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走ってナンボ

アルファ・ロメオを始めとする「ちょっと旧いイタ車」を一生懸命維持する中での天国と地獄をご紹介します。

天国の雑貨店

どんな業界や製品であってもそれを初めて世に出した人の苦労は並々ならぬものがあると思います。

このブログをお読みいただいている皆さんは「イタリア自動車雑貨店」というお店をご存知の方が多いのではないかと思います。
実際に店舗を訪れる機会がない方であっても、そのWebサイトに所狭しと掲載されている様々な商品に思わず、「ポチっと」された方も多いのではないかと思うのですが、この「自動車雑貨」という商品ジャンルを初めて世に知らしめたのは、このイタリア自動車雑貨店の社長である太田一義氏ではなかったかと思います。

それまではディーラーの店先の片隅に置かれていたノベルティグッズであったり、みやげ物屋に無造作に並べられているような自動車に関連した雑貨を一同に集めて販売するという業態を考えたときに、それが果たして商売として成立するのか、また商品として継続して仕入れができるのか・・・といった様々な不安の中でイタリア自動車雑貨店は走り始めました。そして、当初の路地裏の駄菓子屋のような店舗から、四谷の表通りに面したひときわ人目を惹く現在の店舗に至るまで、多くのイタリア車を愛する人々にその夢とささやかな癒しを届け続けて来ました。

新しいクルマを買って真っ先に訪れるのはこの雑貨店で、キーホルダーを新しく購入し、レアもののステッカーを似合うかどうか悩みながら購入したり、自分の愛車と同じミニチュアカーを一生懸命探したり・・・と単にクルマをドライブするだけでなく、そのクルマと「一緒に暮らす」ためのモチベーションをこの店からもらいました。

様々な事情から、クルマを手放さざるを得なくなったときにも、いつかまた・・・と手許に残したのは、この店で買ったお気に入りのキーホルダーだった方もいらっしゃるでしょう。

新車に浮気しそうになったときに拗ねてしまった愛車のご機嫌を取るために、フロアマットを新調したり、シフトノブを交換したりした方もいらっしゃるでしょう。

仕事帰りに、また出張で上京した際に、特に何を買うでもなく、この店を覗いた方もいらっしゃるでしょう。

今では当たり前のようにあるイタリア自動車雑貨店がこうして続いて来れたのは、イタリア中を探し回り、時には警察の尋問を受けながら、日本とはかけ離れた商習慣に、ときには怒り、ときには肩をすくめながらも私たちがニヤリとするような掘り出し物を探し続けて来た太田社長と、その商品を慈しむように手入れをして店に並べてきたスタッフの皆さんの努力と苦労があったからだろうと思います。


その太田社長が天国に召されました。


享年60歳とそれはあまりに早すぎることで、店先でタバコをくゆらせ、ニコニコと笑いながら話をしたことを昨日のことのように思い出します。

きっと天国にはイタリア自動車雑貨店のような店がなかったのでしょう。すでに鬼籍に入ったイタリア車を愛する先達の皆さんが、

「太田社長。こっちでも店を開いてよ」

とラブコールを送ってきたに違いありません。

どうやらイタリア自動車雑貨店はこの世だけでなく、天国にも新しく支店ができたようです。

きっと今頃は太田社長は、かつて私にそうしてくれたように、満面の笑みをたたえながら、
「こんな珍しいものを見つけたんだよね~」とちょっと自慢そうに、天国の皆さんに見せびらかしているのでしょう。

イタリア自動車雑貨店と太田社長のことをもっとお知らせしたいと思ったのですが、まだ私がかつて書いた記事以上の文章を書くことができません。
よろしければ今一度お読みいただければと思います。
この記事を書いたときに、太田社長はとても喜んでくださったことを思い出しています。






太田さん。お疲れ様でした。そしてありがとうございました。
でも天国でまた新しいお店を開店するのですから、私が行ったときにもまた面白い掘り出し物を見せてくださいね。


(追記)

本日、10月30日、しめやかに告別式が行われました。焼香台には愛車のポルシェの写真、そして棺には太田社長が愛用していた帽子が添えられ、太田社長と一緒に旅立ちました。
太田社長のご冥福をお祈りいたします。

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テーマ:イタリア車 - ジャンル:車・バイク

オトナの運動会5 ~Revival Motor Sport in Mobara Circuit~

今回イベントにお邪魔するに当たり、クイックトレーディングがリセットしたLANCIA Delta Integrale EvoluzioneⅡに乗っていくことにしました。デモンストレーションを目的にリセットされたDeltaですが、これまではプレスに貸し出されたり、ショールームに展示されたりしていただけで、あまり皆さんに見ていただく機会がありませんでした。そこで、それではもったいない?ので、出来るだけ多くの方に実際に見てもらいたいと考えて、会場で展示スペースを確保していただき、リセットの内容を説明したプレゼンテーションを用意して、自由に見ていただけるようにしました。おかげさまで、お昼休みを利用して多くの皆さんに興味深く見ていただくことができました。

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リセットの出来栄えはやはり百聞は一見にしかずで、これからも機会があれば、こうしたイベントに取材のアシ?として乗っていくことにより、皆さんに実際に見ていただけるようにしたいと考えています。

