走ってナンボ

アルファ・ロメオを始めとする「ちょっと旧いイタ車」を一生懸命維持する中での天国と地獄をご紹介します。

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幻の陽光

自動車先進国の中でもイギリスでは多くのブランドが消え、残ったブランドもその名前を残すのみで自国の資本ではなくなってしまいました。あのロールス・ロイスもMiniも現在はBMW傘下ですし、ジャガーはFord傘下でさらにその行く末は不透明な状態です。かつてご紹介したアストン・マーティンも現在は投資家集団によって経営されています。
一方で消えてしまったブランドも枚挙に暇がなく、その中の一つが今回ご紹介するSunbeamです。
なぜ今回Sunbeamを取り上げようかと思ったのかというと、昨年訪れたイベントでトヨタ博物館が所蔵する1922年 Sunbeam Grandprixを見たからなのですが、これほどまでの先進的なメーカーが何故消えていかざるを得なかったのかに興味を持ったからに他なりません。

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Sunbeam Motor Company Ltd.は1905年にイギリスで設立されました。創業者のジョン・マーストンは自転車製造で成功した人物で、その技術の延長線として自動車製造に参入したのですが、1909年にSunbeam社に加わったルイス・コータレンはレースが技術を進歩させるという信念のもと、レースカーを開発し様々なレースに参戦するようになります。
こうして進歩したSunbeam車はロールス・ロイスやベントレーと並ぶ少量生産の高級車メーカーとしての地位を確立するようになったのですが、ロールス・ロイスが例のパルテノン宮殿を模したと言われる特徴あるグリルと豪華なコーチワークによる様々なボディデザインで派手であったことに比べると、どちらかと言うと地味で控えめなデザインでした。
第一次世界大戦の軍需景気の中でSunbeam社は発展したのですが、第一次世界大戦後はより経営基盤を強固にするためにフランスのダラック社と合併することとなります。ダラック社はアルファ・ロメオが最初にライセンス生産したほどのメーカーでその技術力には定評があるメーカーで、すでにイギリスのTarbtot社を傘下に収めていたダラック社は、Sunbam-Tarbot-Darracq社としてイギリスとフランスにおいて自動車生産を行う大企業となります。
Sunbeamはこれで安定した経営基盤を得ることができ、1920年代はまさにSunbeamの光り輝く時代でした。

しかし、1929年に始まった世界大恐慌を、STD(Sunbeam-Tarbot-Darracq)は生き残ることができませんでした。1935年には同社は破産管財人の手に渡り、ウイリアムズ・ルーツ(William Rootes)に売却されることになります。その売却時点で商業的に上手くいっていたSTD生産車種はTarbotだけで、Sunbeamのモデルは斜陽となっていました。
当時、後のジャガーを設立するウィリアム・ライオンズはSunbeamを買い取ろうとしますが不調に終わり、後にジャガーを設立することになるのですが、もしこのときにSunbeamがウイリアム・ライオンズに買われていたら、後の運命は大きく変わっていたかも知れません。

さて、新たに傘下に入ることになったルーツ・グループは現在のバッジエンジニアリングの先駆者で、同じ量産シャシーに異なる車体とエンジンを架装して別々の市場に投入し、それまでのブランドイメージをうまく利用しながらコストを抑えて利益を上げることを得意としていました。
その方針に従い、第二次世界大戦後にSunbeam-Tarbotというブランドで開発投入されたのがSunbeam-Tarbot80と90で、さらに1953年にはSunbeam-Tarbot90をベースとしたスポーツモデル、Sunbeam Alpineが発売されます。
そして、さらに二代目となる1959年発売のAlpineをベースにフォード製のV8エンジンを搭載したモデルがこのSunbeam Tigerなのです。

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そもそものきっかけはキャロル・シェルビーが企画したAC Cobraで、Sunbeam Alpineと同様に小柄なデザインの英国製スポーツカーの非力なエンジンを米国製の大排気量V8に置き換えることにより、北米市場で魅力のあるスポーツカーを作ろうと考えたことにあります。
同じくキャロル・シェルビーにその開発を依頼し、1964年にAlpine Sr.4にCobraと同じフォード260V8エンジンが積まれたTigerがデビューすることになります。

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当初の260V8ユニットを搭載したTiger Sr.1は北米市場で好評をもって販売され、1967年までに6495台が生産されました。

