走ってナンボ

アルファ・ロメオを始めとする「ちょっと旧いイタ車」を一生懸命維持する中での天国と地獄をご紹介します。

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私説Spiderの時代 ~115の終焉~

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身近にある115Spiderと916Spiderという2台のSpiderは、名前こそ同じでも技術的には全く共通点のないクルマです。
それは方や1966年に発表されたSpider Duettoから連綿と作られ続けた最後のモデルである115Spider Sr.4と、Fiat Tipoのシャーシーをベースにエンジンまでもが新設計され、横置きFFとして今までのアルファ・ロメオから完全に決別した916Spiderの初期型2.0TSなのですが、この限りなく製造年が近い2台を見たときに、この新旧Spiderの過渡期のことを思い出してしまいました。

当時の私はボロい、旧い、高いと言われながらそれでも製造され続けた115SpiderのSr.4がようやく製造を終了し、新たにTipoシャーシーをベースにした新型SpiderがFFで発売されると聞いたとき、これでいよいよアルファ・ロメオは全車種がFFとなることに何とも言えない寂寥感を覚えたことを記憶しています。

そもそも115Spiderはシーラカンスのようなクルマで、北米の衝突安全規制や排気ガス規制の強化に伴いライバルであるイギリス製のオープン2シーター車が絶滅し、この車種のマーケットそのものが縮小される中にあって、結果として選択肢がないために生き残ったモデルであると言えます。
もちろん後になってエバーグリーンなピニンファリーナデザインやらアルファ伝統のDOHCエンジンにFRレイアウトといった魅力が多く語られますが、当時のマーケットでの評価は「もういいんじゃない?」というもので、マツダ・ミアータ(ユーノス・ロードスター)の登場により、にわかに脚光を浴びたこのマーケットではとても同列で比較されるようなクルマではなかったと思います。
もちろんだからダメクルマかと言うと全然そんなことはなく、オープン2シーターなどという実用性とは対極にあるクルマのカテゴリーにあっては、単に性能や装備だけで比較されるのではなく、そのクルマが持つ「味」というのも重要な要素で、だからこそユーノス・ロードスターにはないその「味」を持つSpiderも同様に評価が上がったのは面白い現象だったと思います。

さて、もはや死滅したと思われていたオープン2シーターのマーケットに新型車として投入されたユーノス・ロードスターはユーザーに大歓迎されただけではなく、同様のクルマをもともと製造していたユーロッパの各メーカーを驚愕させました。なぜなら彼らがマーケティングリサーチにより、「ない」と考えていたマーケットがユーノス・ロードスターの出現により掘り起こされ、しかもその刺激により需要が喚起され、もはや死にかけていたSpiderのような既存のモデルの販売までもが息を吹き返したのです。

ヨーロッパのメーカーが「どうせそんなニーズはない」と思い込んでいたマーケットに実はこれほどまで潜在需要があり、自動車という成熟商品にもまだプロダクト・アウトという手法に可能性があることの証明が、このユーノス・ロードスターの成功だったのですが、一方でアルファ・ロメオにとってこの115Spiderを製造し続けたのは別に企業戦略でも何でもなく、単に製造を止める理由がなかったからと、アルファ・ロメオにとってSpiderというモデルが常にラインアップの中にあるのは「当たり前」であったからに他なりませんでした。

もちろんそれはユーノス・ロードスターとは異なり、伝統的に専用シャーシではなく、中型のベルリーナやスプリント用のシャーシを流用したものであったため、これらがモデルチェンジされなければ当然Spiderも新型になれなかったのは言うまでもないでしょう。
従って、1989年に発表されたユーノス・ロードスターの大反響に対して、アルファ・ロメオにできたことはデザイン的に不評だったSr.3をフェイスリフトすることしかなく、アルファ75の後継モデルであるアルファ155の開発に注力せざるを得ない経営環境では、新型Spiderの開発スケジュールは後回しにせざるを得なかったのです。
当時のピニンファリーナのチーフデザイナーであったエンリコ・フミアさんは早くにこの新型Spiderのプロジェクトに係わり、デザイン段階は既に終了していたにも関わらず、新型Spiderのプロジェクトは延期されてしまいます。
そしてその代わりに依頼されたのが、現行の115Spiderのフェイスリフトだったのです。

エンリコ・フミアさんは不評であったSr.3の空力パーツを全て取り除き、発表当時のDuettoをモチーフにフロントフェイスとリアをデザインし直します。そしてそれは厳しいコスト制約の中でのリデザインで、当時のアルファ・ロメオには明らかにモデル末期の115Spiderのために注ぎ込む資金はありませんでした。

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しかし、エンリコ・フミアさんは最低限のパネル変更のみで115Spiderを蘇らせることに成功します。そのスタイリングは最初からのデザインであるかのように全く違和感がなく、特にリアのデザインはアルファ164のデザインで成功した一本のライン上にライトをまとめることにより、アルファ164、33と共に当時のアルファ・ロメオの共通したデザインアイコンを形成していました。