さて、午後からのスケジュールの始まりは、LOTUS Elanのパレードランからでした。実は今回のイベントではLOTUS Elanの生誕50周年を記念して、LOTUS Elanのオーナーが集結したミーティングが会場内で並行して行われていました。

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今回集まったLOTUS Elanは30台以上で、おそらく日本でこれほど多くのElanが集まるミーティングはないでしょう。しかも集まったElanはSr.1からSr.4までほぼ全てのElanのモデルが揃っていました。
そしてサーキットではその集まったElanだけのパレードランが行われました。

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ピットロードがコースインするElanで渋滞する・・・という光景を始めて見ました(笑)。
そして実際のパレードランでは30台のElanがコースを埋め尽くし、どこを見てもElan...という素晴らしい光景を楽しむことができました。実際にパレードランを行っているElanのオーナーが、この光景を見ることができないのがかえって気の毒に思えるほど壮観でした。

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続いてのレースは「モンツア」クラスと「スパ・フランコルシャン」クラスの混走です。そして昼休み前に特訓?を受けたZAGATORさんにとってはその成果を試す第2ヒートでもあります。

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レースは出走台数が増えたこともあり、かなりの混戦が予想されたのですが、レース開始とともに先頭集団が形成されることにより、暗黙の秩序が生まれ、混乱なく進行して行きました。

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期待のZAGATROさんは最後尾?スタートで、まずは無難にスタートをすることができたようです。

さて、気になる特訓の成果ですが、どうだったでしょうか・・・。午前中の第1ヒートでの走りはまるでスロットレーシングカーのように(笑)、クリッピングポイントを無視した文字通りの「オン・ザ・レール」な走りでした。
ファミリー走行の際に師匠からアドバイスを受けたようなのですが、その師匠の走行ラインは・・・、

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的確にクリッピングポイントをかすめて、第2コーナーを抜けるときにはアクセルを踏んでいけるライン取りであることに対して・・・、

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ZAGATORさんのライン取りは第1コーナーを曲がるのが精一杯で、続く第2コーナーに対する準備が不充分であることが分かります。

それでも、周回を重ねる毎にだんだんとライン取りが鋭くなり、加えて安定してくるようになってきました。

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そしてついには、かなり攻め込んだ走りもできるようになりました。

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最後にはライバル?であったSr.4のSpiderをオーバーテイクしたようです(苦笑)。

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その他のクラスも午後は第2ヒートということもあり、前回のヒートで見つけたライバル?とのバトルが繰り広げられました。それらのシーンをご紹介しましょう。

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今回のイベントは初めてお邪魔したのですが、営利目的でプロによりオーガナイズされたレースとは異なり、運営する側も参加する側も、ヒストリックカーでサーキットを走ることが楽しくてたまらない・・・という気持ちが感じられ、心まで温かくなるイベントでした。
その雰囲気を支えていたのがエントラントのマナーで、スケジュールを守るのはもちろんのことで、コース上での走行マナーも素晴らしいものでした。

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レースでの順位をつけないという主催者の姿勢には賛同できるのですが、今後は個人のスキルアップサポートという意味ではトランスポンダー(無線計測器)を積んでタイム計測を行っても良いかも知れません。事実、一部のエントラントは自前でタイム計測を行っていました。

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また、ヒストリックカーという参加車の性格上、エントラントはどうしても年輩の方が多いのは当然だと思うのですが、見学者も含めて、若い方の参加が少なかったのが少し残念でした。

若者のクルマ離れが進んでいる現在、都市部においては、だんだんとクルマは生活の道具から趣味に変わっていくのかも知れません。一方で、国産ヒストリックカーのオーナーにはそのクルマの現役時代を知らない若いオーナーも多いようです。輸入車のヒストリックカーは敷居が高い・・・という声も聞きますので、「20代以下限定体験同乗走行」なんて企画も面白いかも知れません。

しかし、何よりも「いい歳をした」オトナが真剣に遊んでいる姿を若者に見せることが一番大事なことだと思います。お金さえ出せばなんでも手に入る現在、こうしたアナログな遊びにはお金では得られない楽しみがあることを、オトナがコドモに身をもって示すことがオトナの大切な役割だと思うのです。

昔、あるイベントにお邪魔した際に、運営スタッフの年輩の方が若いスタッフを叱咤しているのを聞いたことがあります。

「こらっ。お前たちっ。仕事じゃないんだからもっと真面目に遊べっ!」

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オトナの運動会4 ~Revival Motor Sport in Mobara Circuit~

続いてコースインしたのは「船橋」クラスで、往年の船橋サーキット(現在は跡地が「ららぽーと」になっています)で活躍したクルマを中心とした走行クラスです。

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出場車両はHONDA S800を中心とした国産車とLOTUS Cortina、日産の初代Silvia、そしてスズキのフロンテ!など多種に亘っています。
そんな出場車の中で異彩を放っていたのがこのHONDA S800をベースにした「コニリオ」でした。

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ベースとなったHONDA S800は発売されるとすぐにサーキットで活躍を始めます。そしてそのボディがLOTUSのように独立したフレームに載っていることに着目した街のチューナー達は単にエンジンをチューンアップするだけで満足せずに、自分達がデザインしたボディを架装するようになります。代表的なものとしては浮谷東次郎がドライブした「カラス」や「マクランサ」、また先日のお台場のイベントのレポートでご紹介した「グリフォン」などがあるのですが、その一台がこの「コニリオ」です。
「コニリオ」は工業デザイナーの濱素紀氏がデザインしたFRPボディを換装したレーシングカーで、RQ(レーシング・クォータリー)によって10台が製作されたと言われています。

