走ってナンボ

アルファ・ロメオを始めとする「ちょっと旧いイタ車」を一生懸命維持する中での天国と地獄をご紹介します。

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筆塗りだけでの模型造り ~その弐~

仮組みによるチェックが終わったら、実際の組み立てを始めます。
まずはコクピットの組み立てです。昔の1/72の飛行機モデルはコクピットなどは「椅子がついていれば良い」という状態で、また実際にキャノピー(風防)をつけてしまえば殆ど見えないので、全然気にならなかったのですが、最近のキットではスゴいことになっています。ちゃんと零戦のコクピットが再現されており、計器板も三種ものデカールを貼り付けてそのメーター類を再現できるようになっています。また零戦が軽量化のためにあちこちに穴を開けていたのもちゃんと再現されています。

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まずは機体内部色を筆で塗り、部分的にフラットブラック、シルバー、レッド、ブルーなどでスイッチ類などを塗ってやります。厳密な考証をしても完成してしまえば殆ど見えませんので、適当に塗ってしまいます(苦笑)。

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さらにエナメルの薄めたフラットブラックを塗ってスミ入れを行い、使い込まれた機体をイメージして、ドライブラシと呼ばれる塗装方法なのですが、筆につけたシルバーを一旦拭き取り、コクピットの床に擦れたように塗ってやれば完成です。

零戦は機首に取り付けられていた7.7mm機銃の後部がコクピットに突き出しているのですが、それもちゃんと別パーツで再現されていますので、フラットブラックで塗っておきます。

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エンジンはちゃんと栄21型複列星型14気筒エンジンが再現されています。出来上がってしまえば殆ど見えませんので、特に追加工作などせずに簡単にバリやパーティングラインを削って、筆塗りでメタリック色を塗って、部分的にシルバーでアクセントをつけて終了です。

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胴体はコクピットを組み込んで左右のパーツを接着するという極一般的な構成となっています。パーツの合わせは良好ですので、特に加工をせずに組み合わせることができます。胴体の接着は、まず接着剤を塗らずに輪ゴムで部品同士を合わせます。そして流し込みタイプの接着剤(サラサラのもの)をパーツの合わせ目に付属の筆で数箇所に置いてやると毛細管現象でパーツの隙間に接着剤が行き渡ります。
充分に乾燥したらパーツの合わせ目を600番~800番のペーパーで磨いて継ぎ目を消します。1/72スケールと小さい飛行機ですので、削りすぎてしまうとそのダメージが大きいので、最初は多少作業性が悪くとも細か目のペーパーの方が安全だと思います。クルマや現用機と違って第二次大戦の飛行機ですので、表面はそれほど神経質にならなくても良いと思いますので、特に表面仕上げのための1200番以上の再ペーパーがけは必要ないと思います。

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同様に主翼も貼り合わせます。

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そして胴体と主翼を合体させるのですが、ここは少し合わせの悪い部分です。最終的にはパテなどで補修しなければならないと思いますが、それでも最小限にしたいのでできる限り接着段階で密着させたいところです。
写真ではQuick Gripというクランプを使っていますが、輪ゴムや大きめの洗濯バサミで充分ですので接着したら部品が浮いてしまわないように固定しておきます。

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こうして接着してもやはり主翼と胴体との合わせ目に気になる箇所がありました。このレベルであれば、気にならない方には補修する必要はないでしょう。

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しかし、私の場合はパテで埋めて補修することにしました。また段差ができている左翼の付け根部分をペーパーで削ってスムーズなラインとなるように整えます。

こうした作業をしているとスジ彫りが消えてしまうのですが、消えてしまったスジ彫りは最後に彫り直しておきます。スジ彫りの工具には最近様々な工具が販売されていますが、今回は一般的なアクリルカッターを使います。
通常のカッターナイフと異なり、一定の角度で手前に引くとプラスチックに線を彫ることができます。一度に深く彫ろうとせずに少しずつ他の線とのバランスを見ながら彫り直すと修復することができます。このスジ彫りの補修についてはいずれ詳しくご説明したいと思っています。
後、一点間違いの説明ですが、仮組みの段階で尾翼を上下逆に組んでしまいましたが、本組み立ての際にはちゃんと正しく接着してありますので、もし気が付かれた方がいらっしゃれば「突っ込み」はご容赦ください(苦笑)。

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まぁスケールも1/72ですので、あまり神経質にならずにある程度で妥協をして、作業を先に進めましょう。
まずは主脚収納部を機体内部色で塗っておきます。機体はジュラルミン製でその腐食防止のため、各国で異なる処理がされていたのですが、日本の場合は青竹色と呼ばれる色で塗られていましたので、まずはその色で塗装します。塗料が乾燥したらこれからの機体の塗装に備えてこの部分をマスキングしておきます。マスキングにはマスキングゾルを使います。

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このマスキングゾルは昔から販売されているのですが、所謂、液体のマスキングテープで、塗って乾燥するとフィルム状となり、水溶性なので剥がすときに塗料を侵さないものです。乾燥したらはみ出した部分をあらかじめデザインナイフで切って取り除いておきます。
ちなみにマスキングゾルにはこうして後からカットできるものと、単にマスキングするだけでカットできないゴム系のマスキングゾルneoの両方がありますので購入する際には注意が必要です。

いよいよ機体の塗装ですが、まずは明るい下面色から塗ります。使用する塗料はMr.カラーの35番、明灰白色1と呼ばれるものです。
実は日本の大戦機の塗色については諸説あって、近年では様々な考証の結果から、三菱航空機(零戦など)で製造された機体と中島飛行機(隼など)では色が違うとか、初戦時の海軍機の機体塗装は明るいグレーではなく、少し黄味がかった飴色だったとか、過去の通説とは異なる事実が分かって来ました。しかし、私自身はあまり厳密に考えてはおらず、前回のストラトスの記事にも書きましたが、遠くから見る大きな物体とそれをスケールダウンして近くで見るのとでは、人間の目が感じる色彩は異なった印象を与えるのではないかと思っています。

例えば、高速道路を走っていて遠くから見る山の緑が、近づくにつれ段々と濃く見えた経験がある方は多いのではないかと思いますが、これが光の反射スペクトルによる影響で、距離があるほど可視光の屈折が大きくなり色が異なって見えるのです。また分光特性によって人間は色を識別しますので、全ての波長の光が乱反射する白と、光が反射しない黒との間にある様々な色は、その色がどう見えるかは単に距離だけでなく、同じ条件で見ていても個々人によっても異なるものです。

つまり、スケールの小さいモデルほど遠くから見ているとも言えるため、実際の色よりも明るめの色を塗ったほうが、人間の見え方に近いと言えるのではないかと思います。例えば同じ車種のカーモデルでも1/12と1/43では、1/43スケールの方に明るめの色を塗ったほうが人間の目の見え方に近いということになります。

また、塗装してすぐの色と紫外線で劣化した色は異なりますし、当時の塗料は現在のものと異なり劣化が早かったため、自分自身のイメージに従えば、正解、不正解はないのではと思います。何せ、私自身は一度も当時の実際の零戦を見たことがないのですから・・・(笑)

缶スプレーやエアブラシによる今までの塗装法とは異なり、筆で塗る場合はどうしても筆ムラが発生します。それが味と言えばそうなのですが、なるべく均等に塗るために塗料を薄めて、一方向に塗ります。そして乾燥したら今度は90度向きを変えて同じ方向に塗り重ねていきます。つまり、縦、横と薄く塗り重ねることにより筆ムラを消してやることができるのです。

最初の1回目の塗装です。まだ色が充分載っていないので下地が見えます。

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縦、横の塗装を2回繰り返した状態です。筆塗りでの塗装はどうしても塗膜が厚くなってしまいますので、表面を均す意味でも、最後はシンナーを大目に混ぜて薄めた塗料で塗ってやります。

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ここまで筆塗りで塗装をしたのですが、ようやく気が付いたことがあります。それは機体表面のスジ彫りの深さです。キットを塗装前に見たときには日本製の最近のキットに比べて少し無骨かな・・・と思っていたのですが、こうして筆で塗装をした後に見ると、そのスジ堀りの深さも丁度良くなっていたのです。
前回のブログでも書きましたが、現在AIRFIX社と塗料メーカーであるHumbrol社とは同グループ内に位置しています。実際に全ての塗装指示はそのHumbrolの色番号で指定されていますし、AIRFIX社のキットの中にはスターターセットと称して、小分けにしたHumbrol塗料がセットされているものもあります。

ここからは想像なのですが、このキットはそのお値段も含めて、子供がまだエアブラシなどという道具を使わず、筆塗りで仕上げることを前提として設計されているのではないかと思います。しかもHumbrolはエナメル系の塗料で隠ぺい力に優れており筆ムラも出にくいものですので、そのエナメル塗料の一回か二回塗りを前提として、このスジ彫りの深さや太さは決定されたのではないかと思えたのです。

プラモデルという産業がこれからも生き続けて行くためには、子供にこうしたアナログ的な組立作業を実際に体験して、「格好良い~」と満足してもらわなければ次はありません。
私たちが子供の頃にはプラモデルで多くの挫折を味わいましたが、それに替わる趣味がそうそうなかったために、「よし、次はもっと・・・」とチャレンジし続けましたが、現代の子供は他の遊びがいくらでもありますから、仮に親がプラモデルを買い与えても、うまく作れなければそれで終わり・・・ということにもなりかねません。最近の日本のスケールモデルが大人に焦点を絞って開発されていることに対して、AIRFIX社はまだこれからの顧客層である子供達の市場をアキラメてはいないのではないかと思います。

ヨーロッパではベルリンの壁の崩壊に伴い、プラモデルのマーケットが旧東欧圏の国々に拡大していると聞きます。それまで西側の素晴らしいキットに触れたことのなかった人々や、入手できたとしても法外な値段で購入していたモデラーがこれらの旧西側のキットを身近に手に入れることができるようになり、モデラーが続々と増えているようです。実際に旧東欧圏の新興プラモデルメーカーはマニアックなモデルを矢継ぎ早に開発し、西欧圏の大人のモデラーにアピールしていることに対して、イギリスのAIRFIX社が子供を対象にマーケットを掘り起こそうとしているのであれば、それは実に対照的な現象ではないかと思います。

いずれにせよ、このキットは普段エアブラシを使っているモデラーの方も、是非筆塗りで仕上げてそのAIRFIX社の意図の真偽を感じていただければと思います。

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筆塗りだけでの模型造り ~その壱~

ようやく完成したLANCIA Storatos HFですが、その製作記事ではプラモデル工作のための様々な秘密兵器やエアブラシなど、これから模型を造って見ようという方に、少しでも参考になるように工具類を含めてご紹介してきたのですが、これらの工具を一から揃えるとなると大変なのも確かだと思います。しかしこれらの工具がないとプラモデルが造れないかと言うとそんなことは全くなく、作業性が良くなったり失敗が少なくなるという効果はあるものの、私と違って手先の器用な方や老眼(笑)ではない方であれば、身の周りにある道具に加えて最小限のものを買い揃えるだけで充分プラモデルの工作は可能だと思っています。
特にこれから模型を造ろうという方にとっての最大の障害はエアブラシではないかと思います。こと塗装に関しては私も子供の頃は筆塗りで仕上げていましたし、近年はエアブラシによる塗装に関しては賛否両論あり、誰が作っても同じような個性のない作品になってしまうと敢えてエアブラシを使用しないモデラーもいるようです。
今回は敢えてエアブラシを使用せずに筆塗りでプラモデルを作ってみたいと思います。またご紹介してきた数々の秘密兵器?も極力使用せずに、なるべく普通の工具のみを使用してどこまで造れるかやってみたいと思います。

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用意したキットは1/72スケールの零戦(正式には零式艦上戦闘機21型)です。なぜクルマのモデルではないかというと、クルマの場合はボディ表面の塗装を行うには残念ながらスプレー塗装が一番優れているのですが、飛行機のモデルはその表現方法のバリエーションが多いため、筆塗りの塗装で造り手の個性を表現できるのです。

しかし正直言って零戦を造るのは40年ぶりで(苦笑)、しかも今回造るのはイギリスのAIRFIXというメーカーのものです。昔から零戦は日本各社のメーカーが一度はキット化した一般的な機種で、残念ながら零戦に関して言えば日本製ののキットが一番優れているのは当たり前かも知れません。
ところがこのAIRFIX製の零戦を模型屋で見たときにビックリしてしまったのです。それは「新金型」ということでランナーについたままのパーツにスジ掘りのみにスミ入れをしてディスプレイされており、その機体表面の表現センスが素晴らしかったのです。

日本の模型メーカーにとって零戦のモデルは「鉄板」で(笑)、その時代の最新の考証に基づいて、如何にライバルメーカーのものと差別化をするかに苦心して造られているのですが、一方で力が入りすぎているというか今さらというか、頑張りすぎているところがどうも苦手だったのですが、このAIRFIX社のキットは他国の機種ということもあり肩の力が抜けおり、自然体で零戦を表現しているところに好感が持てたのです。

AIRFIX社はプラモデルメーカーの中でも老舗で、私が子供の頃は日本製のキットと比較すると数段優れており、「舶来上等」という価値観を身をもって体感したものでした。現在は世界のトップメーカーである田宮模型も、「いつかAIRFIX社のような模型メーカーになりたい」と目標にしたほどのメーカーでした。
当時のイギリスはAIRFIX、FROG、MATCHBOXと多くのプラモデルメーカーが存在したのですが、時代の流れの中でその殆どは活動を止めてしまいました。これらのメーカーの中でもAIRFIX社は1939年創業という歴史のあるメーカーで戦後にプラスチックモデルに参入し、業績を伸ばしたのですが1981年に倒産し、現在は鉄道模型のメーカーであるHornby社の傘下で再生しています。

以前は過去のモデルを再販していたのですが、最近は積極的に新しいモデルを開発するようになり、この零戦も新たに開発されたもので、新しい金型で新発売されたものです。加えて素晴らしいのがそのボックスアートで、敵機役がP-47という考証ミス(太平洋戦線には配備されていない)を除けば、これだけでも随分と得をしているキットだと思います。

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零戦の中でも21型という初期の機体をモデル化しているのですが、このキットの魅力は一般的に再現されるであろう真珠湾攻撃に参加した空母艦載機のデカールではなく、箱書の説明では201空所属と書いてありますが(苦笑)、実際は筑波航空隊所属機というおそらく日本のメーカーでは見向きもしないであろうマイナー?なカラーリングをチョイスしているのです。
しかもそのデカールはカルトグラフ製で、機体の細部の注意書までデカールで再現されているという贅沢なキットでありながら、昨今の円高のお陰でお値段は630円という信じがたい爆安価格なのです。

これが外国人の企画センスなのか日本製のキットとの差別化なのかは定かではありませんが、最近は別売りのデカールも販売されていますので、どうしてもメジャーな機体を再現したければこうした市販のデカールを使用することもできるでしょう。しかし、ここはAIRFIX社の企画センスに敬意を表して、付属するデカールの仕様で仕上げてみたいと思います。

