一方で、クルマのミニチュアカーを収集したり、カタログやマニュアルなどの紙物を集めたり、そのメーカーのグッズを集めたりするのも立派なクルマ趣味で、これらは往々にして本流のクルマを所有することとセットになっているものなのですが、最近ではそれ単独で趣味として成立している例を良く見かけます。
良い例がテレビゲームで、グランツーリスモの名人は意外にクルマの免許を持っていなかったりするのですから、そのヒトにとってグラン・ツーリスモは「ヴァーチャル」・シュミレーションではなく、「リアル」・シュミレーションなのかも知れません。
そんなクルマ趣味の中に最近はマンガも加わったようです。過去には「サーキットの狼」に始まり、その題材に取り上げられたスーパーカーは実物を巻き込むブームとなり、それは一種の社会現象にまでなったのですが、それ以降はクルマを題材にしたマンガはクルマそのものを主人公にしたものは少なく、むしろクルマを中心におきながら人間を描いた作品が多いように思います。例えば西風氏が描くクルマは、クルマ単体の魅力と言うよりその周囲の「人間」を描くことによりより一層クルマの魅力を引き出しているように思えます。クルマ趣味の断片を切り取ったようなショートストーリーの集大成とも言える「GT Roman」に描かれたアルファ・ロメオとそのオーナーは若干オバカっぽく描かれ過ぎているものの、その言動は大なり小なりアルファ・ロメオのオーナーには共通しており、氏の人間観察の鋭さが窺い知れます。

田中むねよし氏もしかりで、ご自身の体験に基づく自伝のようなそのストーリー展開は、読者を田中氏に置き換えさせ、自らの体験のような感覚に引き込みます。

そんなクルマを題材にしたマンガの中で、私が好きなのが新谷かおる氏の「ガッデム」で、WRCという珍しい題材を選んで描かれたこの作品は、その内容もストーリー展開も素晴らしく、松本零士氏のアシスタントをされていたという氏の経歴から想像できる通り、しっかりとしたリサーチに基づくメカニズムの描写と、精緻に設定されたキャラクターとストーリー展開が読む者を飽きさせない魅力を持っています。氏の作品は「エリア88」があまりに有名ですが、「ファントム無頼」、「ふたり鷹」など個人的には大好きな作家です。

クルマを題材にしたマンガの中で最近知ったのが、岡本健志氏の「クワドリフォリオ」というアルファ・ロメオを題材にしたマンガです。
相当マニアックなマンガであるこの「クワドリフォリオ」はテスト中に事故死したF1レーサーを父に持つ高校生の女の子が主人公で、その彼女の愛車がSZ(ES30)という設定が凄いのですが、描き込まれているさまざまなアルファ・ロメオは結構正確で、オーナーでなければ分からないであろう描写などはなかなか秀逸です。
惜しむらくはそのストーリー展開で、おそらく長期連載を前提に書き始めたのであろうストーリー運びが連載していた雑誌の休刊に伴い急遽終わらせる必要に迫られ、単行本2巻分で終わらざるを得ず、どうも尻切れになってしまっています。本来の予定通りの連載であればこのストーリーはどう展開したのであろうと思うと、少し残念な作品です。
読んで見るとこの作品の主人公はあくまでアルファ・ロメオではあるのですが、それがアルファ・ロメオでなければならないか・・・と言うとそうでもなく、ストーリーそのものはどんなクルマであっても成立するように思えます。おそらく岡本氏はこのストーリーを書きたいから書いたのではなく、アルファ・ロメオが好きだから描いたのでしょう。その想いはちゃんと伝わってくる作品です。

どんな切り口で描くにせよ、アルファ・ロメオとそれに係わる人間が魅力的でなければマンガが成立しないのは当然で、今後、北方謙三氏の書くマゼラーティのようにアルファ・ロメオを中心据えた小説なんかが世に出ると嬉しいのですが・・・どなたか書いてくれませんかねぇ。
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