当時のデザインや技術は同年代のイタリアのカロッツェリアとは比べるべくもありませんが、その熱意は充分であったことは現代の目でこれらのクルマを見れば良く分かります。
しかし、発展途上にあり未成熟であった日本の自動車文化は、これらのクルマを単なる「改造車」と断じ、また、こうした零細なカロッツェリアの市場参入を禁じるかのような車両保安基準により、日本でカロッツェリアの文化は根付くことはありませんでした。

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適度なロールを伴いながらレースを楽しんでいたのがこのLOTUS Cortinaでした。ご存知のように何の変哲も無いセダンであったFORD CortinaをLOTUSがチューンしたのがこのLOTUS Cortinaで、ちょうどスカイラインのGTRのような存在だったのですが、そのサーキットポテンシャルはツーリングカーとしては抜群で、ALFAROMEOの好敵手としてヨーロッパのサーキットでバトルを繰り広げたクルマです。

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そして驚いたのがこの日産Silviaで、何と!シングルナンバーでした。新車から所有されているのであろうオーナーの手により、サーキットを疾走していたのですが、他人事ながら部品は?と心配になってしまいました。

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小耳に挟んだ情報によると、この日が初お披露目だそうなHONDA S800 Coupeです。オープンモデルが一般的だったS800ですが、当時はオープンモデルに対する拒否反応(使い勝手や世間体)もあり、このCoupeモデルも併売されていました。

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一方で当時のサーキットモデルを彷彿とさせる佇まいだったのがこのS800でした。当時のレーシングパーツを用いて仕上げられた外観は、このクラスの「船橋」という名前の通り、見る側を往年のサーキットに連れ戻してくれました。

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外観を26RにモディファイされたLOTUS Elanです。このモデルも船橋を始めとする当時の国内サーキットで活躍したモデルです。

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別の意味で異彩であったのがこのスズキフロンテでした。その存在もユニークでありながら外観は完全ノーマルで、この状態で残っていることが奇跡のようなクルマです。
サーキット走行はご愛嬌?で、コーナーでは横転しないかと見ている側が冷や冷やするドライビングでした。

今回のイベントで感心したことの一つがタイムスケジュールで、次々と様々なクラスのクルマが入れ替わりでレースを行うのですが、全くスケジュールが狂わずに最後まで進行していたことです。

サーキットイベントでは様々な要因でタイムスケジュールが狂います。
ドライバーがスケジュールどおりにコースインしなかったり、サーキット上でトラブルを起こしてクルマが停止してしまったり、オイルを撒き散らしてしまいコースの掃除に時間が取られたりすることがあります。また、ドライバーがサーキット走行に不慣れであったり、マナーが悪かったりすると、ダブルチェッカーと言って、レースが終わった後もサーキットからピットロードに入らずに走り続けてしまうケースもあります。そして、一番あってはならないのがサーキット上での事故で、クラッシュによりドライバーが怪我をしたりする事態になれば、イベントそのものが中止される可能性もあります。
サーキット全体の使用時間は限られていますので、これらの要因でタイムスケジュールが遅れると、以降の走行時間を短くしたりして対応しなければならず、結果としてエントラントから不満が出るケースもあるのですが、今回のようなイベントでタイムスケジュールが全く狂わないというのは大変珍しいことだと思います。

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続いてコースインしたのは「シルバーストーン」のBクラスで、前回ご紹介したAクラスよりもレーシングチューン度が低いクルマのクラスです。
そして、何故このイベントでタイムスケジュールが狂わずに進行できていたかが分かる出来事がこのクラスで起こりました。

それはリスタート(スタートのやり直し)を2回も行ったことで、本格的なレースでも2回のリスタートは異例なことです。
今回のレースでは、コースインしたクルマは一周サーキットを周回してホームストレートに整列し、競技長の合図でシグナルスタートをするのですが、そのストレートが登り坂になっていることもあり、うまくスタートできないクルマがあったのです。
後続の車両は動かない前車を避けてスタートしたのですが、これはとても危険なことで、F-1レースなどで見たことがある方も多いかと思いますが、走行ラインが大きく変るためにスタートしたクルマも後続車に追突される可能性があるのです。

このときの競技長であったY氏の判断は見事でした。すぐに赤旗を出してレースを中断し、再度全車をスタートラインに停止させ、改めてスタートさせたのです。
一見すると、スタート時に混乱はあったものの無事にスタートできたのですから、そのままレースを続けても良いように思いますが、本来の各車のスピード差とは異なる差でレースが続行されると、無理なオーバーテイクによる事故が発生する可能性が大きくなりますし、スタートに失敗したままレースを始めたドライバーの心理を考えると、平常心でのレースができなくなる恐れもあるのです。

賞典やタイトルがかかったプロのレースであればともかく、アマチュアのレースでは事故を起こさないのが最も優先されるべきことであり、そのことを熟知した競技長のこの判断は素晴らしく、このイベントがエントラントのマナーと運営側のこうした見事な裁量によって成功していることが良く分かる出来事でした。