この筑波航空隊は戦闘機専修搭乗員の教育を推進するため、戦闘機に搭乗するまでの訓練の最終過程を担当した訓練部隊で、主に予科練・操縦訓練生の中から戦闘機操縦の特性がある者を選抜し、実際の戦闘機を用いた最終訓練を行っていました。使用された戦闘機は解隊された大分海軍航空隊から移管し使用していたようですが、最新機種は前線に投入されていたためにこの零戦21型のように、開戦初期に活躍し、前線部隊が新型に機種改編されて余った機体が割り当てられたのであろうと思います。
訓練機であるこの機体には、地上から無電で指示ができるように機体下面に機体番号が書かれており、恐らく地上から機番を見ながら操縦指示をしたのでしょう。
筑波航空隊はこうして前線に戦闘機搭乗員を送り出す役割とともに、後に本土防空という実戦任務も行うようになります。操縦訓練を行っていた教官は同時に防空戦闘にも参加することとなったのですが、最後には特攻作戦に参加し、筑波航空隊所属であった教官の64名のうち55名が特攻により惨禍してしまうという悲惨な末路を迎えることとなります。
ちなみに筑波航空隊の跡は比較的多く残っており、飛行場があった跡地に建てられた県立友部病院の管理棟は司令部をそのまま転用しており、隊門やグラウンドもそのまま友部病院が活用しているそうですので、機会があれば一度訪れてみたいと思います。

模型を単に造るだけでなく、こうした背景を調べて見るのもモチベーション維持には重要で、新たに発見することも多くあります。例えばこの調査からこの零戦21型は前線から戻ってきた使い込まれた機体であったことが分かりましたので、ピカピカの新造機ではなく少しくたびれた感じを再現できたらと思います。

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パーツ割はこんな感じで極平均的なものですが、それでも幾つか拘っている部分はあります。まずはエンジンで零戦に搭載されていた栄12型エンジンが素晴らしいモールドで再現されています。
次にこの零戦21型の特徴である翼端の折り畳み部分が伸ばした状態と折り畳んだ状態の両方を選べるようになっています。これは航空母艦に搭載することを前提とした設計で、格納庫内でのスペース効率を考えてのことなのですが、日本のメーカーであればともかく、よくイギリスのメーカーがこの設計をしたものだと思います。

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チェックしているときに発見したのがプロペラの破損でした。輸入キットには良くあるのですが、輸送中の破損だろうと思われます。昔のAIRFIX社の1/72スケールのキットは箱にすら入っておらず、ビニール袋にパーツが入っているだけでしたので細かなパーツの破損などは当たり前で、子供だった私は交換してくれ…と言えずに泣き寝入りをしたものでした。今回は修復できるのでこのまま造ろうと思います。

外国製キットのもう一つの特徴は離型剤で、日本のモデルに比べると金型からパーツを抜くための油が表面に多く残っています。もちろんメーカーによって多少の差はありますが中性洗剤で念入りに洗っておかないと塗装をするときに塗料をはじいてしまいます。私は中性洗剤で洗いましたが、やはり不充分で塗装前に再度エナメルシンナーを使って脱脂しなければなりませんでした。

飛行機の模型にはポイントが幾つかありますが、そのうちの一番重要なのが機体全体のバランスです。クルマの模型はほぼ実車と同じ部品構成となっています。特にボディはほとんどの模型が一体成型ですので問題はないのですが、飛行機の模型の場合は実際の飛行機の構造とは全く異なっています。模型の胴体は左右に分割されて成型されているのが一般的ですが、実機の場合は胴体は最初から丸い状態で製造されています。また主翼も同様で、胴体を貫いた主桁を基にリブと呼ばれる構造材を組み合わせた上に外板を張っていくのですが、模型の場合は一体でモールドされています。ですので、「仮組み」と呼ばれる主翼、尾翼、胴体といったメインのパーツをまずランナーから切り離し、最初に組み合わせて見るのです。そうすることにより全体のバランスや本来あるはずのない部品同士の隙間などをチェックし、その後の組み立ての際の修正箇所を予めチェックしておくことができます。

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飛行機のモデルで重要なのが左右のシンメトリックで、もしパーツ割で左右の主翼が別々になっていると、その取り付けに際しては左右の角度を揃えることに注意をしなければなりません。そして機種にもよりますが主翼は胴体に水平に取り付けられているのではなく、機種ごとに固有の上反角度を持っており、厳密にではないにせよ、その角度も揃えなければ出来上がりが不細工なものとなってしまうのです。このキットのパーツ割は良く考えて設計されており、この飛行機モデルの佇まいを決める主翼の上反角の角度が狂わないように主翼下部パーツは左右が繋がった状態で成型されています。
また、上下貼り合わせ式の主翼構造だと翼端のエッジが二重になってしまい見た目が悪いのですが、このキットは主翼後端を上翼パーツに一体で成型することによりエッジをシャープにしています。

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しかし胴体と左右主翼上部パーツとの間に隙間ができてしまうようなので、この部分は実際に組み立てる際には修正が必要でしょう。一方で胴体の組み合わせは良好ですので左右の継ぎ目を消すのは造作ないでしょう。総じて言えば組み立てやすいパーツ割でよく考えてあるキットだと思います。

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全体の形状はどこから見ても零戦で(笑)、大きくバランスを崩している部分はなさそうです。昔のキットは国内外産を問わず、飛行機には見えるもののその機種には程遠いものがあったのですが、さすがに現在はそんなことはありません。もちろん細かいことを言えばキリがないのでしょうし、特に飛行機のモデラーはその辺りにウルサイ方が多く、○○型のアンテナは・・・とか、この部分の絞込みはもっと・・・とか実際の考証と個人の主観とが入り混じった批評をする方が多いのですが、私自身は余程のことがない限り、細かいことにはコダワラないようにしています。特に飛行機のモデルに関しては、それに拘って資料と見比べながら修正に修正を重ねて完成に時間がかかって疲れてしまうよりは、そんなことを考えずに組み上げてしまう方が楽しいと思っています。

という考えですので、零戦21型のここは・・・など細かい考証はせずに、まずはこのAIRFIX製のキットの良い部分を強調して組み立ててみることにしましょう。

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ストラトスの苦難6 ~コーディネーションの重要性~

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事故の修復は単にリアカウルとフレームの修正ではありませんでした。潰れてしまったリアマフラーも再製作しなければなりませんでしたが、マフラーはもともとはC.A.Eが製作したもので、当然のことながら今となっては部品として存在してはいませんので、新たにワンオフで製作することとなりました。
そしてこのリアマフラーに関してS氏には拘りがありました。それは現状のマフラーに満足していなかったことによるもので、この際だから・・・とクイック・トレーディングに対して幾つかの希望を挙げることにしました。

それは、
・エキマニを等長とする
・マフラーは左右2本出しにし、先端部の形状については相談して決める
・触媒を追加する
・音は高音寄りにして音量そのものは低めにする

というもので、通常のマフラー製作においてはそれほど難しい要求ではありませんでした。そして実際の製造に当たっては、残念ながらオリジナルのスチール製と同じ材質で製造するには材料手配の問題でコスト高となるために、ステンレス製に変更となってしまいました。また、エンジンスペースの問題から等長のエキマニは不可能であることが分かり、左右の2本出しという希望も叶えられませんでした。音質や音量に関しては主観ですので何とも言えませんが、きちんと触媒が追加され、丁寧な仕事で美しい仕上げのマフラーではあったものの、少し悔いの残る結果となってしまいました。

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一方、下ろしたエンジンですが、事故でのダメージそのものはなかったものの、これも「この際」ということでクラッチの交換を行うこととなりました。

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もちろんこの整備費用は事故とは無関係ですのでS氏の持ち出しでの作業です。しかし、ご存知の通りエンジンの脱着は関係のない部分を傷めてしまうという二次災害を招く恐れがあり、本来の予定に加えて追加の作業が発生する可能性があるのですが、今回の場合はどちらにせよフレームの修正のためにエンジンを下ろさなければならなかったことと、ボディの修復のために充分な時間があったために追加整備を行うこととしました。

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充分な時間があったことは単にメンテナンスの時間が取れただけではありませんでした。私も前に見たときに気になっていたのですが、このC.A.Eストラトスにはアルファ・ロメオ155に搭載されていた2.5LのV6エンジンが搭載されています。ご存知の通りこのV6エンジンは世界一官能的なV6エンジンと呼ばれる名機で、その絶対性能よりもそのフィーリングが素晴らしく、エンジンとしての見た目も美しいのですが、その最大の見せ場とも言えるインテークパイプが錆びておりその美しさを殺いでいたのです。

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今回、メンテナンスの時間が充分に取れたことからクイック・トレーディングでもこのインテークパイプが気になっていたようで、作業の合間に錆を落として磨き上げて再装着しました。単なるメンテナンスやオーナーが拘っている部分だけでなく、こうした部分も綺麗になると気持ちの良いものです。

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綿引自動車で行われていた塗装作業に関しては何も心配するところはありませんでしたが、それと並行して、ボディに貼られていたステッカー類を手配しなければなりませんでした。
S氏によると、もともとはリアオーバーフェンダーのアリタリアロゴ、リアスポイラーの白抜き部分とその中のランチア&アリタリアロゴ、キャビンエンドピラーのベルトーネマークはペイントで再現されていたということですが、今回はカッティングシートで作成することとなりました。

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以前にクイック・トレーディングで出場した耐久レース用の車両にも使用したのですが、カッティングシートも随分と進歩しており、昔に比べるとその発色も耐久性も格段に進歩しています。しかも今までは難しかった曲面への追随性も改良されています。その耐久レースで見たポルシェ993なのですが、ボディ全体はガルフカラーである薄いブルーでボディ中央にはオレンジのストライプが再現され、素晴らしいガルフ・ポルシェの佇まいだったのですが、それがボディ色から全てカッティングシートによるものだと聞いて本当に驚いたものでした。

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今回も耐久性のあるカッティングシートを用いてこのアリタリアステッカーを再現したのですが、問題はAgipのステッカーでした。BILSTEINのものは造作もなく入手できたのですが、Agipのステッカーはなかなか手に入らなかったのです。理由は「Agip」が自社のブランド名を「Eni」に変更しているところで、Agipブランドのステッカーは今後は製作されず、市場からどんどん消えてるところだったのです。
これらはオーナーであるS氏の努力により、インターネットで何とか元のサイズのステッカーを入手し、ステッカーの問題も解決しました。こうした小物と考えられるステッカー類もレプリカモデルにとっては重要で、当時の姿を再現しようとすれば手を抜けない部分です。またS氏が前オーナーから引き継いだときに貼ってあった2004年のRALLY JAPAN公式ステッカーもS氏が事務局から当時の公式ステッカーを入手し、晴れてS氏自身の手で元の位置に貼ることができました。

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こうして何とか元の状態に戻ったのですが、それでもマイナートラブルは発生し、引き続き対策をしなければなりませんでしたが、それが事故の影響で発生したものではありませんでしたので、この記事では割愛させていただきますが、一筋縄ではいかないのは、やはりこのストラトスのようにワンオフに近い形で製造され、さらにあちこちで様々な手が加えられたクルマの宿命なのかも知れません。
しかし、一方で前回のクイック・トレーディングでのメンテナンスに加え、今回の事故修復によりこのクルマに関する個体情報がクイック・トレーディングに集積されることになったので、今後は遠回りをせずにトラブルシューティングができるのではないかと思います。

事故修復であれレストアであれ、それを実現するためにはコーディネーションが不可欠です。メンテナンスガレージ、板金工場、外注パーツ製作業者などに加えて、必要であればオーナー自身での作業も加えて、様々な分野のプロフェッショナルの仕事が結集してこそ最終的に満足度の高い結果が得られるのです。
メンテナンスガレージの役割は当にそのコーディネーションで、限られた予算(それが保険事故であれ)をどのように各工程に配分するのが最も良い結果を生むのか。どこを妥協し、どこを拘るのか。今すぐにやらなければならないことと、後からでもできることの優先順位づけ。納期管理と各工程での作業計画の作成。などをオーナーと一緒に検討し、その作業全般の中心となって実行することではないかと思います。
オーナーの想いと拘りを理解し、現実的な実行プランを提示するコンサルティング能力に優れ、様々なコスト対パフォーマンスのオプションを持っているメンテナンスガレージこそが、私たちのようなクルマを愛するオーナーにとって心強い「主治医」たり得るのではないかと思います。

最後になりましたが、今回の一連の記事を書くに当たりオーナーのS氏には膨大なレポートを作成していただき、それを資料とさせていただきました。またクイック・トレーディングにも作業中の写真提供や実際の技術的な解説など取材にご協力いただきました。この場を借りてお礼を申し上げます。
そしてS氏のストラトスがこれからもオーナーともども元気に公道を闊歩し続けるよう願っています。

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LANCIA Storatos HF 製作記11

ディスプレイベースが出来上がったら引き続き完成に向けて最終仕上げを行います。途中でディスプレイベースを造るのは時間の節約のためだけでなく、モチベーションの維持のためで、ディスプレイベースを造ってしまえばそれに載せるクルマを最後まで仕上げなければならなくなるためです(苦笑)。

何とかラッカークリアーで表面を仕上げたら、続いて「研ぎ出し」と呼ばれる表面を均す作業を行います。この目的は多少は発生するクリアー塗装面の柚子肌と、デカールの段差をなくしてボディ表面を鏡面のように磨き上げるために行います。通常は1500番から2000番のペーパーで表面を均し、その後にコンパウンドで磨くのですが、どうしてもデカールの段差を消したいのであればともかく、個人的にはクリアー塗装がうまく出来たら必要のない工程だと思っています。今回はデカールに少しトラブルが発生したこともあり、この研ぎ出しを行うとデカールの上部のクリアーが削れてしまいデカールが剥き出しになり、さらにブツブツになった部分を剥がしてしまう恐れがありますので、ボディ全部に研ぎ出しを行うのはやめて上面だけにすることにしました。しかし、部分的に気になる箇所を磨いてたら一部クリアーを突き抜けて下地まで削ってしまいました。これもよくある失敗で、だからこそ最後の研ぎ出し工程は避けたいのですが、やってしまったものは仕方ありません。

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またまた相当ヘコむ状況ですが、これもちゃんとリカバリーの方法があります。

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まずは削ってしまった部分より一回りほど大きく穴をあけたマスキングテープを貼りつけて、それ以外の部分をマスキングします。

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削れて下地の出た部分に筆で塗料を塗って乾燥させます。これはその後のスプレー塗装を最小限にするためのもので、塗るというより盛ってやる感じで塗っておきます。その後に下地色をスプレーでもう一度塗装し、さらにクリアー塗装を行います。そして注意して削れてしまった部分をまた削ってしまわないように周辺をペーパーで均して、コンパウンドで磨けば完全ではないにせよ目立たなくすることができます。

ボディサイドの下面は黒のデカールが用意されています。サッコプレートのような外装パーツではありませんが、ボディと同じ艶ではないと思ったのでわざとデカールを貼らずにボディを仕上げ、最後に貼ることにしましたのでここで貼ってしまいます。多少デカールが切れたりしても色はブラックですので、簡単にエナメルのセミグロスブラックでレタッチすれば見栄え良く仕上がります。

