柔らかいタッチで全体の雰囲気で魅せる作品がこの安藤俊彦氏の一連の作品でした。自分の愛車をこんなタッチで描かれたものをさりげなくガレージに飾ってみたいと思わせてくれました。
テクニカルドローイングの第一人者である大内誠氏の作品です。大内氏の作品はCADなどを使って描かれた「図面」のような透視画ではなく、アートとしての作者独自の作風を持ったものであることが、こうして並べて見ると良く分かりました。
会場で自分が先日まで格闘?していた田宮模型の1/24 ALFAROMEO Giulia Sprint GTAを見つけました。
作者はペーパークラフトやイラストで有名な溝呂木陽氏で、
氏のブログ は折に触れ参考にさせていただいていましたので、こうして実物を見ることができたのは本当に幸運でした。
パイピングなどの追加加工はされていなかったのですが、実はこうした「素組み」で作者の個性を出すのが一番難しいのです。プロのフィニッシャーの方の作品はその基本工作や塗装のクオリティが高く、作品の存在感が際立っていました。フルスクラッチと呼ばれる全く一から造り上げられたモデルであればともかく、市販されているプラモデルの完成品がアートであるのか・・・という疑問を持たれる方もいらしゃるかも知れません。しかし、プラモデルを一度でも真剣に完成させたことがある方であれば、最終的に全体として作者らしい雰囲気を持つ「作品」と、組み上げただけの「完成品」に明らかに差があることはお分かりいただけるのではないかと思います。
私自身のものは残念ながらただの「完成品」でしかなく、「作品」というアートのレベルには達していないと思います。まだまだ精進が必要なことがこの溝呂木氏のモデルを見て良く分かりました。
プラモデルと言えば、ボックスアートをご存知ではないかと思います。所謂「箱絵」というプラモデルの表に書かれている絵のことなのですが、余程家の中に絵画が溢れていたご家庭であればともかく、私のような一般庶民の子にとって初めて触れるアートがこのプラモデルのボックスアートでした。
現在でこそ、ボックスアートはアートとして認知されていますが、私の子供の頃はこれを芸術作品という認識はなかったと思います。しかし、インパクトという意味においては子供の私にとってはプラモデルの箱絵のほうがダ・ヴィンチのモナリザよりも遥かに大きかったのです。何故なら、モナリザは見るだけですが、プラモデルは自らの当時の全財産(と言っても良い大金)を投じて購入する価値があるかどうかを見極めるための重要な情報だったからなのです。そういった意味では子供一人一人が画商のバイヤーであったと言っても過言ではないでしょう。
この展示会でも何点かこのプラモデルのボックスアートの原画が展示されていました。
寺田敬氏による田宮模型HENSCHEL123のボックスアートです。田宮模型と言えばホワイトバックの箱絵が有名ですが、こうして背景も描かれたボックスアートはやはりホワイトバックよりも好感が持てます。
このホワイトバックには理由があり、昔、アメリカの消費者団体が、プラモデルの箱絵にキットに入っていない物が描かれていると、購入する子供がそれらもキットに入っていると勘違いするという無茶苦茶なクレームをつけたのです。最初にその理由を知った子供の私は、「アホか・・・」と思ったのですが、結果として素晴らしいボックスアートは次々と無くなり、単にホワイトバックにキットの完成品の写真が載っているだけの実につまらない箱絵になってしまったのです。
その悪条件?を跳ね返したのが田宮模型で、ホワイトバックで描かれた戦車のボックスアートは田宮模型のアイデンティティとなり、そのアート作品は見るものに背景を想像させる効果があり、現在は他のメーカーもマネをするほどとなっています。現在の田宮模型はAFVモデル以外はこうして背景も描かれたものとなっていますが、それでも背景は自然物だけという「お約束」はあるようです。
こちらは同氏によるハセガワの二式戦鐘馗で、田宮模型のような制約はなく、B-29の編隊を迎撃する鐘馗の姿が見事に描かれています。確かに背景が自然物のみというのも分かりますが、やはりそのキットのモデルが一番活躍しているシーンが描かれている方が見る者を感動させてくれます。