こうして無事にスタートしたこのシルバーストーンBクラスの参加車両の中から一部をご紹介しましょう。

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終始レースをリードしていたのがこの2台のLOTUS Super7です。LOTUSといえばこのSuper7を連想するほど、恐らく最もポピュラーな車種だと思いますが、公道を走っているSuper7の殆どはLOTUS製ではなく、LOTUSが製造を終了した後にLOTUSより製造権を取得してCATERHAM社により生産されたものであることは、一般の方にはあまり知られていないことではないでしょうか。

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LOTUS Elanに混じって走行していたのが、EliteでElanはこのEliteを発展させたモデルです。

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このクラスでの注目株がJAGUAR E-type FHCでした。とにかくこのE-typeは美しく、その程度も抜群でした。

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サーキットでは安全走行?に徹していましたが、それも重要なことで、サーキット走行においては下手に進路を譲ったりせずに、自分の走行ラインを乱さずに走っていれば、抜きたいクルマはラインを変えて安全に抜いていってくれます。

私自身も経験があるのですが、抜かれて嬉しいクルマがあるもので、追い抜いていく後姿を惚れ惚れと見とれてしまうクルマがあります。このE-typeも実は抜かれてみたいクルマの一台で、いつかそのチャンスがあることを願っています。

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参加していたMG-Bの殆どはバンパーを外して、レースチューンをしていたのですが、却って新鮮だったのがこの北米への輸出対応で装着された衝突安全基準をクリアする5マイルバンパーをつけたクルマでした。
このバンパーはその外観を損ねるために不評で、レトロフィットと称してメッキグリルに戻される例が多いのですが、現在ではかえって見ることが少なくなってしまった「ノーマル」のフロントフェイスです。

こうして午前中のスケジュールは予定通り終了し、予備時間を使ってファミリー走行が実施されました。ファミリー走行とはペースカーを走らせて追い抜きを禁止したサーキット体験走行で、ヘルメットやグローブの着用義務はなく、乗車定員内であればドライバー以外の同乗者も一緒にサーキット走行を楽しめるものです。

そして、このファミリー走行時間を使ってZAGATORさんにサーキット走行のコツを伝授すべく、ベテランドライバーの助手席にZAGATORさんが乗り込み、サーキットを走行することとなりました。
午後の第2ヒートでその成果がどう出るか・・・楽しみに待つことにしましょう(笑)。

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オトナの運動会3 ~Revival Motor Sport in Mobara Circuit~

各クラスの走行時間は10分間程度です。
何だそんなに短いのか・・・と思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、ショートコースの10分間は充分な走行時間で、エアコンのないクルマの窓を閉めて(このコースでのルールは運転席側だけでしたが、一般的には全ての窓を閉めなければなりません)、レーシングスーツにヘルメットを被り、ノンパワーのステアリングと格闘する10分間は、普段あまりハードな運動をする機会のないオジサンに大汗をかかせるには充分な時間です(苦笑)。
特にショートコースではその走行時間の殆どがコーナリングをしていると言っても良い状態ですので、集中力を持続させるだけでも大変です。比べるのは失礼かも知れませんが、ボクシングであれば3分間戦えば休めるのに対して、この10分間は休む暇がないのです。

「モンツァ」クラスに続いてコースインしたのが「スパ・フランコルシャン」クラスで、今回のエントラントは国産車から輸入車まで様々なバリエーションに富んだものでした。

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このクラスには「飛び入り参加」でALFAROMEO Giulia Sprint GTAが参加することとなりました。このGTAは外観は美しいストラダーレの装いが保たれていますが、その中味はAUTODELTAのチューニングパーツが奢られており、オイルパンも軽量化のためにマグネシウム製に交換されているそうです。

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早速パドックにS氏所有のALFAROMEOと並べて写真を撮らせていただいたのですが、その眺めは壮観で、そこだけ当時のイタリアのサーキットにタイムスリップしたかのような眺めでした。

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レースそのものは皆さんのスキルが高く、スピードの速いポルシェ911やロータス23Bは全く危なげなく他車を追い越して行きます。

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注目していたドタ参のALFAROMEO Giulia Sprint GTAですが、最初は「大人しく」速いクルマにはラインを譲りながら走行していたのですが・・・。

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だんだんドライバーのウォーミングアップも出来てきたのか、徐々にペースが上がり始め、明らかに攻めた走りに変って来ました。

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やはりGiulia Sprint GTAはこうじゃなくてはいけません(笑)。

続いてのクラスは「シルバーストーンA」というクラスで、どうやら英国車を中心としたチューン度が高い、もしくはドライバーのスキルが高い上級者(車)のクラスのようです。

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注目すべきはやはりロータス23Bでしょう。

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ロータス23はコーリン・チャップマンによりクラブマンレース用に開発されたレーシングマシンですが、日本での活躍はやはり1963年の第一回日本グランプリでの活躍でしょう。出場した三台のロータス23は表彰台を独占し、ワークス状態で参戦していた日本のメーカーとの差を見せつけられました。ちなみにその時のロータスのドライバーの一人が後のF-1チームマネージャーとなるあのピーター・ウォー氏であったことはあまりに有名なエピソードです。

軽量、安価で戦闘力が高いロータス23は人気があり、ロータスが販売を終了した後もレプリカモデルが販売され続けたのですが、今回参加した2台はオリジナルとのことで、一台にはHOLBAYチューンのエンジンが搭載されていました。