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さらにウインドウフレームをフラットブラックで塗装するのですが、ここも何通りか方法があります。マスキングをしてスプレーで塗装する方もいれば、以前にご紹介したメタルックのフラットブラックを貼りこむ方もいますが、私の場合は筆で塗ってしまいます。ベースがラッカー系ですのでエナメル塗料を使えば失敗しても下地を痛めずに拭き取ることができ、何度でもやり直すことができます。ハイテクマスキングテープでマスクして筆塗りで塗った後に、どうしても難しい曲線部分を極細の面相筆でレタッチしたり、はみ出た部分を爪楊枝で削ったりしてラインを整えます。この爪楊枝での修正は意外に簡単で、ラッカークリアーで表面を仕上げてありますので、エナメル塗料は比較的簡単に爪楊枝で擦ると取り除いてやることができます。

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これはディテールアップですがワイパーブレードはキットのパーツはプラスチックで成型されています。このキットのモールドはシャープに出来てはいるのですが、それでもこのまま使うとなると実感に乏しいので、ワイパーアームはキットのプラスチックのものを使い、ブレードの部分のみを市販のエッチングパーツに置き換えることにしました。

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テールランプのレンズは裏側をシルバーで塗装して、表面を着色クリアー塗料で塗って仕上げると見栄えが良くなります。

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このキットは親切なことにサイドミラーのミラー面が別パーツとなっています。もちろん普通のプラパーツなのですが、一方で別パーツになっていると鏡の再現がしやすくなります。メーカーもちゃんと分かっていて別パーツにしたとしか思えず、なかなか心憎い配慮です。その心遣い?を無駄にしないようにこのパーツにメタルテープを貼り付けてデザインナイフで余分な部分を切り取ってミラーハウジングに嵌め込むとちゃんとミラーがついているように見えます。

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ボディ各所にあるキャッチピンはエッチングパーツで再現します。あらかじめ開けておいた穴に0.4mmの真鋳線を差し込んで接着し、適当な長さにカットしエッチングでできたキャッチピンを接着します。
小さな部品ですので瞬間接着剤などで接着すると周囲が白濁してしまいます。最近使い始めて具合が良いのが写真の速乾アクリア接着剤で金属にも使えて乾燥後は透明になるために、クリアパーツの接着などにも使えます。この接着剤の良いところは水性であるところで、テールレンズなどで接着面をシルバーで塗装している場合は、通常の接着剤を使うと塗料を溶かしてしまうのですが、この接着剤は水性ですので塗料を侵さないのです。

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ウインドウのクリアパーツは通常プラスチックでできているのですが、小さなパーツであればまだしも、ウインドウなどの大きな部分ではその透明度が重要で、そのまま使うとオモチャっぽくなってしまいます。そこで接着する前に以前の記事でご紹介したセラミックコンパウンドで磨くことによりガラスのような透明感の再現を行います。

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セラミックコンパウンドには専用のクロスが用意されています。これは超極細繊維でできたクロスで磨く際に余計な傷をつけないもので、使ってみたのですがなかなか具合が良かったです。

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このキットの最大の問題はシャーシーとボディの合体で、ボディの下部のテーパー部をムリヤリ広げてシャーシーをはめこむようになっています。しかも前後に取り付け用の雄雌のダボがあるのですが、それをうまくはめ込んでボディをムリヤリ広げてシャーシーをはめ込むのは不可能に近い作業です。どうしてこんな設計をしたのか理解に苦しみますが、私の場合は早々にアキラメて前後のダボを切り飛ばしてしまい、ボディを広げてはめ込むだけにしましたが、それでも折角仕上げたパーツが壊れたりクリアー塗装がヒビ割れないかヒヤヒヤものの工作でした。

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最後にボディ表面のパーツを取り付けて完成ですが、サイドミラー、ルーフスポイラー、アンテナの三点は最後の最後に取り付けます。それは工作のためにボディを触っているときに壊してしまわないためで、その前にモデリングワックスという艶出し剤でボディを磨いておきます。これ以降の作業はボディ表面を指紋で汚さないように木綿の手袋をつけて作業を行います。

小物パーツを取り付けて完成です。やはりボディを取り付ける際に一部クリアー塗装が割れてしまった箇所がありますが目立たないのでアキラメることにしました。これからこのキットを造る方はこの最終のフレームとボディの合体は鬼門ですので、充分に注意されることをオススメします。

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ディスプレイベースに載せてバランスを見て見ましたが車高も問題ないのではと思います。今回はボディを美しく仕上げたかったのでパネルラインのスミ入れは行いませんでしたが、この辺りは好みの問題で、もしスミ入れを行うのであればクリアー塗装前に行っておきます。クリアー塗装後だとスジ掘りが結構埋まってしまいますのでうまくスミが入ってくれません。

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久しぶりの模型製作であったのですが、イロイロな最新兵器?に助けられて何とか仕上げることができました。
次回作は全く趣向を変えてチャレンジしてみたいと思います。
模型に興味のない方にとってはつまらない記事だったかも知れませんが、趣味で造るのであればどんなに時間がかかっても誰からも文句は言われませんので(苦笑)、もしこの記事をご覧になって自分も造ってみようと思っていただけたなら幸いです。

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さて、これを自宅に置いても誰も見ることができませんので、当面はクイック・トレーディングのショールームに展示してあります。機会があれば是非ご覧ください。

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ストラトスの苦難5 ~部品探しの苦悩~

ストラトスの破損したリアカウルは新たに製作することにより修復できることになりましたが、一方でそう簡単には行かないのがテールランプなどのパーツ類でした。当然のことながらこういったパーツをワンオフで製作するなどはナンセンスで、とにかく世界中で部品を探すしかありません。必要だったのは円形のテールランプ、四角のリバースランプ、ナンバー照明灯の三種で、ナンバー照明灯はともかく、最も難航したのは円形のテールレンズでした。

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実はストラトスのテールランプはオリジナルパーツではありません。これはFIAT 850のものを流用し加工をして造られたもので、このランプを入手するにはストラトスの専用部品を探すよりFIAT 850のパーツを探したほうが簡単なのですが、そのFIAT 850用とて早々簡単に手に入る部品ではありませんでした。

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写真では分かりにくいかも知れませんが、ストラトスのテールランプはFIAT 850そのままの流用品ではなく外周部に黒いリング状の枠がついています。最悪このリングは補修して再利用するにしても中心のランプは入手しなければ先に進めません。またC.A.Eストラトスの場合はオリジナルのストラトスと異なり、四角い右側のリバースランプはリアフォグ(赤レンズ)とされており(上の写真を参照してください)、ランプ形状自体もオリジナルとは少し違う物だったのです。
どうしても原形に修復ということであれば、オリジナルのストラトスの部品ではなく、C.A.Eストラトスの部品を探さなければなりません。流石にそうなると入手は難しいだろうということになり、リバースランプは別のものを装着することも視野に入れて部品を探すことになりました。

問題はこの部品のサイズが決まらなければリアカウルを成型できないことで、部品そのものはともかくサイズを決定することが全体の工期に大きな影響を与えていたのです。
これも実際にこうした部品を探した経験がある方はご存知だと思いますが、この種の部品は「ある時はあるが、ない時はない」といった状態で、不思議なことにオークションも含めて市場から全く姿を消している時期もあれば、ざくざく出てくる時もあるのです。旧車を維持している方が部品のコレクターか?と思えるほど様々な部品を手許に持っているのはこのためで、試しにe-bayで調べて見ると現在のところ数点出品されていました(苦笑)。

確かにこの修理をしている時にこの部品探しに関しては私のネットワークも使って海外にも問い合わせてみたのですが、先月まであった・・・とか、また手に入るから気長に待て・・・などという返答が返ってくるばかりでした。
こうなるとクイック・トレーディングだけでなく、S氏も独自で部品を探すことになったのですが、S氏が最初に考えたのはC.A.Eと同様にストラトスのレプリカモデルを製造していたアタカエンジニアリングでした。しかしアタカエンジニアリングはAERと社名を変更し埼玉から石川に移転しており、当時のメカニックの方々も殆ど在籍していないという状態でした。それでもS氏はアタカエンジニアリングを退職し、独立してメンテナンスガレージを営んでいる方を探し当ててコンタクトすることができ、C.A.Eと同様にストラトスのレプリカを製造していたイギリスのホークカーズに部品を発注できるというハナシを聞くことができました。これで問題は解決!と思いきや、ホークカーズからの返答は遅れに遅れ、最終的に送られてきたパーツリストはその殆どが値段がPOAというものだったのです。POAとはPrice on Applicationの略で、所謂受注生産と同義で「注文があれば造って値段を出します」という意味です。すなわち私が問い合わせた海外の部品業者と同様で、要は「何とかするから気長に待て」と同じことだったのです。
これでは問題は何も解決しないと落胆していたところ、S氏のもとに耳寄りな情報が飛び込んできました。それは同じくストラトスレプリカのオーナーが破損したリアカウルを持っているというものだったのです。
そして現物を確認し、中古品ではあるもののようやくテールランプ一式とリバースランプも手に入れることができました。しかもリバースランプはC.A.E製とは異なりオリジナルのストラトスと同タイプのもので、事故前のものと比較しても進歩?と言える部品だったのです。

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一方でクイック・トレーディングではあまりに入手難のこの部品を何とかすべく、懇意にしている日本でも有数のABARTHコレクターである某氏を通じてイタリアからようやく部品を手に入れることに成功していました。しかし、こちらはFIAT 850用で周囲の黒いリングがないタイプのものであったため、こちらを予備部品とすることにし、S氏が入手した中古品を使うという方針で滞っていたカウルの最終成型も再始動となりました。

またリアカウルの成型と並行してフレームの修正は綿引自動車で行うこととなりました。
そして同時にクラッチ交換などの整備も行うこととなり、クイックトレーディングでエンジンを下ろして、車体を綿引自動車に運ぶこととなりました。

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フレームの修正は綿引自動車で行ったのですが、かねてから疑問に思っていたのが旧車の事故修復歴についてです。
中古車で問題となる事故修復歴ですが、こと旧車に限ってはそれが必ずしもマイナス要因とはならないと思うのです。
現在のフレーム修正技術は格段に進歩しており、その測定は最新の設備であればミリ以下の単位で行われ、実際のフレーム修正は通常の修正機であってもミリ単位で行われます。

一方でそれらのクルマが新車で製造されていた時代の製造公差はセンチ単位であったのです。伊藤忠モータースで新車でアルファ・ロメオを販売していた方から以前に伺ったハナシですが、ジュリアが製造されていた当時、アルファ・ロメオはフレームの製造公差は最大で1.5cmであるとメンテナンスマニュアルに書いていたそうです。それはすなわち左右のホイールベースの差にも影響するはずで、まっすぐ走らせるためにはホイールアラインメントで調整を必要としたでしょう。このアライメント調整はメーカーの仕事ではなくディーラーの仕事でした。なぜなら輸送中に狂う可能性もあるために、メーカー出荷時には厳密なアライメント調整は行わず、こうしたデーターをメンテナンスマニュアルで各地のディーラーに提供し、納車前に調整してメカニックが試運転を行った上でオーナーに引き渡すのが通常だったのです。
もちろん当時のボール&ナット式のステアリングでは中立での遊びが大きいために、これらの誤差は吸収されてしまうのでしょうが、それが当時の製造公差のレベルであったことも事実だと思います。
正規のインポーター経由ではなく新車並行で購入された方や中古車を購入された方は、まずはホイールアライメントを測定し、規定値で整備することをオススメします。タイヤの片減りの原因となったり、真っ直ぐ走らないために「事故車では?」とあらぬ疑いを持ってしまうことにも繋がりかねません。

ハナシを元に戻しましょう。そのように製造された旧車を事故で修復する際には現在のフレーム修正機を使って修復するのですから、もしいい加減な修理ではなく、綿引自動車のような整備技術をもった工場で修理されたのであれば、その事故車は新車以上の精度を持つこととなります。
クルマ選びの際に事故修復歴のないクルマ…と言われるのは事実ですが、こと旧車に限っては前述のフレーム修正だけでなく、現代の最新技術で板金や溶接をされた事故修復車は新車以上・・・と言えるかも知れません。もちろんこれはあくまで技術論であり、オリジナルに拘る方や劣悪な修理技術の問題とは別であることは言うまでもありませんが、もし私自身が旧車を購入するとすれば事故歴は問題とせずに、むしろどこで修理したかを問題にするでしょう。そしてその「どこで修理したか」を問題にしなければどれだけ悲惨な目に逢うか・・・というハナシは別の機会にご紹介したいと思います。

綿引自動車で行われたフレームの修正は素晴らしいもので、オリジナルのものよりも優れた精度のフレームが出来上がりました。

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こうしてリアカウルの成型とフレーム修正をしている間に行った作業はエンジンの整備とマフラーの製作でした。

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第三回Quick Touring ~横須賀軍港クルーズ2~

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一番最初に見えたのが海上自衛隊の潜水艦です。艦名は機密でどこにも書かれていませんが、形状から「おやしお」型の潜水艦でしょう。意外に知られていないのは日本の潜水艦の性能で、その動力であるディーゼル機関の潜水艦の中では世界一の性能を有しています。
潜水艦の最大の武器は「見えない」ことで、潜水して相手から隠れて静かに敵を偵察したり攻撃したりするのが任務です。潜水艦は水中では電気モーターを使ってスクリューを廻して推進します。そのためには酸素を必要とせずに発電できる原子力潜水艦が一番で、原子力潜水艦はさらに発電した電力を使って海水を電気分解し、艦内へ酸素を供給することができますので、乗員の休養や食料補給を別にすればずっと潜ったままでいることができるのです。しかし日本では原子力を発電所以外には使えませんので、海上自衛隊の装備する潜水艦は定期的に浮上し、そのディーゼルエンジンを使って発電して、それをバッテリーに蓄電してまた潜水しなければなりません。
潜水艦にとって浮上するということは敵に身を晒すことになりますので、作戦中は一番避けたい行為なのですが、原子力潜水艦と異なり、燃料補給のためにも定期的に帰航しなければなりません。
しかし、原子力潜水艦を保有している国は少なく、海上自衛隊が装備するディーゼル潜水艦はその性能において他国の同様の潜水艦と比べて抜きん出ているそうです。船橋部分に四角いタイルのようなものが貼られているのが写真でもお分かりいただけるかと思いますが、これは吸音タイルで水中でソナーという音波探知機に反応しないようにするためのものです。もちろん潜水艦の潜行可能深度などの性能は最大機密であるので公表はされていません。

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横須賀には第2潜水隊群が配置されており、その司令艦(「旗艦」と呼ばれます)がこの潜水艦救難母艦「ちよだ」です。潜水艦救難母艦の役割は、文字通り潜水艦が何らかの事情で浮上できなくなった際に救難活動を行うのが任務です。中央に赤い枠で搭載されているのがその深海救難艇(DSRV)で、「ちよだ」はこの救難任務だけでなく、潜水艦への洋上での補給機能を持っていることも特徴です。

