
アルファ・ロメオには、その歴代のモデルにカロッツェリアにデザインを託したスペシャル・モデルが存在しています。
以前にご紹介した1954年に発表されたGiuliettaには、ベルトーネのフランコ・スカリオーネがデザインしたSprintと呼ばれたクーペと、社内デザインによるBerlina(セダン)、そしてピニンファリーナによるSpider(オープン)モデルが標準として製造されていました。
加えてアルファ・ロメオはこのGiuliettaをベースにしたスペシャル・モデルのデザインをカロッツェリアに委託します。委託されたのはザガートとベルトーネの2社で、その依頼に基づきザガートがデザインしたものが有名なSZ(Sprint Zagart)でした。このSZはアルミニウム製のボディを架装することで車重は僅か785kgに抑えられており、その軽さを生かしてレースで活躍し始めます。そしてこのSZはSVZ、SZ2を経てTZへと進化し、最終的にはTZ2によって結実します。
一方で、ベルトーネのフランコ・スカリオーネはSprintをデザインした経験から、Sprintと異なるコンセプトのスペシャルティ・クーペをデザインします。
1957年のトリノ・ショーで発表されたこの"Speciale"はそれまでの一連のデザインスタディであったBATシリーズを発展させたもので、薄くそして低くデザインされたフロントノーズから、伸びやかに続くリアまでのラインが最後にはスパっと切り落とされた、コーダ・トロンカと呼ばれるテールで終わる美しいクーペでした。
そのボディはザガートと異なり、スチール製ではありましたが、それでもSprintより35kg軽い860kgまでの軽量化を達成していました。当然のことながらエンジンの出力が同じであれば、車重が軽いほうが有利ですので、レースの世界ではSZが圧倒的に強かったのですが、ベルトーネはこのSSをその本来の目的であったレーシンガーやラリーカーのベース車から、グラン・ツーリスモ的な性格とし、そのスチール製故の生産の容易さから量産に移行します。
結果、SZの製造台数が210台であったことに対して、SSは1366台も製造されることになります。そして更に1963年にGiuliettaがGiuliaに移行した際にも生産は続けられ、Giulia SSは1400台と合計で2766台という、この種のスペシャル・モデルとしては異例の大量生産を達成するのです。
アルファ・ロメオの歴史の中ではSZの方が有名ではあるのですが、営業的に成功したのはこのSSの方であったことは言うまでもありません。
以前に聞いた話ですが、アルファ・ロメオのチェントロ・スティーレ(デザイン研究所)のデザイナー達が煮詰まったときに、Museo Alfaromeoの中で訪ねるクルマが、このGiulietta SSとプロテオなのだそうです。デザイナー達はこのクルマからいまだに数多くのインスピレーションを得ているのでしょう。私もこのGiulietta SSはEver Greenなクルマだと思います。
同じクーペボディでも、昨日ご紹介したBreraとの最大の違いは、そのデザインが何の制約も受けずに破綻していないところにあります。マゼラーティクーペをベースにデザインされたBreraを、後から無理矢理アルファ159ベースに変更したためにデザインが破綻してしまったBreraと、最初からGiuliettaをベースにデザインされたこのSSとの違いはそこにあり、結果として現在でも見るヒトを感動させるのではないかと思います。
ジウジアーロのBreraは第2のSSに成り得たデザインであったと思うと残念でなりません。
付属するミニチュアモデルは、1960年のタルガ・フローリオに出場したモデルで、その美しさをうまく表現しています。


またいつの日か、アルファ・ロメオにはこんな"Speciale"を出してもらいたいものです。
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