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このクラスのドライバーがサーキット走行に慣れたドライバーであることはすぐに分かりました。
スタート直後の第2コーナーでも全く危なげなくバトルを繰り広げて、見る側を楽しませてくれます。

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そしてここから今回のイベントで白眉となるレースが展開されました。
スタートから先行する2台のロータス23Bを後方から一台のMGBが追い上げ始めたのです。
このMGBの速さはタダモノではなく、排気量にして倍もあるBig Healeyも簡単において行かれてしまいます。

そしてラップしてロータス23の後方に付けるとその間隔をどんどんと詰めて行きます。それは明らかに着いて行くというよりオーバーテイクのチャンスを狙っているドライビングでした。

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そして最後にはホームストレートで多くの観客が見ている前で、2台のロータス23Bを鮮やかに抜き去り、観客の喝采を浴びていました。

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そのままロータス23Bを後方に従えて走行するMGBは決して限界というより、まだ余裕があるように感じられました。

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聞けばドライバーはかつてサニーをチューンし、ツーリングカーレースで活躍したO氏とのことで、このMGBもO氏自らがチューンしたものとのことです。MGBといえば搭載されているエンジンは単なるOHVエンジンで、常識で考えれば、チューブラーフレームにDOHCエンジンをミドに搭載した純粋なレーシングカーであるロータス23Bとは勝負にならないと思うのですが、目の前で繰り広げられたこのデッドヒートはその常識を見事に覆してくれました。もちろんロータス23BのドライバーがO氏に「敬意を表して」譲ったのかも知れませんが、少なくとも私にはどちらも手を抜いていたとは思えませんでした。

こうしたヒストリックカーイベントでのレースの楽しみの一つが、往年のライバル同士のバトルやレースでの名場面を再現できることで、ドライバーにその知識とそれらに対する敬意があれば、単にヒストリックカーがサーキットを走っている姿だけでなく、こうして観客を唸らせるバトルを楽しむことができるのです。

コース上ではまだまだ魅力あるクラスのレースが続いて行きます。

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オトナの運動会2 ~Revival Motor Sport in Mobara Circuit~

茂原ツインサーキットは鈴鹿、富士、茂木といったFIA基準を満たしたF-1レースが行える国際格式のサーキットとは異なるショートサーキットです。
しかし、こうしたショートサーキットを走った経験がある方はお分かりかと思いますが、ショートサーキットでは大排気量車のアドバンテージがなく、あらゆる排気量のクルマが安全な速度でサーキット走行を楽しむことができる魅力があります。

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今回の茂原のコースをご紹介しましょう。茂原は数少ない反時計廻りのサーキットです。フロントストレートは殆ど無いに等しく、しかも上り坂となっています。スタートするとすぐに①、②コーナーという複合コーナーをクリアしなければならないため、そのわずかなストレートでもトップギアでアクセルを全開にすることはできません。
従って、「踏めば速い」大排気量のクルマもスピードを出すことができず、小排気量のクルマに追い回されることになります。また、各コーナーはロングコースの基準からするとその全てが「S字」、「ヘアピン」というレベルのコーナーで、ロングコースばかり走っているドライバーがショートコースだから・・・とナメて走ると、その休む間の無いハードさに自分の体力の無さを思い知ることとなります。

サーキット走行は各クラスに分かれ、午前と午後の2ヒート制で実施されます。
クラスは5つに分かれており、モンツァ、スパ・フランコルシャン、シルバーストーンA、B、そして船橋とネーミングされています。
これも主催者がこのイベントをどのように考えているのかを良く表していると思います。これらのクラスは車両の製造年や排気量といった一般的な分類ではなく、エントラントが自らの愛車をどんな風に走らせたいか・・・という「思い」での分類なのです。
この主催者の姿勢はレース運営にも顕れており、予選などはなく、スターティンググリッドはタイム順ではなく任意で選ぶことができます。ピットロードから先頭でコースインすればフロントローからスタートすることができ、最後尾からスタートしたいと思えば、最後にコースインすれば良いのです。主催者が計時を行わないのも、レースの結果に順位をつけないのも、このイベントが勝敗を争うためのものではないことを表しています。

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参加者も互いのクルマとドライバーのテクニックを見定めながらバトルを楽しんでおり、そこには勝ち負けといった無粋な価値基準はなく、お互いに「楽しかったね・・・」と言い合える結果こそがこのレースの全てであると言えるのです。
しかし、誤解をされないように書いておきたいのは、エントラントの皆さんは決してそうしたタイムを出す走り方ができなかったり、否定されているワケではなく、出走した方の殆どがベテランドライバーで、かつては、また現在もレースシーンで活躍されていた方々であることは、そのドライビングテクニックを見ると明らかです。

サーキット走行が単なる速度競技で、「速いのが偉い」と考える方にはなかなか理解できないかも知れませんが、全てのクラスにおいて、エントラントの皆さんがあのクルマとバトルしてみたいから・・・と明らかに速度調整をして相手を「待ち構えている」様子を見て取ることができました。それは敵機との空中戦ではなく、編隊アクロバット飛行のような趣であったと言えばお分かりいただけるのではないかと思います。