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掃海艦「はちじょう」です。地面に埋められて触れると爆発するのが地雷であるのに対して、海中や海上に仕掛けられるのが機雷です。機雷には大別すると二種類あり、触発機雷と感応機雷に分けられます。触発機雷は艦船が接触することにより爆発するのですが、感応機雷は艦船の持つ磁気に感応したり、スクリュー音に感応したり、艦船が航行することにより発生する水圧に感応したりと様々な機雷があるのですが、その機雷を除去するのがこの掃海艦の任務です。
特にこの「はちじょう」が担当するのが潜水艦向けに仕掛けられた水中機雷の除去で、磁気に反応する機雷対策として船体は木でできています。木造の掃海艦としては世界最大級で、もはや職人がおらず同型艦を新造することはできないとのことで、今後はFRP船に替わっていくそうです。

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こちらも同じく掃海が目的の船ですが、先に紹介した「はちじょうが」掃海「艦」と呼ばれているのに対して、小型であるため、掃海「艇」と呼ばれています。手前が「のとじま」、奥が「つのしま」です。
広い海に機雷を仕掛けてもそうそう効果は上がらないのでは・・・と思われるかも知れませんが、海峡や港の入り口など艦船が多く通る場所に機雷を仕掛けると、それで被害がでなくとも、船舶は危険なために通れなくなってしまいます。「海峡封鎖」と言われているのがそれで、所謂、海のバリケードがこの機雷なのです。
これまたあまり知られていませんが、湾岸戦争に派遣された自衛隊の中で多国籍軍に一番評価されたのがその掃海部隊の機雷処理能力で、多国籍軍のどの国よりも優秀であったと言われています。

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このちょっと変わった形の船は海洋観測艦「にちなん」です。本来は潜水艦の航行のための海底地図を作成するのが目的の艦艇で、様々な計測機器を搭載しているだけでなく、その測定作業のために低速域で安定した航行ができるのが特徴です。
今回の震災でも地震後の海底の形状を観測するために出動しています。

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護衛艦「やまゆき」です。オール・ガスタービン推進の護衛艦で、大型ヘリコプター1機を搭載し、イージス艦には敵わないものの、SSM・短SAMと呼ばれるミサイルに加えて76ミリ単装速射砲などを装備し、バランスのとれた兵装を備えているのが特徴です。
この「はつゆき型」と呼ばれる護衛艦は、もともとは上部構造物には軽合金(アルミ合金)を使用し、全体の軽量化を図っていたのですが、フォークランド紛争でイギリスの軽合金艦がアルゼンチン空軍のエクゾセ対艦ミサイルの攻撃を受け、そのあまりの被害の大きさからこの8番艦の「やまゆき」以降は鋼鉄製となりました。
ちなみに奥に少し見える護衛艦は同型の「さわゆき」ですが、こちらはアルミ合金製となっています。

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補給艦「ときわ」です。護衛艦隊に随伴し、各艦艇に補給を行うのが任務です。補給といってもそこはちゃんと自衛艦で、作戦行動中にちんたら補給に時間をかけるわけには行きませんので、その装備は短時間に各種の補給ができるように補給ステーションは各舷3つの計6つに区画されており、前後のポストで燃料、中央のポストで弾薬、糧食などのドライカーゴを一度に補給することができるようになっています。つまり一度に2隻の護衛艦を両舷に併走させ、同時に補給が可能なのです。互いに接触事故を起こさずにそれを行うのは驚異的な操船テクニックを要求されるでしょう。また、大型のヘリコプターの発着艦が可能なように後部には大型のヘリコプター用の甲板が装備されています。

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後ろ姿ですが、手前が護衛艦「むらさめ」でその隣が「はるさめ」です。
これもオール・ガスタービン推進の護衛艦で、基本的な兵装76ミリ単装速射砲に加えて短SAM(対空ミサイル)、ASROC(対潜水艦ミサイル)や魚雷などを装備していますが、SSM(対艦ミサイル)は米国製のハープーンに替えて国産の90式艦対艦誘導弾を装備しています。後部に大きく開いているのはヘリコプター用の格納庫で、哨戒用のヘリコプターを搭載することができます。

米国海軍の第七艦隊はその航空母艦を中心として攻撃型の艦隊編成を取っていることに対して、海上自衛隊は日本沿岸の防衛と、シーレーンの確保に重点をおいた装備編成を備えていることが特徴です。こうして横須賀港で日米の装備艦艇を見ることにより、日米安保条約により分業体制で米国海軍のその攻撃行動力の確保を海上自衛隊が担っているとも言え、艦隊編成としては日米両国の装備を合わせて初めて、バランスが取れた装備編成になっていることが良く分かりました。
そう言った軍事的な観点に立った意味では、少なくとも海上自衛隊においては私たちが考えているより遥かに日米の連携が密接であることが分かりました。
私たちが日米安保から離れて独立した日本の国防を真剣に考えるのであれば、米国海軍の第七艦隊の持つ攻撃力装備をどこまで自前で保有し運用するのかも真剣に検討しなければ、独立主権国家として日本の国防はおろかアジアの安全保障のリーダーシップも任せてはもらえないであろうことが良く分かりました。

こうして横須賀の軍港クルーズも無事に終了し解散となりました。天気そのものは曇天でしたが風もあまりなく、それほど寒くなかったので上部の露天デッキでも充分楽しめましたし、何よりも同行の子供たちも喜んでいたことが有難かったです。

参加された皆さんは本当にお疲れ様でした。事故もなく無事に終えられたことが一番の幸いですが、それと同じく皆さんに楽しんでいただけたのであれば、ご案内した側としては大変嬉しく思っています。

(追補)
急いでアップするとロクなことがありません。もう一枚写真をUPするのを忘れてました(泣)

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手前は護衛艦「やまぎり」です。長らく練習艦として各国を親善寄港していましたが、2011年から護衛艦に種別変更されています。奥は試験艦「あすか」で、自衛隊の各種装備の実用試験を担当しています。有事の際には護衛艦として戦闘任務につくことを前提として設計されているのが特徴で、通常は使い古された退役艦を利用することが多い試験艦ですが、海上自衛隊では実戦配備が可能な艦を試験艦として運用しています。どちらが効率が良いかはナンとも言えませんが、いずれにせよちゃんとコストを考えての配備でしょう。

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第三回Quick Touring ~横須賀軍港クルーズ1~

ご存知のように横須賀港は戦前から呉と並ぶ日本海軍の軍事拠点として使用され、現在は海上自衛隊と米国海軍の第七艦隊の基地として使用されています。フィリピンのスービック基地が米軍からフィリピンに返還された現在、横須賀基地は極東の安全保障に重要な役割を果たしており、日米安全保障条約の賛否はともかくとして、現在の横須賀港は日米の軍事拠点として重要であることには違いありません。

出航してすぐに、なぜ横須賀港が軍港として使用されてきたのかが良く分かりました。水深が深く大型船舶も入港しやすいことに加えて、地理的にも風の影響を受けにくいために湾内は実に穏やかです。さらに出航するとすぐに太平洋に出ることが可能であることからも、軍港としては理想的な場所であったのでしょう。

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この軍港クルーズは案内人によるガイドが有名で、担当する案内人の方によって解説するポイントが異なっていることが魅力なのですが、今回は妙齢の女性のガイドで、一般の方にも分かりやすい解説だったと思います。
しかし、一方で私のようなヲタクには物足りなかったのも確かですので、当日参加された皆さんにも再度楽しんでいただけるよう、視点を変えてヲタクらしい(笑)解説をして見たいと思います。

出航してすぐは第七艦隊の停泊地を通ります。今回はラッキーなことに多種の艦艇が停泊していましたが、定期訓練だけでなく、緊急事態で出動することもありますので、必ずしも常に今回のように多くの艦艇を見ることができるとは限らないのです。
ちなみに第七艦隊はホノルルに司令部のある太平洋艦隊に所属しており、その担当範囲は東経160度線以西の西太平洋・インド洋(中東地域を除く)です。一方で東太平洋地域は同じく太平洋艦隊に所属する第三艦隊の守備範囲で、こちらはサンディエゴを拠点としています。つまりアメリカはハワイを拠点とし、この横須賀とサンディエゴで太平洋の全域とインド洋をカバーしているのです。もちろんその中でも最も重要なのがこの第七艦隊の担当エリアであることは言うまでもなく、東西冷戦が終結した現在、第七艦隊は単独の海軍部隊としては世界最大となります。

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この2隻は一般的にはイージス艦と呼ばれており、今回のガイドでもそう説明されていましたが、正しくはミサイル駆逐艦と呼ばれています。この2隻は同型艦でその初号艦の名前を取ってアーレイ・バーグ級と呼ばれています。艦名は写真右はカーティス・ウィルバー、左はラッセンで、どちらも第15駆逐隊に所属しています。アーレイ・バーグ級のミサイル駆逐艦は米海軍の中でも最もポピュラーな艦種で、60隻以上が建造されています。最大の武器はトマホークという巡航ミサイルで、ご存知のように中距離射程で精密な対地攻撃能力を持っています。一方でその通称の由来となったイージスシステムというフェイズドアレイ(位相配列)レーダーと武器管制システムを装備しており、敵からのミサイル攻撃などに対してより早くそれを発見し、搭載するスタンダードと呼ばれる対空ミサイルでそれを撃退し、それでも撃ちもらした場合はさらにバルカンファランクスと呼ばれる機関銃で、1秒間に最高で75発もの弾丸を発射して撃ち落すことができます。

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こちらも同じように見えますが左はタイコンデロガ級と呼ばれるミサイル巡洋艦で艦名はカウペンスです。このタイコンデロガ級は4つのサブタイプに分けられ、このカウペンスはベースライン3というタイプです。装備は基本的にはアーレイ・バーグ級と同じと言えますが、イージスシステムがより高度で処理能力が高いのが特徴です。カウペンスはイラク戦争で初めてトマホークを発射した艦として有名で、37発のトマホークミサイルをイラクに向けて発射しました。この艦の艦長が以前に女性であったとガイドアナウンスされたと思いますが、その女性艦長は実は部下に対してパワハラを行ったことにより解任されたことは説明にはありませんでした(苦笑)。
一方、右側はアーレイ・バーグ級で艦名はマスティンです。

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さて、今回の軍港クルーズの最大の目玉がこの航空母艦ジョージ・ワシントンではないでしょうか。ジョージ・ワシントンはニミッツ級の原子力航空母艦の6番目に建造された艦で、姉妹艦が10隻もある現役の航空母艦としては世界最多(当たり前か・・・)の航空母艦です。その大きさはやはり港内に停泊している艦船の中で群を抜いており、遠目からでもその巨大さが良く分かりました。航空母艦ですから甲板は平らになっているのですが、一部斜めに膨らんでいる部分が写真で見ることができると思います。この部分は航空機が発艦するための部分で、カタパルトと呼ばれる航空機を一気に離陸可能速度まで加速させる装置がついている甲板です。

ジョージ・ワシントンには第5空母航空団という航空部隊が搭載されており、最大で85機の航空機を搭載することができます。さらに航空母艦そのものに責任を負う艦長と、航空作戦に責任を負う航空団司令の両方が乗艦して作戦を遂行しています。

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現在搭載されている航空機は対空戦闘を担当したF-14 Tomcatの退役に伴い、随分とシンプルとなってしまい、対地、対艦攻撃と対空戦闘の全てを担当するF/A-18 Super Hornetと対電子戦を担当するEA-6B Prowler、空中から警戒哨戒を行うE-2C Hawkeyeに加えて、対潜水艦攻撃と救助を行うためのヘリコプターSH/HH Oceanhawk/Rescue Hawkと、補給連絡などを担当するC-2A Greyhoundです。こうして軍港に停泊している間は航空母艦から航空機は発進できないので、入港前に海上で全機離艦して厚木基地などに分散して休養や訓練を行っています。

実際の作戦行動に際しては、さらに陸上基地などから空中給油機が発進し、航空母艦まで帰艦できないほど燃料を消費した航空機に対して、空中で給油を行うという一般人からすると離れ技を行うのですが、この空中給油に関してはまたの機会にご説明したいと思います。特にF/A-18 Super Hornetは先代のF-14 Tomcatに比べると燃料搭載量が少なく、実際の作戦においては空中給油を前提とした計画となるそうです。
ジョージ・ワシントンを正面から見ることができるのは大変珍しく、停泊している時の海側からしかそのチャンスはないと言えるでしょう。

確かに航空母艦は巨大なのですが、そこに着艦するパイロットにして見れば、ちっとも巨大ではないのが分かるのが以下の写真で、これはまさにこれから着艦するF-14のパイロットから見たジョーシ・ワシントンの甲板です。

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ここに降りなければならないのですから、パイロットにして見ればどんなに巨大でも大きすぎることはないでしょう(苦笑)。

それでは続いて海上自衛隊の艦船をご紹介しましょう。こちらは艦種が多いので大変ですが、こんなヲタク解説をお気に召していただけたのであれば引き続きお付き合いください。

(追補)
この記事をアップしてから読者の方からご指摘をいただいたのですが、記事内でタイコンデロガ級とご説明した艦艇はアーレイ・バーグ級のステザムでした。申し訳ありません。おそらくガイドさんも艦番からカウペンスとして説明してしまったのであろうと思います。実はこの両艦は艦番が同じで、カウペンスはCG-63、ステザムはDDG-63なのでした。ちなみにカウペンスも第七艦隊に所属しており、例の女性艦長のエピソードも事実ですので念のために追補させていただきます。


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第三回Quick Touring ~三戸浜へ~

昨年から始めたクイック・トレーディングを主治医とする仲間とのツーリング企画ですが、その企画を考えるに当たり相談して決めた幾つかの基本的なコンセプトがありました。それは・・・、

1.あまり大人数にならず移動をスムーズに行えること
2.クルマを痛めるような過激なイベントにしないこと
3.ご家族や友人など、クルマを趣味としていない同乗者にも楽しめること
4.普段目に触れないようなクルマやメンテナンスのヒントになるように毎回ゲストカーを呼ぶこと


というもので、第一回は宮ケ瀬ダムへのツーリングと薪釜ピザのランチ。そして第二回は奥多摩でのタイムラリーとバーベキューランチを実現しました。そして第三回となる今回はイロイロと考えた末に、三浦半島の三戸浜へのツーリングと横須賀軍港クルーズという提案をしました。1月という時期から路面が凍結する可能性があるような場所へのツーリングは無理ですし、寒風の中で外でクルマを眺めながらのんびり・・・などは苦行でしかありませんので、ツーリングの行き先はとにかく「南」と決めていました(苦笑)。
じゃあ季節外れだから、三浦は空いていて良いのでは・・・と考えたのですが、一方で湘南や三崎は一般のドライブルートとしては定番で、何も一緒にツーリングで行かずとも単独で行く機会も多々あるでしょうし、最大の問題はこのエリアにはまとまってクルマを停めて食事をするような場所が限られてしまうのです。

そこで、思い出したのが以前に916Spiderの仲間とツーリングで行ったことのある三戸浜のBeach Bumというレストランで、国道から外れ畑の中を走り、さらに細い路地を抜けた先にあるその場所は三浦半島の中でもどちらかというと穴場で、通常のドライブで立ち寄ることはないだろうと考えてのことでした。

おそらく冬場であればゆったりと過ごすことができるでしょうし、仮に天気が悪くてもレストランの中は問題ないでしょう。そして、もし晴れていれば冬場のほうが空気が澄んでおり、オープンデッキから美しい富士山を見ることができるこのロケーションはツーリングの最初の目的地としては最適に思えました。
しかし、そこで解散では面白くありません。これも上記のコンセプトによるものなのですが、趣向の異なる二種類のイベントを組み合わせることにより、同乗される方も含めてどちらか一方でも興味を持って頂け、「じゃあ行って見よう」と皆さんに思っていただければとの考えてのことでした。