こちらはホワイトバックに描かれた川上恭弘氏による田宮模型のMINOLTA TOYOTAです。
これはこれで確かに「味」はあるのですが、個人的にはボックスアートはやはり一つのシーンを描き出して欲しいと思ってしまいます。
余談ですが、私が子供の頃に一番ボックスアートが優れていたのがアメリカのREVELL社のものでした。特に1/32スケールのものは箱そのものが大きかったこともあり、そのインパクトは子供にとってはとてつもなく大きいものがありました。
こちらは今でも強く記憶に残っている1/32スケールのP-40Eです。
日本が占領していたアリューシャン列島上空で、P-40Eの特徴を生かして上空から一撃離脱で損害を与え、被弾してアリューシャンの火山島に向かって退避する二式水戦に対して、再度反転して攻撃をしかけようとするP-40Eが見事に描かれています。
本来ならば空戦をする際にはドロップタンクを投下するものですが、相手がゲタバキ機(フロートがある水上機)であることと、洋上での戦闘故に帰還時の燃料を気にしたのか、P-40Eはドロップタンクを着けたまま攻撃しています。
P-40Eのパイロットの視線は煙を吐きながら退避する二式水戦に向けられており、日本人の私はどうか逃げ切って欲しいという気持ちにさせられます。
当時の国産のプラモデルは箱絵と中味がかけ離れているものも多かったのですが、REVELL社のものはキットそのものも素晴らしい出来栄えで、何度も模型屋に足を運んでは、この箱を眺めては「造った気」になっていたものです。
一度、機嫌の良い父親を模型屋に連れ出して買ってもらおうとしたのですが、父親はこの箱絵をアートして冷静に見ることができなかったようで、「このキットはダメだ!」と機嫌が悪くなってしまったことを懐かしく憶えています(苦笑)。
ちなみにこの二式水戦の色はその後も物議を呼び、実際にアメリカのパイロットの目撃証言があるものの日本側にはその記録がなく、現在もこのような塗色が本当にあったのか、単なる光線の加減でこのように見えたのかは定かではありません。
脱線してしまいましたが、再びAAFの展示会に戻りましょう。
クルマを描いたアートとして気に入ったのがこの渡邊アキラ氏の一連の作品でした。クルマの描写が実に的確であることに加えて、その背景との必然性というかバランスが優れており、このクルマはここに停めて欲しい・・・と思う場所が描かれていました。
プラモデルの箱絵であれ、雑誌の表紙であれ、こうした商業イラストはアートとしてはまだまだ世間に認めてもらってはいないのかも知れません。
しかし、こうしてギャラリーで展示会を開催したりすることにより一般の方の目に触れる機会が増えると、これらの作品が一般の方に「芸術」として認知している風景画や抽象画と同様に、作者の感性が描かれた対象を通じて映し出された一つの芸術作品として認知されるのではないかと思います。
第二回、第三回・・・とAAFの展示会が続いていくことを期待しています。
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クルマ好きの方であれば、自動車雑誌を講読されている方も多いのではと思います。それらの表紙はそれぞれの雑誌の「顔」としてイメージが差別化されており、ある雑誌は美しい写真を使っていたり、ある雑誌は素晴らしいイラストを継続して使っています。
それらのイラストは単に描写する対象物がクルマであるというだけだと思っていたのですが、「オートモビルアート」という一つのジャンルを形成していることを今回の展示会で初めて知りました。しかもそのオートモビルアートは単なるイラストレーションや絵画だけではなく、プラモデルのような立体造型なども含まれており、クルマを題材にしたアート全般を指しているということをこの展示会で初めて知りました。
普段はめったに美術館や画廊などには足を運ばないのですが、オートモビル・アート連盟の第一回作品展が市ヶ谷の
山脇ギャラリー で開かれることを知り、出かけてみることにしました。
明るいギャラリーの中に一歩足を踏み入れると、そこはどこかで見たことのある作風のイラストが展示してありました。一番驚いたのがその原画のサイズで、正直もっと大きいものだと思っていたのですが、一体どうやって描いたのか・・・と思うほどそのサイズは雑誌などの表紙のサイズに近いものでした。