さて、最初のクラスは「モンツァ」というクラスでイタリア車を中心としたエントリーのクラスでした。
このクラスには本格的なサーキット走行が初めて・・・というZAGATORさんもエントリーしており、しかもそのクルマはALFAROMEO Giulia 1300GTJという彼が日常で乗るクルマとは全く異なるヒストリックアルファでした。

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正直、それを最初に聞いたときには驚くと共に、クルマを壊さないか・・・と心配したのですが、何とか他の車両の邪魔をせずに、無事に走りきることができました(苦笑)。しかも、どうやら楽しかったことはゴール後の彼の表情を見れば分かりましたので、これからはサーキット走行にハマるのかも知れません(笑)。

気になった他の出走車もご紹介しましょう。

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これもZAGATORさんのドライブしたGiulia 1300GTJと同じく、この大会の監事であるS氏が所有するALFAROMEO Giulia TI Superです。TI SuperはGiulia Sprint GTAが登場するまでALFAROMEOのCompetitionモデルとしてツーリングカーレースで活躍したモデルで、ノーマルのGiulia Superのエンジンをチューンし、ボディ各部を軽量化していました。Giulia Sprint GTAはあまりに有名ですが、現在ではそれよりもはるかに希少なモデルだと言えます。

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同じくS氏所有のALFAROMEO Alfasud Sprintです。重心の低い水平対抗4気筒エンジンを搭載し、軽量なボディをFF方式で走らせるSudはアルファ・ロメオの歴代のモデルの中でも屈指のハンドリングマシーンと言われ、この茂原のようなショートサーキットでは生き生きと走らせることができるモデルです。

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しかし、製造品質の悪さとボディの錆が原因で、サーキット走行以前の問題を抱える個体が多い中、このS氏のSudは新車以上のコンディションで、何の問題もなくサーキットを駆け回っていました。正直、こんなに生き生きと走るSudは初めて見ました(苦笑)。

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AUSTIN Healey Spriteをベースにレンハムというコーチビルダーがグラスファイバーのボディを架装し、ル・マン24時間レースに出場したル・マンクーペと呼ばれているものです。

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ベースとなったHealey Spriteは「カニ目」と呼ばれ(英国ではFrog Eye)可愛い印象であることに対して、このレンハムが製作したボディはその印象が全く変り、当時の英国の精悍なコンペティションマシンに変貌しています。

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ショートサーキットが最も似合うのがこのABARTHではないかと思います。FIAT600をベースとした850TCですが、ABARTHの特徴であるリアのエンジンフードを開けた姿は、当時のサーキットでMiniのドライバーが悔しい想いで見送った後姿ではないでしょうか。

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このALFAROMEO Spider Sr.4は女性ドライバーにより出走していました。Sr.4のSpiderはサーキットが似合わないと思っていたのですが、このボディカラーだと意外?にサーキットにマッチしていました。

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そしてZAGATORさんのGiuliaと殆どヤル気のないバトルを繰り広げていた(爆)のがこのSpiderだったのですが、どうやらSpiderはそんな気はさらさらなく、一方のGiuliaはついて行くのが精一杯だったというのが真相なようです(笑)。

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街中では随分と見かけなくなったMiniですが、サーキットでは健在です。コンペティションチューンされたMini Cooperはショートサーキットでは侮れない存在で、このレースでも一番勇ましくコーナーを攻めていました。

心配だったZAGATORさんのレースデビューも無事に終わり、私も気持ちの余裕が出てきました(苦笑)。
次回は「スパ・フランコルシャン」クラスから続けてレースの模様をお届けしたいと思います。

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オトナの運動会1 ~Revival Motor Sport in Mobara Circuit~

オトナの遊びは様々なものがあると思いますが、仕事とは全く関係を持たない完全に私的なものは意外に少ないのではないでしょうか。
オトナになって新しい遊びを覚える際には、会社の先輩や上司であったり、取引先の方から誘われて始めるものが多く、結果としてそうして覚えた遊びは半分は仕事気分となってしまうものなのでしょう。
しかし、接待ゴルフや接待フィッシングは聞いたことがありますが、「接待レース」は寡聞にして聞きませんので、この遊びは日常の仕事を離れた極めて私的なものと言えるでしょう。

RMSパンフ

縁あって仲間であるZAGATORさんからお誘いいただいたRevival Motor Sport Clubが主催するサーキットイベントは昨年に続いて今回は第二回とのことで、最初は「面白いから見に来てよ~」だったのですが、いつの間にか運営側のお手伝いをすることとなってしまいました(苦笑)。しかし、お手伝いと言っても特にナニをするのではなく、当日は会場で写真を撮影し、こうして記事を書くというのがオシゴトのようで(笑)、結局はいつもと同じ野次馬見物となってしまいました。

事務局の集合時間は習志野PAに朝の5時!とのことで、日の出前のPAに事務局スタッフが集まって来ます。それにしても恐らく仕事でも朝5時の集合というのはそうは有り得ないだろうと思うのですが、これから遊ぶぞっ!というオトナのパワーは凄まじいものがあります。しかも事務局と言えども決してワンボックスに相乗り・・・などという無粋なものではなく、来るわ来るわ・・・ALFAROMEO Giulia 1300GTJ、Giulia TI Super、Sud Sprint、Spiderに加えてJaguar E-typeやBig Healey、果てはHonda S800ベースのコニリオまでが自走で会場となる茂原ツインサーキットを目指すのです。