そして次に思いついたのが横須賀の軍港クルーズでした。これは以前から興味があったのですが、このためだけに横須賀までドライブするのは腰が重いものがありましたし、一方で行ったついでに・・・と言っても出航時間が決まっているためになかなか予定が合わず、今までは行けずにいたのです。
東京タワーや浅草観音もそうですが、どうしても東京にいると「いつでも行ける」と思ってしまい、知っていてもわざわざ行くという機会がない観光名所などの場所があるものです。この横須賀軍港クルーズもそんな場所の一つで、こういう機会だからうまく時間を合わせてツーリングコースに組み込むことにしました。

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集合は大黒PAでご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、休日朝の大黒PAには一般のドライバーに加えて実に様々なクルマ趣味の仲間が集まっており、それを見るためだけに大黒PAに行くヒトもいるほどなのです。特に有名なのがスーパーカー軍団で、この一団に突っ込んだら総額○億?といった状態になります。一方で旧車も集まっており、その日はロータスヨーロッパの仲間が集まっていました。

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さらに凄かったのがさるクルマの集団で、「ソレタコデュアルに竹槍出っ歯」と言えば分かる方には分かると思います(笑)。警察も駐車場所以外に停めていれば注意する程度で、あきらかに保安基準に違反しているそれらのクルマを取り締まることはしていませんでした。それにしてもそこだけタイムスリップしたかのような光景でした。

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皆さんイタリア時間かと思いきや、全員が定刻までに集合し、予め用意しておいたルート地図を配ってコースを説明し出発です。

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ルートを先導するために先頭を走らなければなりませんでしたので写真を撮ることはできなかったのですが、一列に並んで走行するLANCIA Deltaを中心とした15台ものイタリア車の集団は、バックミラー越しに見ても実に気持ちの良い光景です。いつもの仲間とのツーリングですと途中の移動は抜きつ、抜かれつ・・・といった互いのクルマの位置を変えて、運転していて見える光景を楽しむのですが、Quick Touringでは集団走行が初めてという方もいらしゃるために、一定の速度で集団を引っ張ります。

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ツーリングルート上での最大の難所は国道から三戸浜へ右折するポイントで、出発前に説明しておいたのですが、高速を降りた国道で隊列が乱れてしまったこともあり、迷われてしまう方も出てしまいましたが、それもすぐに気づいて合流でき、無事に予定していた時間にBeacn Bumに到着することができました。

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残念ながら天気は薄日が差す程度で、富士山を見ることはできませんでしたが、風もなく東京都内よりも暖かい日で、テラスにいても寒さを感じることはありませんでした。

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食事開始までの時間は駐車場でクルマ談義をするグループやテラスで海をのんびり眺めて楽しむグループなど、めいめいが思い思いに楽しんでいます。お世話をする側からするとこの光景を見るのが一番有難く、皆さんが来たことを後悔しているのでは・・・という心配がなくなる瞬間なのです。

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食事は一度に大人数ということもあり、予め決めていただいていたのですが、私がチョイスしたのは「カジキ鮪の尾身ステーキ(ガーリックバター)」で、過去に訪れたときに食べて以来、是非もう一度と思っていましたので大満足でした。場所柄、三崎に近いこともあり魚料理は間違いないはずなのですが、不思議なことに多くの皆さんは肉料理をチョイスされていたのが面白い現象でした。

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ゆったりとランチを楽しんだ後は、横須賀軍港クルーズに向けて出発です。横須賀港には下道を通って行くことにしたのですが意外に渋滞しており、思ったより時間がかかってしまいました。どうやらその日に開催されていたマラソン大会の影響もあったようです。
さらに、駐車する予定であったショッピングモールの駐車場がこれまた満車状態で駐車に手間取ってしまい、全員が乗船できたのは出航直前の滑り込み状態でした。

いよいよ今回のツーリングの第二のイベントである横須賀軍港クルーズに出航です。
次の記事では、参加された方にとっては当日のガイドとは違ったヲタク解説を、そして参加されなかった方にはクルーズした気?になっていただけるようにしたいと思っています。

尚、このツーリングのレポートはクイック・トレーディングのHP、そして今回、内装のリフレッシュ例をご紹介するためにゲストカーとしてお越しいただいた笹本氏のブログにも掲載されていますので、併せてご覧いただければと思います。

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LANCIA Storatos HF 製作記10

ボディのクリアー塗装を乾燥させている間に、ディスプレイベースを作ります。今回はジオラマ未満、ディスプレイベース以上をコンセプトに少し遊んでみようと思います。

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それはいつものアガチス材のディスプレイベースの上にサンレモの路面を再現するというもので、その工作方法をご紹介したいと思います。
イメージはサンレモのターマック(舗装)路面で、当時の映像や写真を見て選んだのは、路肩が黄色の実線で中央線は白線の二車線の道路としました。サンレモの田舎道を見ると、道路は簡易舗装っぽく簡単に盛り土をして舗装されたもので、路肩は石だらけで所々に雑草が生えているようですのでそれを再現することにしました。

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まずはいつもの通りアガチス材にニスを塗ってやるのですが、今回は表面は路面を再現しますので、サイドの部分のみにステインニスを塗り、上から水性ウレタンクリアーを塗り重ねます。

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道路はベースに対して平行にすると動きがなくなってしまいますので、少し斜めに再現します。斜めにすることによりディスプレイベースは続いている道の一部を切り取ったように見せることができるのです。
イタリアの道路規格が良く分からなかったのですが、ラリーコースは狭い曲がりくねった道ですので日本の規格で調べて見ると県道などで古い道路の走行車線の幅は2.75mとの記述がありました。これを1/24スケールに縮小すると約11.5cmとなります。これをベースに道幅を決めることにします。

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ウレタンクリヤーが乾燥したらこれからの作業の保護のためにサイドの部分にマスキングテープを貼っておきます。

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ベース面を路面にすると、路肩を下げなければなりませんので彫刻刀で削ってやります。小学生の時に作った版画の要領で適当に削るのですが、路肩は荒地ですので規則的に美しく削るのではなく、むしろ凸凹があったほうが実感が出ますので、これまでのモデル製作に求められた繊細な作業とは逆にわざと大雑把に削ります。

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路肩を削り終わったら路面の再現に移りましょう。
路面の表現にはタミヤの情景テクスチャーペイントを使用します。以前は写真の情景スプレーという特殊合成樹脂の粉末スプレーがあったのですが、現在は製造終了となりその代わりに右の情景テクスチャーペイントという塗料が販売されています。こちらはセラミックの粒子が塗料に配合されており、筆で塗ってやることにより情景スプレーと同様に立体的な表現ができるものです。何せ新製品ですので使うのは初めてなのですがどんなものか使ってみることにしました。

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塗ってすぐはドロドロの塗料をブチ撒けたような感じです。乾燥には時間がかかりますが、最初の段階で路面の起伏を再現するために塗る厚みを変えて一旦乾燥させます。乾燥したら今度はテクスチャーペイントを水で薄めて表面に薄く塗って完成です。表面のザラザラ感もなかなか良く、スタイロフォームなどのベースを使えば大きな起伏や壁などの再現にも使えるのではと思います。色も泥や砂漠など各色用意されていますので、ジオラマを作る方には便利な製品ではないでしょうか。

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それでは引き続き車線の再現に移りましょう。路肩の黄線の幅は同じく日本の道路規格によると1/24スケールで幅は4mmで、中央線の白線は6mmとなりますが、マスキングテープを使うと塗り分け部分がはっきりとしすぎてしまいます。こういったマスキングを行う場合はトレーシングペーパーを用いて塗りたい部分を切り取ります。今回の場合は路面の線ですのでそれほど厳密な塗り分けを行う必要はなく、むしろ境目がちょっとボケている程度のほうが実感が高まりますので、ぴったりと貼り付けずに数箇所を両面テープで貼る程度にしてスプレー塗装を行います。

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黄色の線は写真を見ると少しオレンジっぽい黄色ですので、Mr.Colorの58番の黄燈色を用います。この塗料は半光沢で少し艶がありますので、フラットベースを混ぜて艶を消してからエアブラシでスプレー塗装します。同じく中央線の白線も同様にマスキングを行いホワイトで塗装するのですが、こちらはホワイトサーフェイサーを用いてスプレーすれば艶消しの白線を再現することができます。さらに乾燥後に砂消しゴムで表面を削ることにより部分的に白線がかすれた感じを表現することができます。

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続いて路肩の地面の表現に移りましょう。用意するのは鉄道模型などで使われている材料で、ジオラマ用クラッシャブルストーンと呼ばれるもので地面の表現をします。名前の通り砕いて様々な大きさにすることができますので、スケールに合わせて石の大きさを調整することができます。さらにコースターフと言う細かい着色スポンジを使って雑草の表現をするのですが、一色だと単調になってしまうので今回は大きさと色調の異なる二種類を用意しました。

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クラッシャブルストーンは文字通り好きな大きさに砕くことができます。ビニール袋に入れてハンマーで叩いて砕くことにより、細かくしたものとそのままの大きさのものを混ぜて大きさをバラつかせておきます。

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接着は木工用のボンドを使います。これは固まるまでに時間があるので工作がしやすいことに加えて、固まると透明になるので貼り付けたこれらの材料を邪魔しないためジオラマ製作によく用いられている接着剤です。
指やヘラなどで必要な部分に木工用ボンドを塗ったら予め砕いておいた上記のクラッシャブルストーンを上からばら撒きます。今回はさらにコースターフも接着しますので少しまばらにばら撒いておきます。続けて同様にコースターフを撒き、部分的にピンセットで植えるように押し込んでやれば完成です。

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木工用ボンドが乾燥したらサイドの保護のためのマスキングテープを剥がして完成です。
路肩の荒地とわずかに生えた雑草がうまく表現できたのではないかと思います。
ちょっと路面が舗装したてのようで綺麗過ぎるかなとも思ったのですが、今回はあくまでディスプレイベースとしての製作ですので、タイヤのスリップ痕やオイル染みなどを加えるのは止めにしました。

これを一つのジオラマとして作品にするのであれば、クルマを汚したりフィギュアを配置したりと、何らかのストーリーを考えながらその一瞬を切り取ったイメージを元に、最初から計画して造らなければなりません。
ジオラマとディスプレイベースの違いはそこで、あくまでクルマを主役にしてそれを見せるためのものと、クルマを一つの道具としてジオラマ全体でストーリーを見せるものは製作に際して根本的にアプローチが異なるものだと思っています。
それでは引き続きクルマの製作に戻りましょう。

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ストラトスの苦難4 ~隠された職人技~

リアカウルの修復に際してクイック・トレーディングが選択したのは、現状のパーツから新しく型を作ってFRPボディを製作するというものだったのですが、それは決して一般論として「どこかに頼めば出来るだろう」と考えたのではなく、その作業を行う技術を持った信頼できる業者を知っていたからこそ決めた選択でした。それは群馬県の伊香保にあるポリクラフトという会社で、様々な国産/外国車のFRPパーツを製造している実績のある「知られざる名社」でした。
もちろん検討された選択肢の中でコストも時間も一番かかかる方法ではありましたが、完全に修復するという目的からすると、その信頼できる会社に頼むことさえできれば一番リスクの少ない方法であることも確かでしたので、保険会社の担当者を実際に伊香保の工場にまで案内しその作業内容を説明することにより、そのコストを承認してもらいました。

FRPで造られるパーツの造り方についてはご存じない方も多いのではと思いますので、この機会にその工程も含めて実際に行った作業についてご説明しましょう。

そもそもFRPとは、繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastics、FRP)の略称で、ガラス繊維などの繊維を樹脂の中に入れて強度を向上させた複合材料のことを言います。「ガラス繊維など」と書きましたが、近年はガラス繊維の代わりに様々な材料が使われており、皆さんが良くご存知の材料がカーボンファイバーと呼ばれる炭素繊維があります。ガラス繊維に比べて軽量かつ強度が高いのが特徴で、ガラス繊維を用いたFRPに対してCFRPと呼ばれています。さらにケブラーやダイニーマなどの材料も用いられていますが、基本的な製作方法は同じです。

FRPで整形品を作る場合は、まずマスターモデルと呼ばれる型を作ります。通常はケミカルウッドと呼ばれるポリウレタンで作られるのですが、名前の通り木材のように加工性には優れているにも関わらず、木材のような木目がないためにマスターモデルの製作には適した材料です。しかし強度はそれほどありませんので、そのままマスターモデルを製品として使うことはできません。今回はマスターモデルを造る代わりにこの破損したリアカウルを使用するのですが、当然のことながらこれだけ破損していますので実際にはベースモデルとしてしか使えません。欠損した部分やヒビが入った部分を樹脂で補い、さらに各所に補強を入れてマスターモデルとして使用できるレベルまで仕上げなければなりませんでした。

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マスターモデルを製造する際には、型から成型品を抜く際にひっかかって抜けないように、型割りと呼ばれるパーツ構成をしておかなければなりません。今回製作したマスターモデルは元々FRPで製造されていたパーツ割に準じることにしたのですが、それはカウル本体、ルーバー、トランクリッド、テールスポイラー、ルーフスポイラーの5点にも上りました。それぞれのパーツをオリジナルとなる破損したものから修復するのですから、それだけでも大変な作業です。

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マスターモデルが出来上がったらそれをベースにしてFRPで雌型を作成します。雌型とは本製品を製作するためのベースとなるものです。最終的にはマスターモデルから雌型を作成し、それを元に雄型(本製品)を製造するのですから本製品の厚さや収縮を見込んで雌型は製作されなければならず、この辺りの加減が上記の技術と経験がモノを言う場面なのです。マスターモデルとなる原型が出来上がったらチェックのために実際に現車にもう一度合わせてみて必要に応じて微調整を行います。FRPパーツの出来上がりを左右するのがこのマスターモデルと雌型の製作で、最も技術と経験を必要とする部分です。

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雌型が出来上がったらそれをベースに離型剤を塗り、ゲルコートを塗って硬化させたらガラス繊維に樹脂を染み込ませて気泡を抜きます(「脱泡」と呼ばれています)。気泡が少しでも残っていると強度がなくなるだけでなく最悪は硬化の際に割れてしまうこともあるので、この脱泡は重要な工程です。FRPボディの塗装表面がしばらくするとブツブツになるのはこの脱泡が不充分で、塗装後にFRPの内部から気泡が出てくることが原因です。そして充分脱泡できたら温風温熱乾燥炉で熱を加えて硬化させます。
硬化が完了したら常温まで自然冷却し、雌型から製品を抜き出します。余分な部分をカットして、さらに表面をサンディングし必要に応じて穴開け加工をしたり補強が必要な部分にはFRP樹脂板で肉厚を調整したりします。
さらに下地処理を行いサーフェイサーを塗って研磨して本塗装ができるまでに仕上げれば完成です。