CAR & DRIVER誌の表紙でお馴染みの岡本三紀夫氏のイラストです。アクリル絵具を使ったイラストは透明感があり、ボディの光の反射を効果的に使ってそのクルマの特徴を描き出しています。それにしても確かCAR & DRIVER誌は隔週で発行されていたと思うのですが、永年に亘り2週間に一度作品を仕上げるというペースは相当に厳しいと思います。
展示物の中で一番大きな作品はこのBUGATTIとFERRARI DAYTONAの二点で、特にDAYTONAのノーズの映り込みの表現は圧巻でした。
お目当ての一つは畔蒜幸雄氏のモデル展示でした。氏は昔から模型雑誌にその作例を掲載されていた方で、私も昔から「いつかこんな風に造れれば・・・」と憧れていたモデルフィニッシャーの方です。
氏が最も得意としているのがアメリカ車で、またそのベースキットが旧いジョーハンやAMTのキットですので、そのフィニッシュまでには幾多の技術が詰め込まれています。
意外に知られていないのですが、アメリカにおけるこうした自動車のプラモデルキットの起源はディーラー向けに製作されたディスプレイ用のモデルで、もともとは販売促進用に製作された非売品でした。それが市販されるようになって一般的になったのですが、当時のモデルはプラスチックの材質も現在とはかけ離れており、このように造り上げるためには相当な技術を必要とします。しかし、氏の作品はむしろその超絶な技術を感じさせず、「当たり前のように」一つのモデルとして表現されています。
それがどれだけ凄いことであるかは、同時に展示してあったベースキットを見れば良く分かります。
こちらはプラモデルとして市販されていたAMT製のSHELBY COBRA 289です。このキットは私も持っていたのですが、こんなにすんなりと完成させることはできないシロモノです。
そしてノーマークで驚かされたのが篠崎均氏のペーパークラフトで、以前にも雑誌などで紹介されたのですが、私自身は昔の雑誌の付録レベルね・・・と殆ど気にかけてはいませんでした。
ペーパークラフトの面白さはこうして二次元で印刷された紙のパーツを組み上げて三次元の立体物を作るということで、すでに印刷してあるのですから塗装する手間が要らないことに対して、紙の特性を考えながら折ったりクセをつけたりして仕上げなければならないという頭脳作業を要求し、子供の知育ツールとしては実に優れていると思うのですが、大人にはなぁ・・・と勝手に思い込んでいたのです。
ところが、この写真の紙パーツが、
こうなることを見て、これは子供のオモチャではないことを知りました。最早プラモデルに負けない再現度であることはご覧いただければ分かると思います。
こちらは
EPSONのサイトでダウンロード できるエプソン・ナカジマレーシングの各マシンですが、プリンターや用紙といった機材や材料を必要とするとは言え、タダでダウンロードできるのは凄いことだと思います。
プラモデルは材料を用意しないといけないし、塗装が面倒・・・という方はペーパークラフトにチャレンジして見てはいかがでしょうか。私もモデル製作の合間にチャレンジして見ようと思っています。
コンピュータグラフィックを使った表現として面白かったのがこちらの作品群でした。満川秀男氏の作品はディスプレイ上では3DCGとして表現でき、様々な角度から対象を見ることができます。
同様のジャンルでテクニカルドローイングというスケルトン画がありますが、前者がその名前の通り、クルマの内部構造を見せるための作品であることに対して、こちらは背景を含めてアート作品として製作されているのは新しいアイディアだと思いました。
正統派?の作品が斉藤寿氏の作品でした。個人的にこのタッチは好きですので、しばらく見入ってしまいました。
一口にオートモビル・アートと言っても様々なアプローチと作者の作風があることが分かります。次回も引き続き展示会場の模様と私が気に入った作品をご紹介したいと思います。
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今回のZAGATO Club Giapponeのイベントではコンクールデレガンスも行われたのですが、その栄えある一位に選ばれたのが、このO.S.C.A 1600GTでした。