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どうやら事務局の皆さんと言っても単に運営だけを行う気はさらさらないようで、自分自身もサーキットで楽しむ気満々のようです。
サーキットへ向かうこの事務局の隊列だけでも充分なイベント?で、すでにお腹一杯です(苦笑)。

こうしたイベントには数多くお邪魔しましたが、プロによってオーガナイズされた「出来上がった」イベントはそれなりに楽しめはしますが、一方で今回のように自分達がまず楽しむことを目的としたものは、それを感じるだけで楽しくなってきます。

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そしてそれを裏付けるように、集まってくるエントラントの皆さんの雰囲気が実に良いのです。サーキットのパドックは真剣なレースであればある程、ピリピリした雰囲気を感じるものなのですが、今回のパドックはまるでピクニックに来た家族連れのように、さあ準備して遊ぶぞ・・・という雰囲気に満ちていました。それはレースカーを載せて来るトランスポーターからも見て取れ、メジャーレースで見る本格的なものから・・・。

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アイディアに溢れたものまで・・・、

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実に様々なトランスポーターを見ることができます。

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もちろん参加車の圧倒的な多数派は「自走」で、ナンバーを取得してサーキットまでの往復も含めて楽しむことがやはりサンデーレーサーの原点だと思います。

そして、サンデーレーサーはオトーサンだけが楽しんではいけないのも掟で(笑)、家族総出で参加されていたのが実に印象的でした。家族とは人間だけではないことに気づかせてくれたのもこのイベントで、家族の一員である「犬」もちゃんと参加していました。

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しかも、このワンちゃんたちはヘタな人間よりもはるかに躾が行き届いており、サーキットのベテランとしての風格すら感じられました(笑)。

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そうこうしているうちにパドックは参加車で埋まって行きます。
予め指定した場所にクルマを停めてもらうのも、見物者にそのパドック表を配ることにより、クルマを鑑賞しやすくする配慮で、主催者が単に自分達が楽しむだけでなく、少しでも見物する方にも楽しんでもらえるようにとの思いが感じられます。

クルマから荷物を降ろし、テーピングを行いサーキット走行の準備を始める方やエンジンの調子をチェックする方など、ドライバーズミーティング前のパドックは少しづつ緊張感が増して行きます。

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ドライバーズ・ミーティングとはサーキットを走行するドライバーが必ず出席しなければならないミーティングで、コース走行上の注意事項やサーキット各々で定められたローカルルールやイベント毎のルールなどが説明されます。

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そして、その無味乾燥な説明事項を如何に聞きやすく伝えるかも運営側の力量で、今回の競技長も軽妙な口調で注意点をうまく伝えていました。そして後にレースでのこの競技長の判断に舌を巻くことになります。

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ドライバーズ・ミーティングも終了し、いよいよレースの始まりです。

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筆記具デザインの妙

男性の中で文房具が嫌い・・・という方はいないでしょう。
それは女性の文房具好きとは一線を画しており、キャラクターやカラーといった文房具本来の機能的なものとは違った次元での嗜好ではなく、機能性であったりデザインであったりとどちらかと言うと文房具本来の持つ道具としての魅力によるものではないかと思います。
その中でも万年筆やボールペンといった筆記具は直接手に触れるものでもあり、現在はキーボードにとって替わられつつあるとは言え、私の学生時代には手に馴染むものを捜し求めたものでした。
中学の入学祝に初めて買ってもらったパーカー社のボールペンと万年筆はその重量感だけでなく、学生服のポケットに挿したときに、その特徴のある「矢」の形をしたクリップが見えて、少し大人になったような気がしたものでした。
その後にモンブランやクロス、カランダッシュといった筆記具の一流品に触れると、その適度な重さと握り具合に感動したのを覚えているのですが、いつしか筆記具は私の中で「書ければいいや・・・」というレベルに成り下がってしまいました。それは学生時代のように長時間筆記具を持つことがなくなったことと、文章を書くという行為がワープロやPC上での作業になってしまったためだろうと思います。

人間の脳にはスイッチがあり、気に入った筆記具を使うと文章がスラスラ出てくるものなのですが、それは手からのフィードバックが脳活動に影響を与えているからで、同様にキーボードを打つという行為も、その指先からのフィードバックが脳に影響を与えているのだと思います。そういった意味ではキーボードも筆記具と同じと言え、長時間キーボードを使うWebプログラマーのような職業の方はキーボードのキーの反発力やストロークの長さに拘りがあり、PC本体を替えても慣れ親しんだキーボードを使い続けることは理解できます。

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最初にエンリコ・フミアさんから「自分がデザインしたんだ」とこのボールペンを頂いたときに、私が中学生の時に感じていた筆記具の拘りが一気に戻って来ました。
そこには「書ければいいや」というコンビニで売っているような筆記具とは一線を画す、人間工学に基づいたシェイプとフミアさんが拘りぬいたデザインの妙が具現化されていました。
私は試し書きをしてみて一気にこのペンを気に入ってしまいました。女性には少し持ち辛い太さなのですが、手の大きな男性にはしっかりと握ることができる絶妙な太さです。
皆さんも経験があると思うのですが、ボールペンのノックは決してボールペンの軸先を出し入れするためだけの機能ではありません。カチャカチャとノックすることにより脳が活性化され、様々なアイディアが浮かんでくるのですが、そのノックの反発力や音が絶妙で、ちょうどゲトラグ製のギアシフトのように小気味良い操作感を与えてくれるのです。
こうした筆記具はあくまで実用品で、筆記具である以上、どんなに素晴らしいデザインであっても書き難ければ筆記具としては落第なのですが、加えてこうした操作感まで配慮が行き届いているものは数少ないと思います。