FRP製造の工程は以上ですが、技術的に大別するとマスターモデルと雌型の製作と実際のFRP製造とに分けられ、マスターモデル若しくは雌型さえあれば、FRP製品そのものは比較的簡単に作ることができます。やはり一番難しいのがこのマスターモデルの製作で、今回のように既にある現物の微妙なラインに合わせるためには、FRPの特質を知りつくして完成品に発生する成型誤差を計算に入れた製作技術が必要となるのです。

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聞けば、ポリクラフトという会社はこのマスターモデルの製作がメインで、FRP製品そのものの製造は殆ど行っていないそうです。つまり自動車メーカーやパーツメーカーなどはポリクラフトにマスターモデルを発注し、そのマスターモデルや雌型を他のFRP製造メーカーに支給してFRPパーツを製造させているのが実際なのだそうです。今回はワンオフということで最終の製品までこのポリクラフトで製作してもらったのですが、そこには職人の誇りをを感じさせてくれるエピソードがありました。

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普通のFRP製品は硬化する際にヒケや歪が出るのは止むを得ないもので、その場合はパテを使って表面処理を行うのが普通なのだそうですが、本来ならばマスターモデルがちゃんと出来ており、その後の工程を完璧に行えばパテを盛らなければならないような修正は必要ないのだそうです。それはすなわちマスターモデルの出来が悪いか、FRP成型工程ミスのどちらかが原因なのですが、塗装工程でルーフスポイラーに僅かなヒケが見つかりました。塗装を担当した綿引自動車にとってはその経験からすると、この程度のヒケはFRPボディでは当たり前のレベルで、パテを盛って成型して塗装してしまうものだったそうですが、一応ポリクラフトにその旨を連絡したところ、ポリクラフトは再度製作し直したそうです。自分達の技術に対する誇りが後工程である塗装工場でのパテ修正など許せなかったのでしょう。

またこうして新しく製作したリアカウルは単に原型を修復しただけではありませんでした。それは使われた最新の特殊樹脂とその強度で、オリジナルと同じFRPパーツでありながら、エンジンからの熱に対応すべく最新の耐熱樹脂を用い、さらに重量を増さずに強度を高めることができたために、オリジナルのC.A.Eストラトスはおろか、ホンモノのランチア製のストラトスより優れた、おそらく世界中のストラトスの中で一番優れた品質のリアカウルとなったのです。
このことはオーナーのS氏も実感することができました。S氏によると以前はリアカウルを開ける際には片側を持ち上げるとカウルが撓み、すこし遅れて反対側が開いていたのが、修復後のカウルは片側を持ち上げるとちゃんと反対側も「一緒に」持ち上がるそうです。

その手間と時間は別にして順調に製作されたように見えるリアカウルですが、実はそれほど簡単ではなかったサイドストーリーがあったのです。

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LANCIA Storatos HF 製作記9

このクルマ特有の見せ場はラリーカー独特のカラーリングに加えて、フロントに装備されたライトポッドです。
これはクルマの顔とも言える部分ですので、細心の注意を払って仕上げたいものです。また、このライトの組み立てはプラモデル製作の基本作業が詰まっている部分でもあります。それは細かい部品を傷つけずにランナーから切り離し、切り口を整形すること。そしてレンズ部分であるクリアパーツの接着に加えて、その仕上げ方で他人の作品と差別化を図ることができる部分です。ポイントはこれらの基本工作に加えて、実物でメッキされたライトリムをどう表現するかで、このキットのパーツはメッキパーツではないために工夫が必要です。
私自身はプラモデルのメッキパーツはあまり好きではなく、ゲートやパーティングラインを整形する際にメッキは剥れてしまいますし、どんなに綺麗にメッキされていてもそれは実物のメッキの光沢とは異なり、その仕上がりがオモチャっぽくなってしまうので、メッキパーツであっても敢えてメッキを剥がしてしまいます。

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メッキ表現の代わりとして使える材料がメタルックで、これはアルミ箔でできた片面に糊のついた薄膜フィルムなのですが、これを貼ることにより金属表現をすることができます。メタルックには着色されたものもありますので、メッキの表現だけでなくウィンドウのゴムモールやカーボンなどの表現もできるのですが、これをライトパーツに貼って見ました。

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クリアパーツの接着は最も気を使う部分です。通常の接着剤だとはみ出したりしてクリアパーツを汚してしまいますし、瞬間接着剤は化学変化で白濁してしまいます。そこでまた秘密兵器の登場です(笑)。それはメタルプライマーという薬品で、本来は金属の上に塗装をする際に塗装を剥れにくくするために塗る薬品なのですが、これを接着剤代わりに利用することができます。もともと接着強度はそれほど必要としないパーツですし、本来は接着剤ではないので硬化に時間はかかりますが、固まっても白濁せず、粘度がないために筆で流し込んでやれば最小限の接着面で綺麗に接着してやることができます。

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4連のライトポッドはカバーを装着してしまえば見えなくなってしまいますので、単にシルバー塗装のみで終わりとしました。見えないところに手を抜かないのもコダワリですが、潔く手を抜くことも必要です(苦笑)。

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もう一箇所の手抜きはフロントに搭載されたスペアタイヤパーツです。キットは上げ底でタイヤとホイールに加えて冷却水ホースがモールドされているのですが、ルーバーの隙間から殆ど見えません。また、フロントにスペアタイヤを搭載するとラジエーターの冷却効率が悪くなるために、ストラダーレでもオーナーはスペアタイヤを下ろしてしまうというハナシを聞くと、ラリーカーでスペアタイヤを搭載していたとも思えません。一応目隠し?としてパーツは使うことにしましたが、一生懸命塗り分けをするのは止めてしまいました。

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塗装は終わったホイールにタイヤを装着しました。ホイールにはハイライトのためにスミ入れをしようと思ったのですが、出来上がりが綺麗なのであえてホイールナットの部分のみのスミ入れに止めました。

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デカールが乾いたらいよいよボデイの仕上げを行います。まずはボデイ表面に残ったデカールの糊を拭き取ります。デカールを傷つけないようにぬるま湯でキムワイプや綿棒を濡らしてボディ表面を拭いて綺麗にします。
そしていよいよクリアー塗装なのですが、ここが悩みどころです。クリアー塗装の目的はボディ表面の艶を出すためだけでなく、デカールの段差をなくすのが目的なのですが、問題はそのクリアー塗料の材質です。現在一般的なクリアー塗料は三種類あります。
まずは水性クリアーで、水性クリアーは水性であることから乾燥が遅いことに加えて艶が他のものに比べて劣るという欠点があります。乾燥が遅いことそのものは待てば良いだけで、時間に縛られずに趣味で模型を造っている場合は大した問題ではないのですが、乾燥している間に表面にホコリがついてしまうと折角の艶出しのためのクリアー塗装が仇となってしまうことが問題です。一方で最大の利点はデカールを侵さないことで、このモデルのようにデカールを多く貼ったモデルには安全なクリアー塗料です。

そして一番一般的なのがラッカークリアーで、乾燥が速く艶も良く・・・と良いことずくめなのですが、問題はデカールを痛める可能性があることです。以前の記事でも書きましたが、ラッカー塗料は溶剤が揮発することにより顔料が定着する塗料です。ラッカークリアーはその色をつけるための顔料は入っていないのですが、溶剤が揮発する際に表面が収縮するためにデカールに皺ができてしまうことがあるのです。特に大面積のデカールや浮いてしまったデカールがあったりするとその傾向が強く、折角最終仕上げまで造り上げたモデルを台なしにしてしまう可能性があるのですが、塗り方次第ではその危険性を回避することができますし、塗り重ねることによりデカールの段差も消すことができるために一般的に使用されているものです。

上記の問題を解決できるのがウレタンクリアーで、実車のクリアー塗装に用いられているクリアーです。前の二種類の塗料が水性であれ油性であれ溶剤が揮発することにより固まる塗料であることに対して、ウレタンクリアーは化学変化により固まるもので、揮発する際に収縮しないためにデカールも傷つけることのないクリアーなのですが、安定して化学変化を起こさせるためにはその配合が厳密であることに加えて、一度配合すると全て固まってしまうために作りおきができないという欠点があります。クルマの補修剤として売られている缶入りのものはスプレーする直前に缶の中の隔壁を破って配合するようになっており、配合比の難しさからは解放されるものの一度に使い切ってしまわなければムダとなってしまいます。最近は自分で都度配合できる模型用のものも販売されるようになりましたが、入手難であることと上記の配合の問題からまだ一般的ではないようです。

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このように全ての種類には利点があると同時に何らかの問題があるのですが、イロイロと考えた末に今回はラッカークリアーを塗ることにしました。理由はもともとはデカールであったグリーンの塗り分け部分をスプレー塗装で行ったことによりリスクが減ったためで、ラッカークリアーの注意書きにはデカールを貼った上からスプレーしてはいけないと書いてありますが、それはメーカー側がクレームリスクを回避するためのもので、前記のように塗り方でその危険を回避できるのです。

スプレー塗装の基本として、最初は遠くから砂吹きをすると書きましたが、デカールの上に塗るラッカークリアーの場合はさらに注意して最初はさらに遠くから砂吹きを行います。これはデカールの表面を守るためで、少量のクリアー塗料をまず表面で乾燥させることにより、収縮を最小限に抑えてラッカークリアー塗装の影響を最小限とすることができます。
最初の砂吹きでデカール収縮が起こらなければ、その後に充分に乾燥させた後は通常の塗装と同様にクリアー塗装を続けることができます。とにかく最初は厚塗りは禁物で、サッと一回吹き付けるだけで表面がザラザラしたまま乾燥させます。

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まずはこの状態でデカールが皺になったり侵されていないかチェックし、引き続きラッカークリアーを使うかどうかを決めるのですが、今回は何とかそのままラッカークリアーを使えそうです。もし、砂吹きの段階でデカールが皺になったり破れたりした場合は塗料でレタッチして続きは水性クリアーかウレタンクリアーに変更した方が良いでしょう。
続けての2~3回はサッと吹いては10分程乾燥を繰り返します。そして表面全体にクリアー塗料が載ったらゆっくり目にスプレーして表面に艶が出るまで吹き付けます。そして更に今度は30分程乾燥させたら同様にゆっくりクリアーを吹き付けて終了です。

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クリアーを乾燥させて細部を良く見るとやはりデカールの一部が侵されていました。写真では分かりにくいのですが具体的にはブツブツが出来ている程度で、破れたりというダメージはなかったのですが、この原因はデカールの密着に問題があったようで、全てのデカールを貼る際にマークセッターを塗って密着させてやれば起こらなかったトラブルであろうと思いますので、今後の教訓としたいと思います。

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一部のブログ記事をみるとカルトグラフ製のデカールはラッカークリアーに弱いという記述がありますが、どうやらそれはカルトグラフ製デカールの糊が弱いことが問題であると思います。小さいデカールであっても労を惜しまずにマークセッターを使って密着させ、前記のクリアースプレーの手順を守れば、充分ラッカークリアーを使えることが分かりました。

ラッカークリアーは乾燥が速いのが特徴ではありますが、それでも2、3日は乾燥させて完全に溶剤を揮発させます。

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ストラトスの苦難3 ~復活への路~

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クイック・トレーディングで詳細にチェックして見ると、そのダメージは思ったよりも深刻なものでした。
リアカウルは大破し、その衝撃は一部コクピット部分のある中間セクションにまで及んでいました。しかし、幾つかの不幸中の幸いによりそのダメージを減じていたことも分かりました。

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その一つ目の不幸中の幸いは、意外にストラトスのボディ構成だったのです。それはリアカウルの強度がそれほどなく、FRPでできたカウルごと上に跳ね上げる形式であったために、ぶつかった衝撃でカウルが上にめくれ上がり、結果として衝撃を逃がしていたということです。これがもしスチール製のモノコックボディであったなら、ボディ全体でこの衝撃を受け止めることとなり、おそらく修復不能なダメージを受けていただろうと思われます。見かけは悲惨な状態ですが、FRPボディが車体の応力を担う一部ではなく単なる外板であったことが一つ目の不幸中の幸いです。

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二つ目の不幸中の幸いは、ストラトスがミッドシップ形式であったことです。リアセクションはボックスフレームとなっており、かなりの強度があったことも幸運で、フレームは受けた衝撃で曲がっていたものの、それは単純な構造のために充分修復できるものであったことです。

そして三つ目の不幸中の幸いは甘かったサイドブレーキです。S氏のレポートにあるように衝突の衝撃でクルマが吹っ飛んだことからも、追突のエネルギーの全てを車体で吸収したのではなかったことが想像できます。これが登り坂であったり、しっかりとサイドブレーキを引いていたのであればダメージはもっと深刻であったろうと思われます。

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仔細な検分の末にようやく修復のポイントは判明したのですが、やはり最大の問題はボディ修復でした。Gr.4仕様のストラトスのリアカウル・・・は注文して翌日届く部品ではありません。考えられる修復方法は三通りあり、それぞれを検討することとなりました。
まずは、今あるダメージを受けたカウルを修復することです。繰り返しになりますがFRPボディは車体剛性とは関係がなく、仮に破片であってもそれを繋ぎ合せて接着することによりその修復は可能です。もしなかなか入手できないFRP製のスポイラーなどをヒットしてしまったら、可能な限りその破片を拾い集めておくことがその後の修理には重要です。
しかし、大きな部品であるために仮に割れていない部分であっても歪が出ているために、補修したとしても元の形状に戻すことは困難に思われました。

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次に同様のリアカウルを入手する方法です。これは私もお手伝いをしたのですが、世界中を探してやっと見つけたのがイタリアの業者が売りに出していたGr.4用のリアカウルでした。しかも中古品ではなくちゃんと塗装前の新品です。そしてお値段も日本に送る送料を加えて考えても充分安かったのですが、問題もありました。その一つはカウルの形状で、この個体よりもフレアが大きいタイプのものであったのです。さらに海外の業者ということもあり本当に写真の通りのものが届くのかどうかという不安もありました。

そして最後の選択肢はこの壊れたカウルを型にして一から新しいカウルを造るというものです。コストとその時間は前の選択肢よりも遥かにかかってしまいますが、この方法は一番安心できる方法です。

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さらにこれらの選択肢のどれを取るか・・・に際して重要な要素はその資金です。
今回の事故の場合、事故相手は対物保険に入っていることに加えて、S氏も自分の車両保険に加入していました。しかし、経験された方はご存知のように、保険会社はその事故査定によりクルマの価値以上の修理費は払ってくれません。
しかもS氏が最初に連絡した自身の加入する保険会社はその初期対応先である事故受付センターの応対はあまり良いものではありませんでした。
相手が飲酒運転であったことを説明すると、相手の保険が下りない可能性があると言われたとのことですが、近年の飲酒運転による悲惨な事故から、保険会社の社会的責任が重視されるようになり、現在は被害者救済という立場から、例え保険契約者が飲酒運転をしていても事故相手の被害弁済のための保険項目はちゃんと支払われるようになっています。
その後の担当者の対応はちゃんとしており、その辺りの説明もきちんとされたそうですが、CMで通販型の保険会社がアピールしている事故受付センターでの初期対応が、実際にはどれだけ難しいことかを考えさせられるエピソードでした。