ご存知のようにマゼラーティ兄弟がオルシにマゼラーティの経営権を売却した後に立ち上げたのがO.S.C.Aで、彼らが目指したコンペティテヴなクルマ造りはO.S.C.Aに継承され、一方のマゼラーティは高級GTカーのマーケットに進むことになります。
そのMASERATIのZAGATO代表作がこのZAGATO Spiderではないかと思います。222をベースに作成されたSpiderはスパイダーと言うよりコンバーチブルで、以前に仔細に検分したことがあったのですが(謎)、そのトップはとても一人では開閉できないほど重量がありしっかりとしていました。
さらに222ベースのスペシャルなクーペがKARIFです。敢えてノーマルの222ではなくこのKARIFを選択するのは相当な趣味人だと言えます。
さて我が(笑)LANCIAですが、こちらはFlaminia Sportです。Flaminiaはランチアの高級セダンとして開発されたのですが、そのホイールベースを短縮しZAGATO得意のアルミボディが架装されています。このサイズのクルマではあまり必要があったとは思えないのですが、ZAGATOのデザインアイコンになったダブルバブルがこのルーフにもデザインされています。ちなみにFlaminiaには様々なボディバリエーションがあり、BerlinaとCoupeはピニンファリーナが、GT、コンバーチブルはトゥーリングがデザインしていました。
LANCIAのZAGATOと言えば、一番ポピュラーなのがこのFulvia Sportではないでしょうか。小型セダンとして開発されたFulviaは後に自社デザインのCoupeを開発し、ラリーで活躍したのはご存知の通りですが、さらにZAGATOがデザインしたスペシャルモデルがこのSportです。当初はアルミ製のボディで製作されたのですが、後にスティール製に変更されました。前述したようにZAGATOが少量量産を受託するべく経営方針を変更する過渡期のモデルです。
こちらは前期型です。最初の700台がアルミボディであったと言われていますが、この個体がアルミ製かどうかは分かりませんでした。
LANCIAにおけるZAGATO最後の量産モデルがこのHyenaです。HyenaはDeltaをベースにアルファ・ロメオのJunor-Zのような枯れることのないデザインを・・・という要求から生まれたモデルでしたが、量産するにはそのコストが嵩みすぎてしまい結果として希少車となってしまったモデルです。
ちなみにHyenaのリアガラスはSZ(ES30)と共通で、両モデルのオーナーが補修部品としてお互いの名前で探し回ったという逸話があります。
ZAGATOはイタリア車のデザインばかりを手がけていたわけではありません。一番有名なのがASTON MARTINで、その中でもDB4GTZがあまりに有名ですが、ASTON MARTINは歴代のモデルにZAGATOデザインのものがあります。
ASTON MARTINのV8をベースに製作されたのがこのV8 ZAGATOです。Devid BrownによるASTON MARTINで採用された下膨れのフロントグリルも同じくZAGATOデザインのアイコンとなり、その後のASTON MARTINのZAGATOデザインに継承されることとなります。
そのフロントグリルがさらに過激に?なった例がこのDB7 ZAGATOです。単品パーツでみると下品この上ないのですが(苦笑)、不思議とASTON MARTINのボディとの組み合わせであれば優雅な中に獰猛なイメージが加わり、実に魅力的となります。ちゃんとダブルバブルのルーフがこのモデルがZAGATOデザインであることを主張しています。
ZAGATOは積極的に日本のメーカーともビジネスを拡大しようと考えていました。特にトヨタとのコラボレーションは有名で、その代表作がこのTMI・VM180 ZAGATOです。トヨタは本業の大量生産モデルとは別に、こうした少量生産のスペシャモデルをトヨタ・モデリスタ・インターナショナルが企画し、VISTA店を販売チャンネルとして通常のトヨタ車のモデルでは飽き足らない顧客に向けて提案していました。