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そして後にCobraと同様に289ユニット(4727cc)を搭載したSr.2に進化するのですが、ルーツグループ自体がクライスラーに売却されてしまいます。クライスラー傘下になったSunbeamにフォード製ユニットを搭載することはできないため、これからの発展が期待されたTigerは終焉を迎えることとなります。

クライスラーは既に買収していたSimcaとルーツを統合し、「売れ筋」の車種を残して販売しようとしますが、そもそも継ぎ接ぎで生き残ってきた各ブランドに「売れ筋」などという車種は残っておらず、結果としてその全てのブランドが消えていったのは当然のことでした。

現実的には最後のSunbeamと呼んでよいこのTigerにはそれでも古き良きSunbeamの名残が残っており、各所にその魅力的なディテールを見ることができます。

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この個体はハードトップを装備していますが、簡単に脱着することができ、ソフトトップとすることが可能です。

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最大の魅力はこのテールで、当時良く見ることのできた縦長のテールレンズとそれに続くフィン状のリアの処理が控えめながらスタイリングのアクセントとなっています。

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Tarbotミラーと呼ばれた砲弾型のサイドミラーは当時の英国製スポーツカーの定番とも言えるミラーで、その視界は劣悪だったものの魅力的な装備です。

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室内は当時の英国車定番のレザーとウッドパネルですが、それは豪華なものではなく、むしろチープと言って良い作りです。このことからもSunbeam Tigerはグランドツアラーではなく、あくまでスパルタンなスポーツカーとして企画されていたことが分かります。

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これは標準装備であったのかどうか定かではありませんが、ロックボルト式のホイールであるにも関わらず、センターのキャップはノックオフ式のスピンナーが装備されています。

Sunbeamのように消えていったブランドと現在まで生き残っているブランドの差は、経営が健全だった時代にどれだけそのブランドの独自性を市場で確立したかの違いではないかと思います。
もし、そのブランドイメージがしっかりと確立されていれば、仮にその後の経営環境の変化により売却されることがあっても、ブランドそのものは生き残っていくのではないでしょうか。
残念ながらルーツ・グループが買収したブランドはSunbeamを始め、どれもそのブランドイメージが強固なものではなかったために、結果としてその全てのブランドは消えてしまいました。
もしSunbeamがAC Cobraと同様にこのTigerをうまく発展させ、スマートなスタイリングにパワフルなV8エンジンを搭載した魅力的なスポーツモデルを生産し続けていたならば、戦前と同様にSunbeamのスポーツイメージは継承され、今なおブランドとして生き残っていたのではと思います。

太陽の光(Sunbeam)は天気の悪いときにこそしっかりと思い続けなければ、そのまま再び見ることなく夜の闇に包まれてしまうという結末はあまりに皮肉的ではないでしょうか。


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テーマ:英国・イギリス車 - ジャンル:車・バイク

コメント

ジャガーはタタ自動車に買収されていますよ。2008年3月にフォードと正式合意だそうです

  • 2010/01/11(月) 20:39:36 |
  • URL |
  • なべ #-
  • [ 編集]

>なべさん
そうでしたね(汗)
最近の自動車産業の再編成にはついて行けません(笑)
これからはインドだけでなく中国資本傘下に入るメーカーも増えそうですから、中国は自動車ブランドの宝庫になるかも知れませんね。

Sunbeam、じつは知り合いの方が最近ロードスターのタイプを入手された
のですが、基礎知識がなかったため、今回の記事は大変参考になりました。

まだ実車を拝見してないのですが、拝見することになった際には魅力をよくチェックしたいと思います。


ご挨拶遅くなりましたが、本年もよろしくお願いします!

  • 2010/01/12(火) 10:50:37 |
  • URL |
  • chifurinn #UwkW36/E
  • [ 編集]

Sunbeam、一昨年の映画「ゲット・スマート」に出てました。TigerかAlpineだったかと。こういう経緯のメーカーだったんですね。勉強になりました。

  • 2010/01/12(火) 12:33:51 |
  • URL |
  • pekepeke #-
  • [ 編集]

>chifurinnさん
こちらこそ今年もよろしくお願いします。
身近にSunbeamがいるなんて素敵ですね。Sunbeam Alpine, Triumph Spitfireなんてちょっとソソられます(笑)

>pekepekeさん
イギリスとフランスの今はなきブランドはエピソード満載なんですよね。
機会があれば取り上げて見たいと思います。ファセル物語なんか泣かせますよ(苦笑)

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