そしてようやく相手方の保険会社と連絡を取ることができました。今回の場合は相手が飲酒で警察に拘留されているために、まずはS氏から事故の経緯を含めて説明するしかなかったのですが、そこで一番の問題はこのC.A.Eストラトスというクルマについてでした。
通常の事故の場合はトヨタの○○で年式は・・・という説明で済むのでしょうが、ストラトスというクルマについてはおろか、それがC.A.Eというレプリカモデルになるとクルマ好きの方でも知っているヒトは稀で、ましてや保険会社の社員という立場で、職業としてクルマに関わっているヒトであれば知らなくて当然で、むしろ知っている方が異常と言って良いでしょう。
幸いなことに相手が加入していた保険は「対物無制限」という条件でした。しかし、前述のように無制限といってもそのクルマの価値以上の修理費は保険では下りません。ということは、査定に当たって最大の課題はこのクルマの価値が幾らかという問題となります。これまた経験されている方は多いのではないかと思いますが、保険会社は再調達価格をベースに査定します。すなわち今、そのクルマを買うと幾らか・・・であって、そもそもそのクルマを幾らで買ったかではありません。変態旧車(笑)に乗っているオーナーの最大の悩みがこの査定方法で、市場価値のないクルマをどんなに費用をかけて維持していたとしても、一旦事故の査定となると二束三文の全損査定しかされないのです。

しかし、S氏のC.A.Eストラトスは中古車として流通しているクルマではありません。また仮にあったとしてもそれは「相場」を形成する台数ではないために、一般的な査定方法が適用できるクルマではありませんでした。このようなケースでは一般的な判断とは異なり、保険会社の担当者の理解と判断によって大きく左右されるケースなのだそうですが、S氏にとって幸運であったのはこの相手方の保険会社とクイック・トレーディングとの信頼関係が深かったことでした。

メンテナンスガレージは事故修理で様々な保険会社と関係があるのですが、中には保険金詐欺まがいの法外な修理見積もりを出したりして保険会社のブラックリストに載るメンテナンスガレージもあるようです。クイック・トレーディングが特に今回の保険会社との間に信頼関係を築いていたことは、このC.A.Eストラトスというクルマに関しての情報と、その修理費の概算見積もりに関する信憑性について保険会社側を納得させるに充分だったのです。
一方でS氏は補完資料として当初の購入費に加えてこれまでの修理費などの書類を整え、晴れて保険会社から修理OKの判断を得ることができました。そしてこれ以降はむしろ、「頑張って修復しましょう」と逆に励まされるほどになったのです。この修理の後にS氏はその当時の保険会社から、今回の事故の莫大な修理費を払う側であった相手方の保険会社に自身の保険契約を移しました。以前の記事でコストを負う側の論理云々と書きましたが、目先の利益を最優先に考えるのではなく、問題に真摯に向き合い、相手の立場に立って論理的に問題解決を図ることが如何に重要であるかを考えさせてくれるエピソードです。

こうして修理費について心配する必要がなくなり、後はどのように修復するかという方針を決めるだけとなりました。最終的に取られた選択肢は最後の現状のカウルをベースに新しくパーツを造るというものでした。しかし、この選択をするためにはそれだけの技術力をもったFRP製作業者がいなければなりません。
ここでもクイック・トレーディングのネットワーク力が発揮されることとなります。

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LANCIA Storatos HF 製作記8

それではボディのマスキングを剥がしましょう。何回やってもこの瞬間はドキドキするもので、過去には悲惨な目にも逢ったことがありますので、緊張する作業です。塗り分け部分のマスキングテープを剥がすときには注意が必要で、下の写真のように後から塗った側に少し傾けるように剥がして行かないと、色の境目が浮いて剥れてしまう可能性があります。

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マスキングは概ね成功ですが、やはり一部に吹き漏れがありました。

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また、フロントはマスキングの失敗で塗り分けに段差ができてしまいました。まずはこれらをリカバリーします。
吹き漏れはこの程度であれば1500番のペーパーで削り取ることができます。

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塗り分けの段差は再度マスキングして筆塗りでレタッチします。

塗り分けの処理が終わったら、さらにボディ表面を2000番のペーパーで磨いておきます。これは表面に残るマスキングテープの糊と塗装の柚子肌を綺麗にするためで、これからデカールを貼ってさらにクリア塗装をするための下準備となります。ペーパーで磨く際は細心の注意を払い、磨き過ぎて下地を出さないようにしなければばりません。最後にコンパウンドで表面を軽く磨いてから中性洗剤でコンパウンドのカスを洗い流します。

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コンパウンドとはペースト状の研磨剤で、これまでご紹介したペーパー状の研磨シートと同じく、表面を研磨するためのものですが、通常はより細かい研磨に使用します。コンパウンドの中にも粗目、中目、細目、極細とあるのですが、私の場合は粗目、中目に相当する工程は作業性の良いペーパーで代用し、細目の部分からコンパウンドを使用しています。もう一つの理由はコンパウンドに含まれる油分で、塗装工程の途中で使用すると塗装面に残るその油分をもう一度洗浄しなければならないのですが、最終仕上げで用いると最後にワックスを塗りますので、その油分を気にしなくても済むからです。しかも最後の仕上げに使用する、セラミックコンパウンドは油性ではないためにワックスを弾いたりすることがありません。

それではデカールを貼って行きましょう。このモデルのデカールは以前の記事でご紹介したカルトグラフ製のデカールで、その発色の素晴らしさもさることながら、最大の特徴は通常のデカールにある透明部分の余白が殆どないことです。デカールの余白は印刷する際のアラインメントズレを吸収するためのものなのですが、アラインメントが正確であるとこの余白は不用となります。それだけカルトグラフの技術と品質管理が素晴らしいことの証明がこの余白部分だと思います。

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デカールは水転写式ですので水に漬けるのですが、この時期の冷たい水だとフィルムが破れてしまう可能性がありますので、ぬるま湯を使用します。必要な部分のみハサミで切り取って順番に貼り付けて行きます。

カルトグラフの唯一と言って良い欠点はフィルムが硬いことで、曲面に馴染ませるには工夫が必要です。それにはマークセッターとマークソフターという薬品を利用します。マークセッターはデカールを貼りやすくするための糊剤で、貼りたい場所にあらかじめ塗っておくことによりデカールの密着性を良くすることができます。マークソフターはデカールのフィルムを柔らかくするためのもので、デカールを貼ってから塗って(貼る前に下地に塗っておいても構いません)、綿棒などで押さえてやることにより曲面に馴染むようになります。いずれもデカールを貼ってから綿棒でデカールの表面を廻すように転がして余分な水分や薬品を取ってやります。決して擦ってはいけません。擦るとデカールが破れてしまいます。
またこのキットではデカールの重ね貼りををするよう指示されています。具体的にはゼッケンサークルのデカールの上からゼッケンナンバーを貼るといったものです。こういった場合は一番下のデカールが充分に乾いて定着してから上のデカールを貼るようにします。デカールは僅かですが乾燥する際に収縮しますので、乾かないうちに上から濡れたデカールを貼ると破れてしまう恐れがあります。

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このキットでの最大の難関はフロントのルーバー上のデカールです。ルーバーは隙間が開いているのに対してデカールは一面ですので、そのまま貼るとルーバーの隙間を塞いでしまうことになります。こうした場所にデカールを貼る場合には上記の薬品や技術を総動員する必要があります。
最初はデカールを使う予定でいたのですが、やはり失敗してしまいました(泣)。マークセッターを塗りすぎてデカールを溶かしてしまったのです。何とか筆でレタッチを試みましたが、あまりに見栄えが良くないので急遽、塗装することにしました。負け惜しみではなく、こうした失敗の経験も重要で、どうすれば失敗するかとどうすればリカバリーできるかの両方を会得することができます。

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アリタリアのAロゴですのでマスキングも簡単です。デカールで実測するとグリーンの幅は4mmで、真ん中の赤の部分との間隔は2mmですので、それに従ってマスキングテープを使ってマスクします。
ここでまたまた失敗してしまったのですが、ルーバーの隙間からスプレーした塗料が毛細管現象でハミ出してしまいました(泣)。

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幸いなことにベースが白ですので、ハミ出した部分をデザインナイフでハミ出したグリーンの塗膜を削って、筆でホワイトをレタッチして何とかリカバリーできました。しかしレッドの部分は同じ轍を踏まないように筆で塗ることにしました。同じようにマスキングテープでマスクしますが、マスクにかかる部分は毛細管現象が起こらないように濃い目の塗料で先に塗ってまずはエッジの部分を固めます。その後に少し薄めの塗料で中央部を塗りつぶすと綺麗に塗装できます。
スプレー塗装の塗り重ねはラッカー系のものでも良いのですが、ベースがラッカー系塗装でその上に筆塗りをする場合はベースを侵さないようにエナメル系の塗料を使用します。

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こうした細かいマスキングにはまたまた秘密兵器があります。それはハイテクマスキングテープというもので、通常のマスキングテープが紙製のものに対して、このマスキングテープは塩化ビニール製でできているのです。つまりエッジにケバが立たないことに加えて、伸縮性があり曲面によく馴染むという特性があるスグレ物です。お値段が高いのと最近入手難なのが難点でもあるのですが、スジ掘りのガイドとしても有効ですので、一番細いこの2mm幅のものは持っていても損はないマスキングテープです。

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ようやくデカールも貼り終わりました。

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デカールを充分乾かしている間にホイールなどの塗装を行います。
ホイールはゴールドで塗装するのですが、塗装の中で一番やっかいなのがこのゴールドではないかと思います。
塗料は樹脂に添加剤と溶剤を混ぜたベースに顔料が混ざっており、溶剤が揮発乾燥することにより顔料が定着するのですが、通常の色と異なりメタリック系の顔料は金属粉の光の反射によりその輝きを再現しています。ですので、筆塗りだとその粒子が表面に均等に定着しないために、所謂塗りムラの影響が大きく、そのために輝きが鈍くなってしまいます。美しくメタリック塗装をするためにはスプレー塗装をするしかないのですが、それでも表面に均等に粒子を定着させるためにはより一層の下地処理が必要となるのです。

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今回はホイールですので平面がないために実験的に三層塗装を行って見ました。それは一番隠ぺい力が高く、かつ表面が平準になるグロスブラックをベースに塗り、

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さらにゴールドを輝かせるためにスーパーシャインシルバーをスプレーし、

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最後にゴールドを薄めにスプレーして見ました。

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この塗装方法は正解で、下地となるシルバーのお陰でちゃんとメタリック感のあるゴールド塗装ができました。

次はいよいよ最終工程に移ります。

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ストラトスの苦難2 ~30分の逢瀬~

その日の朝、S氏はガレージからやっと帰ってきた愛車を引き出してガソリンを満タンにしてドライブに向かいました。そしてドライブルートの途中である福生から奥多摩に向かう奥多摩街道の路肩に、S氏は写真を撮るためにクルマを停めたのです。これまた私たちのようなクルマ好きにはごく自然な行為で、ましてやこれだけ長い間手許になかった愛車がやっと帰ってきたのですから、S氏の気持ちは痛いほどに分かります。クルマを停めた道路は本車線こそ片側1車線づつですが、本車線・路肩共にかなり幅広な上に歩道も路肩とは別に設けられた見通しの良い直線区間でした。そしてクルマから降りて反対側からカメラを構えて写真を撮ろうとしたときに…その惨劇は起こりました。

最初S氏には何が起こったのか分からなかったそうです。ブレーキのスキール音も一切なく、ドーンという音と共にデジカメのフレームの中から自分のクルマがなくなり、代わりに軽自動車が写っていたのです。
一瞬の後に事態が飲み込めました。路肩に停めたストラトスの真後ろから軽自動車が追突して来たのです。

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以下はS氏のリポートです。その場の状況はやはり当事者であるご本人の証言?が一番的確だろうと思います。

『まるでビリヤードを見てるような見事な追突で相手のクルマは私のクルマのあった位置に停まりエアバッグが開いてました。
乗っているのは運転手一人だけですが、ぐったりしてるようで中々降りてきません。
見ていると(エアバックのガスと思われる)煙が室内に充満しだしたので、火災の危険もあると思った私は外からドアを開け、早く車外に出るよううながしましたが、ハンドルに顔を預けるような状態でこちらを向こうとせず返事だけは返してました。

「腹が痛い」とか「大丈夫だからちょっと待って」

とか言ってたと思います。

とにかく救援をと思って携帯電話の電源を入れ(こういう時、常時OFFがたたりますね)110番したまさにその時、奥多摩方面から偶然にパトカーが走ってきたので、これを呼び止めて交通事故の手配を頼みました。

現場は福生警察署のすぐ近くだったので10分くらいで事故処理班がわらわら集まって来ました。この間私は路面にちらばったパーツをかき集めたり保険会社に電話したりしていたのですがふと振り返ると、ぐったりしていたはずの相手の運転手が車外に出て普通に警察官と話をしていました。

その警察官が私の方にやってきて簡易事情聴取をしたあと、

「相手さんね、飲酒みたいなんでこのまま署に連行します。あなたにも署での事情聴取にご協力頂きたいのだけれど。」

と告げられました。

協力はいいけれどクルマをなんとかしなけりゃならないことを話すと、警察官が相手の運転手に私に詫びを入れるようにうながしました。

が、相手の態度がへらへらしていたので、

「謝ってもらわなくていいが、弁償はしてもらいますよ。」とだけ返しました。

その後、警察官2人とパトカー1台残して相手の運転手と他の警察メンバーは撤収。
しばらくして相手のクルマも警察署にレッカーされていきました。』


S氏のショックはいかばかりだったかと思います。もちろん不幸中の幸いはS氏がクルマに乗っておらず、怪我がなかったことで、もし乗っていたら最低でも鞭打ちで首をやられていただろうと思うのですが、一方で自分の愛車が目の前で無残な姿になるのを見るというのも、我が身を痛めるのと同様に心が痛むであろうことは想像に難くありません。しかもこの事故に至るまでの時間はS氏が自宅のガレージを出発してから30分後のことだったのです。

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ここまで様々なトラブル(人的なトラブルも)を経験し、1年半の時間を費やしてメンテナンスを行った末にやっと乗れるようになって手許に帰ってきた愛車との逢瀬はたった30分で終わってしまったのです。

損傷の程度は写真で見ていただけるとお分かりの通り、通常の量産車であれば間違いなく「全損」という状態でしたが、S氏によれば治すという選択肢以外は考えられなかったとのことです。もちろん100%相手に非のある事故であったこともあるでしょうが、一方でこのクルマを治すことのできるであろう信頼できる主治医と出会っていたことは大きかったろうと思います。

警察での事情聴取を終えてS氏はクイック・トレーディングに連絡をしクルマを運ぶことにしたのですが、後に聞いたところによるとクイック・トレーディング側もクルマのダメージに関しては「見てみなければ分からない」との判断で、まずは運んで来てからというスタンスだったそうです。考えて見れば当たり前で、どんなに外観が無残な状態でもフレームやメカニカルパーツにダメージが少ない場合もあれば、一方でその逆もありますし、一見して何ともないと思っていても、プロがチェックすると大きなダメージを受けている場合もあるのです。