MR-SをベースとしたこのモデルはAピラー、ガラス、ドアミラーを除く全てがZAGATOによりデザインされており、それまでのZAGATOとのコラボモデルとは一線を画す、よりZAGATO度の高いモデルとなっていました。
さすがにここまでオリジナルのMR-Sと異なってしまうと、通常のMR-Sの生産ラインでは製造できないために、実際の生産はトヨタ・テクノクラフトが担当したのですが、当然コストは嵩み、販売的には成功とは言えませんでした。
トヨタであればこの程度で止めておけば・・・という例がHarrier ZAGATOです。同じくモデリスタの企画で実現したのがこのHarrier ZAGATOで、生産はトヨタ自動車九州が一般のHarrierの製造と共に担当しました。
トヨタ自動車九州(現在はレクサス工場)はかつて仕事で関わったことがあり、このHarrier ZAGATOの製造に関わる逸話には事欠かないのですが、テクノクラフトと異なり、一般の製造ラインの中でこのモデルを製造するのは相当大変だったようで、担当した社員にとっては「思い出したくない」モデルだそうです(苦笑)
一方のNISSAN車をベースにしたものはあの故桜井氏が手がけたAUTECH JAPAN社の企画で製造されました。代表作はAUTECH ZAGATO Stelvioなのですが、レパードをベースに製作されたStelvioは国内生産ではなくイタリアで製造され、日本へは輸入車扱いとなっていました。商業的には決して成功とは言えなかったのですが、その第二弾として企画されたのがこのGaviaです。同じくレパードをベースにしてはいるものの、Stelvioと比較すると随分とコンベンショナルにまとめられており、ルーフのダブルバブルがZAGATOデザインであることを主張しています。
会場の外でも様々なグループが見学に来ていたのですが、こちらの駐車場も見ていて飽きませんでした。
今回のイベントでは、ZAGATOのデザインコンセプトをメイクスを超えて横断的に見ることができました。考えて見ればこれは貴重なことで、特定のカロッツェリアの作品だけをメイクス、年代を超えて見ることができる機会は滅多にありません。しかもそれは博物館に飾ってあるクルマではなく、生きて走っているクルマ達でした。
願わくば、これからもこのイベントが継続して、さらに他のカロッツエリアの作品も同様に集まることができるイベントがあれば素敵だなと思います。
現在、カロッツェリアは真冬の時代であり、これからの時代をどう生き抜いて行くかを模索している状態だと思います。しかし、クルマがEV化する過程の中にあっても、そのメカニカルコンポーネンツが成熟するとともに、より一層デザインが重要になってくると思います。クルマが白物家電ではない以上、そこにオーナーが個性や美学を求めるのは当然で、カロッツェリアが活躍する余地はまだまだあると信じています。
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Club ZAGATO Giapponeは珍しいカロッツェリアのワンメイククラブです。考えて見ればイタリア車そのものはメイクス毎にその歴史に裏付けられたアイデンティティを持ち続けており、それがスポーツモデルから何の変哲もないセダンに至るまで共有されているのが魅力なのですが、さらにカロッツェリアはその特徴をより鮮明に打ち出さなければ他社との差別化が図れませんから、現在生き残っているカロッツェリアは他社と異なる独自の魅力を持っているが故に生き残っていると言えるでしょう。
私たちがPININFARINA、BELTONE、ZAGATOといったカロッツエリアのデザインしたクルマを、例えチーフデザイナーが異なっていたとしてもひと目で見分けることができるのは、それが各社のデザインに関する伝統的な独自性を持っているからで、その中でもZAGATOがこうしてそのメイクスや年代を超えて連帯することができるのは、ZAGATOのデザインコンセプトが明確でしかも魅力に溢れているからに他なりません。
私も過去のブログ記事でZAGATOのことを書かせていただいています。
その後のザガート と題した記事では、ZAGATOの1970年代以降の苦難の時期のことを。そして、