このMytoというペンはイタリアのStilolinea社から発売されているもので、そのデザインをフミアさんが手がけたものです。特徴的なのがノックするための可動部で、当初はその複雑な形状によるコスト高から製品化が難しいと言われたそうなのですが、フミアさんは譲らず結局当初のデザインそのままで製品化に漕ぎ着けることができたそうです。

最初のデザインは2004年で発表が2006年とのことですので、開発期間が2年!とこのペンが難産であったことが伺えます。しかし、このMytoは発表と同時にそのユニークなデザインが評判となり、結果としてStilolinea社の代表的なブランドとなりました。

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そして2007年にはMytoの高級版であるGlamourシリーズが発表され現在に至っているのですが、このGlamourシリーズはその名前の通り、表面を特殊処理によりゴージャスに仕立てたもので、通常のMytoシリーズとは異なり、日常使いの筆記具というより書斎のデスクに置いて眺めているだけでも満足できる出来栄えとなっています。

このMytoペンを一目見て気に入っていただけたのがCOLLEZIONEの成瀬社長で、社名のロゴをプリントしてノベルティとして製作することとなりました。

しかし、残念ながらこのStilolinea社のペンは日本では殆ど取り扱いがなく、フミアさんにお願いして仲介していただくことにしました。当初は先方の担当者を紹介して・・・と依頼したのですが、フミアさんは「友人の依頼なんだから自分がアレンジする」とそのデザインレイアウトから発注、納品まで全てを引き受けてくれたのです。

早速、成瀬社長と打ち合わせをしたのですが、そこで困ったのがあまりのラインアップの多さでした。カタログを見ると実に多種多様な色の組み合わせがあり、Stilolinea社のこのMytoシリーズに対する拘りが良く分かります。恐らく世界中を探しても特定のペンでこれほどまでのラインアップを擁しているペンはないでしょう。一体どんな在庫管理を行っているのかと思いきや、基本的には全て受注生産とのことで、日本の商売とは大きく異なっています。日本でペンを注文して2週間待って・・・と言われたら注文そのものを失うと思うのですが、この辺りもStilolinea社のペンが日本で一般的ではない理由なのかも知れません(苦笑)。
今回の注文はさらに社名をプリントするという追加加工を必要としましたので納期に関しては約1ヶ月かかるとのことでした。しかもイタリアは夏休みとなってしまい、結果として延べで2ヶ月の期間を要すこととなってしまいました。

成瀬社長も私自身も、ロゴなどの印刷に適していると書かれている通常のMytoのラインアップではなく、より高級なGlamourラインが気に入っていたのですが、このGlamourラインはその特殊な表面加工のために、ロゴの印刷は無理と言われてしまいました。しかし、あきらめきれなかった私はフミアさんにお願いして、Stilolinea社からペンのみを仕入れ、それを特殊印刷できる外部業者に印刷のみ発注してもらうこととしました。
さらにCOLLEZIONEのロゴに加えてフミアさんのサインも印刷してもらうこととし、ボールペンとシャープペンシルの2本組の各々の色を指定し、プリントするロゴの色はフミアさんにお任せして出来上がりを待つことにしました。

フミアさん自身も最初はプリントの仕上がりに関して心配していたのですが、出来上がったペンが彼の手許に届いた際に、ちょっと興奮気味にメールが来ました。そのメールには「想像していた以上に素晴らしい出来栄えだよ!」とのことで、フミアさんも自身のデザイン会社のノベルティに、従来のMytoラインのものではなく、これからはこのGlamourラインのものを製作することにしたとのことです(笑)。

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さて、いよいよ納品ですが、これまた来日するフミアさんが手持ちで持ってきていただくこととなり、それでは・・・ということで直接、成瀬社長の許にお連れして納品していただくこととなりました。

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来日の多忙なスケジュールの中、僅かな空き時間でCOLLEZIONEを訪問することとなったのですが、ショールームに入るなり、その在庫車を見て一番興奮していたのがフミアさんで、イタリアに帰って友人に見せる・・・と言って写真を撮りまくっていました(笑)。
素晴らしいコンディションの在庫車の中からちゃんと自分がデザインしたAlfa164とGTVを見つけ、満面の笑みで茶目っ気たっぷりで写真に納まるなど、つかの間ではありましたが楽しい時間を過ごすことができました。

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イタリアのカロッツェリアを取り巻く状況は決して明るいものではありませんし、加えてフミアさんのような個人デザイナーが量産車の自動車デザインに入り込む余地は殆どないと言えるでしょう。
しかし、彼自身はデザインに対する情熱を失ってはおらず、カスタムカーのデザインプランなどを見せてくれましたので、フミアさん自身もその少ない可能性を模索しているようです。
できれば何らかの形で、彼のデザインを世に出すお手伝いができればと思っています。

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