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そして北米のディーラーからの強い要望に答え、ようやくパワーステアリングとATミッションを搭載し、衝突安全対策のためにエアバッグまで装備したSr.4と呼ばれるモデルは、その24年という長寿の末に画期的な販売台数を記録することとなります。

ここからは想像なのですが、これらの経緯を見る限り、アルファ・ロメオにはもともとSr.4という企画はなかったのではと思うのです。アルファ・ロメオは本来の計画では1991年から1992年頃に新型Spiderの発表をするつもりだったのではないでしょうか。ピニンファリーナに依頼された新型Spiderのデザイン案は1987年に完成していたことからも、このスケジュールは現実的です。
ところがこのプロジェクトは延期されてしまいます。そもそもの計画がFiat傘下への経営統合とは無関係で進められていたために、実際にFiat主導により進められた新型ベルリーナの155プロジェクトによって、アルファ・ロメオの既存のプロジェクトは全て白紙となってしまったのですから、この延期は仕方なかったと思いますが、一方で延期されたピニンファリーナはたまったものではなく、「じゃあ何か仕事をくれ」ということになり、急遽発注されたのがこのSr.4ではなかったでしょうか。
1990年というSr.4の発表時期を考えると、アルファ・ロメオがユーノス・ロードスターの発表に刺激されて計画したとは思えず、むしろピニンファリーナを宥めるための臨時プロジェクトであったと考えると得心ができます。それに、アルファ・ロメオはそもそも他社の動向を気にするような状態ではなかったでしょう(笑)

ところが結果としてユーノス・ロードスターに対抗するタマとして、世の中にはこのSpiderしかありませんでした。しかも相手は5MTの設定しかなく、「ATだったら」という潜在顧客にAT仕様のSr.4Spiderはアピールし、北米での販売だけでなく、日本を始めとする販売国全てにおいて販売台数が急上昇することとなります。とは言ってもそれはあくまで「ある程度」といったレベルであることには変わりなく、115Spiderの歴史の最後の花道を飾ることにはなっても、さらなる延命とはなりませんでした。
結果として115Spiderは1966年の誕生から1993年まで27年間に亘り製造されました。その全ての時代において必ずしもトップセールスを記録したわけではありませんが、いつの時代でもアルファ・ロメオがアルファ・ロメオであり続けるためにSpiderは必要で、アルファ・ロメオからSpiderが販売されているだけでファンは安心したことも確かです。

クルマとして見たときに115Spiderはその欠点ばかりが目に付きます。NAのDOHCエンジンを縦向きにフロントに置き、リアを駆動するというコンベンショナルなレイアウトはユーノス・ロードスターと共通であっても、ボディ剛性はオープンであることを割り引いても劣悪ですし、内装のクオリティはとても新車とは思えないレベルでした。後付のエアコンもマニュアルエアコンで効きは悪く、ライバルにない頼みのATも原始的な3ATと時代遅れの感は否めないものでした。
しかし、このクルマは間違いなく1990年代に新車として生産され、ユーノス・ロードスターと同じ時期に販売されていたのです。そして同じく製造から20年が経過しようとする現在、中古車価格は完全に逆転し、115Spiderの価値は下がることはありません。
クルマとしての価値は20年オチの中古車は限りなくゼロで、どちらも敢えてそれを買うような価値はないにも関わらず、それでも115Spiderが高値で流通しているのは、新車のときからボロかった115Spiderがその新車当時から現在に至るまで、比較対照してクルマを選択するという尺度では測られなかったからなのかも知れません。

しかし、一方でユーノス・ロードスターをベンチマークにしたオープン2シーターのマーケットは厳しい比較対照の時代に突入して行くことになります。

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テーマ:AlfaRomeo - ジャンル:車・バイク

コメント

ホンのひと工夫で80年代カーを90年代カーに変えたフミアさんの力はすごいですね。
ユーノス・マツダもビックリしたことでしょう。ドアノブを真似させてもらった旧車(=Spider)が現役で売られ続けるわけですから(笑)。

  • 2010/02/15(月) 12:17:14 |
  • URL |
  • pekepeke #-
  • [ 編集]

スパイダー納得です。今、車検に出してます。
甥っ子が某大学に合格しました。受験番号が50190でした。何か、ありがとうございます。

  • 2010/02/15(月) 16:38:07 |
  • URL |
  • BUSSO #-
  • [ 編集]

>pekepekeさん
当時はロードスターがバックオーダーで待ちきれないヒトもSpiderを買いに来たそうです。全然違うクルマなんですけどね(笑)

>BUSSOさん
合格おめでとうございます。
私とは何の関係もありませんが・・・(爆)

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