未来への提言 と題した記事ではTZ3を中心に最近のZAGATOについて書かせていただきました。
そして、今回のミーティングで様々なZAGATOを見ることができ、ZAGATOデザインに共通するその魅力を感じることができました。これからお伝えするこの記事で少しでもそれを感じていただければと思います。
まず最初はMORETTI 750 Sport ZAGATOです。MORETTI社は1991年に廃業してしまったのですが、一般的に知られているFIATの特装車を製作する前は独自設計の量産車やレーシングモデルの開発を行っていました。この個体はそのMORETTIが独自にクルマを製造していた時代のもので、フレームからエンジンに至るまで全て自社の設計で、このZAGATOボディはワンオフで製作されたものです。しかも製作されると同時にMille Migliaに参戦したヒストリーを持つ希少車中の希少車です。
あまりに有名なFIAT Abarth 750です。AbarthとZAGATOは技術的に補完関係にあり、Abarth Magicと呼ばれた小排気量のエンジンを限界までチューンし、「大排気量のクルマをカモる」という目的のためには、空力特性に優れた軽量なボディワークが必須で、ZAGATOの持つエアロダイナミクス技術とアルミボディの軽量化技術とがコラボすることにより歴史に残るモデルを輩出することができたのです。
こちらはルーフの膨らみがないモデルです。ZAGATOは後のALFAROMEO Junior-ZやES30を除くと、その殆どが手作業による少量生産により製造されたモデルが殆どですので、様々な仕様が存在するのが特徴です。ある意味、全てがワンオフと言ってよいでしょう。
ZAGATOと言えばこのALFAROMEO SZをイメージする方も多いのではと思います。アルファ・ロメオがスペシャルモデルとしてレース参戦を目論んでいたGiulietta Sprint Specialeに対してユーザーの依頼がきっかけで製造されたこのSZはZAGATOの得意とする軽量故にGiulietta SSよりも性能が良くなってしまい、結果としてメーカーの公認モデルとして製造されることになりました。図らずもZAGATOとしては画期的な大量生産となったSZですが、それでも生産規模は6年間で180台ほどでしたから充分製造は可能で、殆ど手造りに近い製造プロセスはそのままでした。
SZはさらに発展し、軽量化のために鋼管をトラス状に組み合わせたチューブラースペースフレームを採用したTZへと移行して行くのですが、空力性能もさらなる進化を遂げます。
SZの最終モデルに採用されたコーダトロンカがそれで、従来のラウンドテールのボディと区別するために後にSZ2と呼ばれることとなりました。SZ2は生産台数が30台程と言われており、SZに比べるとさらに個体差が大きいと言われています。
このSZ2に関しては過去のブログ記事でALFAROMEO Sports Collectionの中で2度にわたってご紹介していますので、興味のある方はそちらも併せてお読みいただければと思います。
ALFAROMEO Sports Collectiion 37 ALFAROMEO Sports Collectiion 70 SZからTZに進化したZAGATO製のアルファ・ロメオでしたが、ビジネスとしてはあまり嬉しいこととは言えず、TZはストリートユースには不向きなためにコンペティション用のみの少量生産に留まることとなりました。そのためにZAGATOは路線変更し、アルファ・ロメオに高級スペシャルモデルの製造を提案します。その提案から生まれたのがこの2600SZで、当時のハイエンドモデルであった直列6気筒エンジンを搭載した2600シリーズをベースに、エルコーレ・スパーダのデザインによるクーペボディを架装したのがこの2600SZです。しかもZAGATOは量産性を考慮し、それまでの軽量化技術のキモであったアルミボディではなく、スティール製のボディで製造を提案します。実はこの変更はZAGATOにとっては戦略的な変革で、それまでの性能アップを目指したボディの軽量化だけでなく、ある程度の量産が見込めるラグジュアリーなスペシャルモデルを受託製造することを期待してのことでした。結果として2600SZは2年間で105台が製造されたのですが、この経験は後のJunior-Zへと引き継がれることとなります。
