Spiderの最大の魅力はそのスタイリングであることに異論を唱える人はいないでしょう。
そのデザインは一見すると奇抜に見えるかも知れませんが、エンリコ・フミアさんによるとSpiderの下方にスロープしたボディラインはGiulietta Spiderをモチーフにした1950年代~60年代の典型的なフォルムで、フロントマスクの左右のエア・スクープも同じくGiulietta Spiderのフロントマスクをモチーフにしたそうです。
そしてそのボディデザインは20年が経った現在でも新鮮であり続けています。

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115Spiderから916Spiderへの過渡期は、一つの車種の単なるモデルチェンジではなく、アルファ・ロメオにとっては歴史的な転換期でもありました。そこには様々なストーリーがあったに違いないのですが、私たちがそれを関係者の口から聞くことができるのはもっと後のことでしょう。

いずれその時がきたら私のこの仮説の真偽を確かめて見たいものです。

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テーマ:AlfaRomeo - ジャンル:車・バイク

コメント

916スパイダー

こんにちは。
初めてコメントさせて頂きます。
僕は916スパイダーが大好きで、いつかは手に入れたいと思っております。なので今回の文章、とても興味深く読ませて頂きました。GTVも素敵なデザインだと思いますが、916スパイダーのリアフェンダーあたりの造形は信じられないくらい美しいと思っています。見ていて飽きません。とても素晴らしい!と思います。

  • 2010/02/18(木) 00:43:09 |
  • URL |
  • okuda-vz #mQop/nM.
  • [ 編集]

> フロントマスクの左右のエア・スクープ

確かに、これは60's Alfaに由来するものだと思ってました。美しいですよね。何故エア・スクープのフィンが2枚なのか?がちょっと疑問ですが。1枚ならもっと良かったのに。そうすればきっと中期型でメッキ調にされてたと思います(大笑)。

916Spiderのリアデザインはまさに一目惚れ、の一言ですね。

  • 2010/02/18(木) 14:29:01 |
  • URL |
  • pekepeke #-
  • [ 編集]

私もblogで書いたのですが、80年代後半のアルファロメオはFiatによる買収で、アイデンティティを盛り込んだシャーシを捨て、共通化されたものを使うことになり、開発陣にとっては屈辱的な環境だったのではないかと思います。それだけに105、115系よりも916spiderや164にその作り手の想いより深く感じます。916spiderはTVKの新車情報で意外にも三本氏が絶賛してましたね。(いまでもyoutubeにあるはず)

  • 2010/02/18(木) 17:38:30 |
  • URL |
  • masaking #-
  • [ 編集]

>okuda-vzさん
始めまして。916は初期型であれば随分とお値段もこなれて来ました。フツーのクルマとしての賞味期間を考えるとそろそろかと思いますので、思い切って買ってはいかがでしょう(笑)
意外に手がかからないクルマですが部品がだんだん無くなって来てます。

>pekepekeさん
エアスクープのフィンの数については
今度フミアさんに聞いておきます(笑)
彼のデザインには全て明確な意図があるので、きっと何かしら答えがあると思いますよ。

>masakingさん
ご自身のブログでご紹介されてましたので、例の「新車情報」を拝見しました。あの三本氏が乗り味を絶賛されてましたが、セダンからスポーツカーまで同じ切り口で評論する無見識な方が多い自動車評論界にあって三本氏はちゃんとこのSpiderの最も大切な部分を見抜いていましたね。
ちなみに・・・あの「不躾棒」は好きでした(笑)

個人的に

916はGTVよりもSpiderの方が好きです。
開発の経緯の推測も結構当たっているのかもしれませんね。

  • 2010/02/18(木) 23:16:44 |
  • URL |
  • こ〜んず #JalddpaA
  • [ 編集]

>こ~んずさん
916のデザインではSpiderが先かGTVが先か・・・という議論がオーナーの間であったのですが、フミアさんが明言したので沈静化した経緯があります(笑)
でも、GTVのデザインも素晴らしいと思いますよ。

916系は開発される背景に複雑な会社の事情がからんでたのですね。現行の939系も同じようなストーリーがありそうですが(苦笑)

916系が偉大なのは、オリジナルデザインがとても20年以上も前に描かれたものと思えないほど普遍性に溢れるものだということですね~
今でも十分モダンでかつアルファのブランドアイデンティティを体現していると思います。実際所有していて全く見飽きることがありません。

  • 2010/02/20(土) 18:38:49 |
  • URL |
  • chifurinn #v51sc8r6
  • [ 編集]

>chifurinnさん
確かに、クルマにそれほど詳しくない方には「新車ですか?」と言われますよね。
エンリコ・フミアさんのデザインの真骨頂で、これほどまでに年齢不詳の中古車は珍しくお買い得だと思いますね(笑)

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