一方でレッカーで運ばれて来たクルマを見たクイック・トレーディングは驚きを隠せませんでした。仕事柄数多くの事故車を見て来てはいますが、メンテナンスガレージに入庫する事故車は修理を前提としていますので、全損事故に匹敵するような大事故の車両は、現場検証の後にそのまま解体業者行きになってしまうためにそうそうは入庫して来ません。それでもこのクルマの過去の経緯とオーナーのS氏の熱意を知っているために、クイック・トレーディングも修理をすることを決意します。それは「決意」と言って良い決断で、メンテナンスガレージとしての知識と経験を総動員して当たらなければならない修復作業となって行くのです。

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LANCIA Storatos HF 製作記7

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このキットはエンジンレスですので外から見えるエンジン部分が一部のみモールドされており、シルバーに塗るよう指示されています。エアブラシで塗り分ける方法もありますがマスキングが面倒ですし、それほど目立つ場所でもありませんので私の場合はフリーハンドで筆で塗ってしまいます。これもセオリーですがベースがラッカー系塗料で塗装されている場合は、その上に色を塗り重ねる場合はエナメル系の塗料を使用します。エナメル系の塗料はラッカー系の塗料を侵さず乾燥が遅い代わりに塗料の伸びが良く、ムラになりにくいという特徴があります。特にタミヤのエナメルクロームシルバーは本来、筆塗りには向かないとされているメタリック系塗料の中でも筆で塗った時の発色が素晴らしいもので、ちょっとしたメッキパーツのタッチアップなどに使用できて重宝する色です。

「弘法筆を選ばず」と言いますが、模型の塗装の場合筆はとても重要です。高価な筆が良いとは限りませんが、模型用に造られた筆は値段が高いほど確実に優れていますので、できる限り良い筆を使ったほうが結果としてトラブルも少なく製作がスムーズに進むと思います。

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マスキングなしのフリーハンドの塗装でもこの程度の塗装は可能です。(老眼との闘いはありますが・・・)

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過去の記事でパーツの切り離しについて書きましたが、クリアパーツの切り離しにはさらに神経を使う必要があります。クリアパーツはその材質が硬く、捻性がないために切り離しの際に欠けてしまったりクリア部分が白くなったりしてしまうのです。目立たない場所であれば良いのですが、写真のようなリアスクリーンの切り離しには秘密兵器があります。それはエッチングソーと呼ばれているもので、金属のエッチングでできた薄いノコギリです。
これを使ってゲートを切り離してやれば傷をつけずに切り離すことができます。

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塗装が乾いたら組み上げたユニットに塗装済みのパーツを合体させます。

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排気管はミニチュアモデルのアクセントとなるパーツだと思います。このキットのモールドは平均点だと思いますが、念入りにパーティングラインを整形し、さらにエンドの開口部を薄く削って塗装すると見栄えがするようになります。

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まずはサーフェイサーを吹いてからMr.メタルカラーのステンレスをスプレーします。Mr.メタルカラーは塗装してから磨くことにより金属色の表現ができるものです。

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塗装してすぐはこのような色調なのですが、

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乾燥後に柔らかい布で磨いてみました。上が磨く前で下が磨いた後です。正直それほどの違いは感じられませんでしたが、もっと面積の大きいパーツだとそれなりの違いが分かるのかも知れません(苦笑)
ただ磨かないよりも磨いた方が実感が出るのは確かですので、引き続き2本とも磨いてやることにします。

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さらにマフラーの焼き色を表現してみます。焼き色の表現はパステルを使うのですが、それはタミヤのウェザリングマスターで、これは化粧用のファンデーションと同じもので付属のスポンジ筆で擦り付けてやるのも化粧品と同様です。

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ベースに青焼けを表現するパステルをスポンジ筆で塗りつけて、その上から赤焼けを表現するパステルを塗るとステンレスが熱で焼かれた表現をすることができます。マフラーエンドの内側を黒く塗って完了です。
実際に取り付けると殆ど目立たないパーツですが、模型制作は自己満足の世界ですので(苦笑)こうした遊びもモチベーション維持に必要です(笑)

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引き続きフロントとリアの足回りを製作します。キットではショックとスプリングが一体でモールドされており、コイルスプリングを赤で塗るように指示されています。しかしそれだけでは実感が出ませんので、隙間に黒でスミ入れをしてみました。

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次にコクピット内で目立つのが消火器です。キットのモールドはそこそこシャープですので、そのまま使用することにしますが、取り付けバンドはモールドがゴツいので削り取って0.1mm厚のアルミ板を細切りにして巻いてやります。さらに演出で消火器に貼られている注意書きを再現します。このデカールはガンダムなどのモビルスーツモデル用に別売りされているディテールアップ用のデカールなのですが、書いてある文字が見えるワケではありませんので、それっぽいものを選んで貼ってやれば完成です。このガンダム用のディテールUPデカールは様々な種類があり、ボンネットの裏のCAUTIONラベルなどにも結構使えるのではないかと思います。

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ミニチュアモデルのもう一つのアクセントがコクピットです。このモデルはドアも閉まったままのクローズドで作成しますので出来上がってしまえば殆ど見えなくなってしまうのですが、それでも視界の良いフロントガラス越しに見えるコクピットはやはり「見せ場」の一つだと思います。

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まず最初に手を入れるのはシートベルトです。キットのシートベルトはデカールで再現するようになっていますが、シートベルトはフロントガラス越しに良く見えるために手持ちのエッチングパーツを使ってディテールアップすることにします。シートベルトアンカーを取り付ける場所はあらかじめ穴を開けておき、シートを接着する前にアンカーを取り付けておきます。エッチングパーツの切り離しには、エッチング用のハサミを使用します。小さなエッチングパーツはニッパーよりこうしたハサミの方が使いやすくて便利です。

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シートベルトは赤だと見栄えがするのですが、実車のBritax製シートベルトは黒ですので、あまり目立たないかもしれませんが、エッチング製のバックルとキット付属のBritaxのシールを貼ると随分と見栄えが良くなりました。ハセガワもモデラーがシートベルトを自作することを念頭においているようで、ちゃんとBritaxのロゴのみのデカールを用意してくれていました。

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キットのヘッドレストステーはプラスチックのモールドで表現されていますが、いかにも無骨ですので同じく金属線で置き換えてやります。切り離しに使用するニッパーは通常のプラスチック用のニッパーではなく、金属用のニッパーを用意してください。今回は切断面が表に出ませんが、金属の切断面はその後の整形が面倒ですので、切り口が美しくないとヤスリで削ったり面倒な作業が増えてしまいます。用意するのは0.8mm径のアルミ線で、ステーを削り取り、ピンバイスで穴を開けて差し込んでやれば完成です。

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キットのシフトノブはプラスチック製ながらシャープなモールドでシフトノブの形も的確なのですが、やはりメタル製のアフターパーツには敵いません。ここは一つ奮発して置き換えることにします。

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このキットの場合はあまり見えなくなってしまうのが残念なのですが、インパネ周りもストラダーレと異なり、ラリーカーらしく賑やかにメーターやスイッチが付いています。メーターはデカールで再現されていますので、丁寧に貼り付けてやります。また各種のスイッチも塗り分けてやれば完成です。一部のウォーニングランプはクリアー色で塗るように指定されていますが、クリアー色はそのまま塗っても色栄えがしませんので、ベースにシルバーを塗ってからクリアー色を塗り重ねるようにします。

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次はいよいよボディへのデカール貼りに続いて外装の仕上げを行います。

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ストラトスの苦難1 ~水漏れ地獄~

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人間には何か「持ってるヒト」がいるようで、それは必ずしも幸運であったり、かけがえのない友人であったりと良いことだけでなく、生きていれば悪い巡り合わせも持ってしまう時があるのではと思います。
しかし、その時を単に運が悪かったと終わらせてしまわずに、何かしらの教訓なり経験なりを得ることができれば、それは単に不運というだけでなく、その先の人生において確実に他のヒトと異なる何かを持って生きることができるのではないでしょうか。
クルマに関しても同様で、私たちのような地獄クルマを相手にする生活を送っているヒトと、順当に国産車を乗り継ぎ、子供ができればファミリーカー、子供が大きくなれば1BOXとあくまで生活の道具としてクルマと関わっているヒトと比較して見ると、前者のほうがクルマを通じて得ることのできる経験は、その良いことも悪いことも格段に多く、それらが人生を豊かにしてくれると信じているのですが、それでも一人のオーナーが一台の愛車に味わったここまでの艱難辛苦は聞いたことがありませんでした。

これから皆さんにご紹介するお話は以前にご紹介したC.A.E.ストラトスのその後のストーリーです。これまでのストーリーをお読みになっていない方はまず、これからのストーリーの前編とも言えますので、まずはお読みいただいてからこれからのお話を読み進めていただければと思います。

第一話:「ストラトス哀歌」
第二話:「ストラトス憂歌」
第三話:「ストラトス賛歌」
第四話:「ストラトス追補」

こうして流浪と艱難辛苦の末に主治医のクイック・トレーディングにやってきたこのC.A.E ストラトスでしたが、ようやくエンジン不調からも解放され、オーナーのS氏との蜜月がやって来るハズだったのですが、実際はそう簡単なものではありませんでした。
実は以前から問題を起こしていたラジエーターからの液漏れに悩まされていたのです。このラジエーターは過去に持ち込んだメンテナンスガレージにお願いしてワンオフで製作されたものであり、1年前に一度液漏れを起こして保証により交換されていたものでした。
ラジエーターの液漏れはホースからによるものと本体からによるものとに二分されます。ホースから漏れる場合はホースとクランプを交換すれば解決するのですが、ラジエーター本体の場合はその原因を特定して対策を講じておかなければ、今回の例のようにまた同じことの繰り返しになってしまいます。一般的な量産車の場合は、ラジエーターが経年劣化で腐食して漏れるケースがその殆どで、選択肢は純正の新品に交換するかアフターパーツのアルミ製などのものに交換すれば解決するのですが、今回のようなワンオフによる製作品の場合、しかも交換して1年で漏れを起こしたとなると、その原因は経年劣化による腐食ではなく製造上の問題か構造上の問題があると考えるのが普通です。しかし、実際は直面した問題に対する技術的なアプローチでは解決できない、コストを負う側と利益を得る側というお互いの立場による厄介な要素が絡んで解決を複雑にしてしまっていました。

S氏は当初にこのラジエーターを施工したメンテナンスガレージに再度相談することにしました。しかし、一度保証で交換しているという理由でその原因を究明することなしに、交渉は決裂してしまいます。本来であれば誰がそのコストを負うのかは原因を究明してからのハナシであるべきなのですが、ここでも再び以前と同じことの繰り返しとなってしまったのです。
仕方なくS氏は自力で原因を究明することにしたのですが、ラジエーターを水に沈めてラジエーター内にエアを充填すると案の定、2箇所から漏れていることが判明しました。この作業はそれほど手間のかかるものではありませんので、本来ならば製作したラジエーター屋とメンテナンスガレージが行うべき作業でしたが、S氏はすでにこのメンテナンスガレージとは関わりあう気力もなくなっていました。

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改めてラジエーター屋でチェックをしてもらったところ、おそらく原因は溶接不良で「簾」ができてしまったのが原因だろうということでした。しかし、S氏は原因がそれだけではないとの思いがありました。それはこのクルマの構造上の問題で、ラジエーターがリジットマウントであったことでした。通常の量産車の場合はモノコックのボディにフロントはメンバーで横方向の補強を行い、さらにその上に油脂封入ゴムやエストラマーなどでラジエーターに捩れや振動が伝わらないように取り付けているのですが、リジットマウントということは所謂「直付け」で、しかもこのラジエーターは横方向の補強のためのメンバーの役割も果たしていたのです。このためにラジエーター本体が走行中に捩られ、通常の製作方法で造られたラジエーターはどんなに溶接を上手に行ってもフレームの継ぎ目が剥れてしまい、液漏れを起こすのではと考えたのです。

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S氏はラジエーターの修復に加えて、フレームの補強とラジエーターをマウントする際の緩衝材も併せて追加することとしました。

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改良後のラジエーター。横方向の補強バーが追加されています。

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ラジエーターのマウント部にも緩衝ゴムを追加し、振動を吸収しています。

こうしてラジエーター本体も真鋳製で再製作し、ようやく液漏れのないラジエーターが出来上がりました。しかし、ここに至るまでクイック・トレーディングからクルマが戻ってから半年が経過してしまっていました。
それでもようやく普通に乗れるようになったC.A.E ストラトスにS氏は満足していました。手に入れてからというものここまで問題を解決して来たのですからその感慨もひとしおだったことでしょう。

ようやく手許に戻ってきた愛車を駐車場に駐め、S氏は本当に久しぶりに愛車とドライブに出かけることにします。そしてS氏を更なる悲劇が襲うことになるのです。

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あけましておめでとうございます

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明けましておめでとうございます。

旧年中に賜ったご厚情に感謝し、このグログをお読みいただいている皆さんのご多幸をこの場を借りてお祈り申し上げます。

昨年は本当に様々なことが降りかかってきた年でしたが、心機一転し社会的にも個人的にも新しい課題に向かって前向きに歩いていこうと思っています。
私たちの周囲を取り巻く状況はクルマ趣味にとっては逆風なのかも知れませんが、一方で昨年は私たちの年代が元気一杯で、仕事に、趣味にと人生を楽しんでいるのを発見することができました。
若い世代が閉塞感なのか環境なのかあまりホンキで遊んでいるように見えないのに対して、私たちの世代の遊び方は、昔の同世代と明らかに違っており、それは決して空元気でも何でもなく、ちゃんと個々の嗜好や哲学に基づいてホンキで一生懸命遊んでいるように見えます。確かに若い世代よりは多少は経済的な余裕もあるかも知れませんが、お金があるから遊ぶ。お金がないから遊べないのではなく、精神的な遊び心をちゃんと持っているように思います。どうやらそれは単に私のクルマ遊びの仲間だけの傾向ではないようで、他の趣味のジャンルでも同様の傾向があると聞きますので、それはやはり年代の問題なのかも知れません。

以前、遊びでいい加減なことをするヤツに、「バカ野郎!仕事じゃないんだぞ!もっとマジメに遊べ!」と一喝した老人の話を聞いたことがあるのですが、最近になってその意味が良く分かります。
私も以前にも増して、付き合いで遊んだり嫌々適当に遊ぶのではなく、今年も一生懸命、マジメに遊ぼうと思っています。

このブログも同様で、「書きたいから書く」を基本にして従来のテーマに加えて、時間の許す限り取材に基づくドキュメントも書いていきたいと思い、そうした記事もスタートしますので、そちらも楽しみにしていただければと思います。

さて、昨年末に達成した510,190アクセスですが、年末の慌しい時期と夕方の早い時間?ということが重なり、皆さん見逃してしまったようですが、1名の方からご応募いただきました。

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それはES30にお乗りの「ぽちょ」さんで、ずっとご愛読いただいている方からでした。

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私自身にとっても感慨深いカウンターですので、記念に大切にしたいと思います。本当に有難うございます。

3名分の記念品を用意したのですが、それらを全てぽちょさんに差し上げたいと思います。所謂「総取り」というヤツですね(笑)

恐れ入りますが、このブログをご覧になったら送り先をメールで教えてください。またすいませんが着払いの送料はご負担いただきますようお願いいたします。

さて、今年はどんな年になるのでしょうか。願わくば希望に満ちた充実した年にしたいものです。

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