次回はアルファ・ロメオ以外のZAGATOモデルをご紹介していきましょう。
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昔から企業30年説というのがあり、それは平均的な企業の寿命は30年で、それを超えて生き残る企業は何らかの進化や革新を遂げているというものです。もちろんその寿命を超えて成長を続ける企業は数多くありますが、確かにそれらの企業も引き継いでいるのは社名だけでその業容は創業時から全く異なっていたり、組織変革を成し遂げて生まれ変わった末に現在の姿があったりで、必ずしも創業のままずっと存続している企業はないでしょう。
自動車産業を見たときにも今まで数多くの企業が創業しては消えていきました。現在存続している会社よりも圧倒的に消えていった会社の方が多いのですが、そう考えると今年100周年を迎えるアルファ・ロメオは厳しい自動車業界の中にあって奇跡的な会社ではないでしょうか。
さきほどの30年説をあてはめて見ると、確かにアルファ・ロメオは1910年に創業してから経営破たんによる国有化とFIATグループへの統合を経て現在があるのですから、二度(三度?)生まれ変わったと考えるべきで、決して順風満帆な100年ではありませんでした。
このようにアルファ・ロメオの歴史を見ると、数ある自動車メーカーの中でも極めて波乱万丈な歴史を持つ会社であることが分かります。むしろ、
これが他の国の他の会社であったなら当の昔に消えて無くなっていたのではないかと思います。 アルファ・ロメオにはそのブランドを残したいと思う魅力があり、世界中にそのファンがいるからこそ100周年を迎えることができたので、決して100年に亘り利益を出し続けたからではないのです。
だからこそ、この100周年を祝うために世界中のアルファ・ロメオファンが「自主的に」様々なイベントを企画しているのでしょう。本国での100周年の模様が伝えられるにつれ、日本でももっと盛大に何かできないのかと思っていたところ、5月のALFAROMEO DAYに続いて先日の東京コンクール・デレガンスの会場でインポーター主催の「正式な」イベントが開催されました。
しかし、何だかちょっと物足りないと思っていたのは、その二つのイベントが100周年を祝うためだけのものではなかったからかも知れません。ALFAROMEO DAYは100周年でなくても毎年開催されていますし、正式なほうのミーティングも誰もが参加できるものではなく、参加者限定のイベントでしたし、どちらかと言うと東京コンクール・デレガンスに間借りしたようなイメージがあったのです。
そんな折に聞こえて来たのがこのイベントの情報で、それはアルファ・ロメオオーナーの方が「自主的に」企画したイベントで、しかも100周年をお祝いするためだけに開催されるとのことでした。
イベントの名前は
A.L.F.A.100周年記念イベントinソレイユの丘 というもので、当初の参加目標200台という控えめな数字は早々にクリアし、最終的にはもっと多くのクルマが集まるのではないかと思います。
このイベントのオーガナイズの素晴らしいところは、そのきめ細やかな盛り上げ方で、通常はイベント概要の発表から申し込み受付をして当日を迎えるのが一般的であるのに対して、参加者を順番にWebで紹介したり、増えていく協賛企業をどんどん追加したりして当日に向かってうまく盛り上げているのです。こうしたイベントの運営方法は参考にさせていただきたいなと思いますし、実際にどんどん増える参加者からもこの誘導方法が功を奏しており、このイベントが成功するであろうことが確信できます。 ということで、私も参加させていただくことにしました。最終的に何台のアルファ・ロメオが集まるのか定かではありませんが、まだまだ申し込みを受け付けているようですので、興味のある方は是非参加してみてはいかがでしょうか。
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