いよいよ最終仕上げですが、
1/72スケールの大戦機製作上の最大の問題が風防(キャノピー)の塗装ではないかと思います。
現代と違って昔はプレキシガラス(アクリル)の素材や成型技術が発達しておらず、キャノピーは平面に近い状態のガラスをフレームで組み上げた状態でした。
戦闘機にとって、敵よりも先に相手を見つけるためには、コクピットからの視界は重要ですので、このフレームは視界の妨げになり実に邪魔なものなのです。
第一次世界大戦で活躍した複葉機からよりスピードの出る単葉機の時代になっても、パイロットはその視界の悪さを嫌い、例え風雨に晒されたとしても風防のないコクピットを好んでいましたし、現代のようにレーダーで敵を捕捉するジェット戦闘機でさえ、目視による会敵は重要で、その視界を確保するためにフレームのないドーム型のキャノピーにパイロットは半身を晒すほどの姿勢で乗り込んでいます。
実例をご紹介しましょう。第二次世界大戦の戦闘機の中でも最良の中の一機である米軍のP-51 マスタングですが、その初期型であるB/C型までは写真のように風防はフレームで囲われており、さらにファストバックと呼ばれる後方視界が限られてしまうタイプのスタイルでした。

当然、この風防はパイロットには不評で、機体を供与されたイギリス空軍は、独自にその中央部をバブル型のタイプに改良しました。これは設計したロバート・マルコム技師の名前を取って「マルコム・フード」と名付けられたのですが、パイロットにも好評であったために米軍も配備済の機体を含めてこのタイプに改造しました。

そして後の発展型であるD型では完全にバブルタイプのキャノピーに改良され、パイロットの視界は劇的に改善されることになりました。日本では最後まで対応できるアクリル材料とその加工の技術がなく、このバブル型のキャノピーを採用することができなかったのです。

さて、零戦のキャノピーのフレームは機体色で塗られていましたので、モデルではそれを塗り分ける必要があります。
これにも幾つかの方法がありますが、基本的には細かくマスキングするかフリーハンドで塗るかに大別されます。マスキングも当然、この零戦のような細かいフレームで構成されている場合は面倒で、特に1/72スケールともなるとあまりに細かくなりすぎてしまい、マスキングテープをカットする際に傷をつけてしまったりする失敗の可能性も大きくなります。

幸いなことに・・・というか、きっと意図的なのだと思いますが、このキットのキャノピーはフレームのモールドが凸型で再現されていますので、今回はマスキングをせずにフリーハンドで筆塗りしてみようと思います。
面相筆でフレームを塗る場合はまず下部周辺のフレームを塗ってから、前部、中央部、後部とブロック毎に塗るようにします。

少々はみ出しても塗料が乾燥した後に、爪楊枝の先をデザインナイフで斜めに削って極細のヘラを作り、それにシンナーを含ませて削れば、ハミ出した塗料を剥がすことができますので、あまり怖がらずにむしろエッジが波打たないように心がけながら塗装します。

クリアパーツですので接着には充分注意して、サラサラタイプではない普通の接着剤をチョンチョンと点付けして接着します。もちろん一番良いのは、前回ご紹介した水性の速乾クリアの接着剤を使うことですが、わざわざ購入しなくても、通常のプラモデル用の接着剤でも問題はありません。

曲がってしまっていたプロペラは瞬間接着剤で矯正して組み立てます。プラスチック樹脂の材質もメーカーによって個性があり、このAIRFIXのプラスチックは適度な柔らかさを持っているのですが、それが仇になっているのが細かいパーツで、今回のケースの様に曲がってしまったり、エッジなどのモールドが少しダルな成型になっています。この辺りもメーカーの個性が反映される部分でしょうが、昔からAIRFIXのプラスチックはヤスリやペーパーなどで整形しやすかったのに対して、当時の国産のキットのプラスチック樹脂は硬く、部品をランナーから切り離す際に細かな部品はすぐに折れてしまったりしたので、そんなところでも「舶来上等」を実感したものでした。
最後に翼端灯を塗装して、後は主脚、尾脚、着艦フック、アンテナ、ピトー管などの小物パーツを取り付ければ完成なのですが、ナンと説明図に主脚の取り付け角度が指示されています。

こんな注意書きがあるキットは初めてですが、考えてみると、そこまで厳密に角度を調整しなくとも、出来上がったモデルを着陸姿勢でディスプレイする場合に、この角度が狂っていると随分とイメージを悪くしてしまいますので、参考値としてでもこうして表示されているのは有難いことだと思います。しかし、分度器で角度を測ってまで取り付けるヒトはいるのでしょうか・・・(笑)
キットには「増槽」と呼ばれる落下式の外部燃料タンクも付属していますが、内地の練習機ですので今回は取り付けないことにしました。
そしてようやく完成です。
今までの製作中の写真では1/72スケールの大きさが実感できなかった方もいらっしゃると思いますので、参考までに横に缶コーヒーを置いて見ました。これでどの位の大きさか分かっていただけるのでは?と思います。

1/72スケールはこうしてお気楽に造ってコレクションをするには最適なサイズですが、やはり小さいために細部の再現には限界があり、それを気にし始めると追加加工をして見たり、別売りのエッチングパーツやレジンパーツなどを使ってみたくなるのも人情だと思います。今回は筆塗りで塗装し、最小限の工具で組み立てるということをテーマにして製作しましたので、一切の加工はせずに、全てキットのパーツをそのまま使って組み上げました。危うくピトー管は金属パイプと金属線を使って置き換えたくなりましたがぐっと堪えました(笑)
そして造り上げて見た感想ですが、私のような老眼モデラーが(苦笑)、1/72スケールの飛行機を造るのであれば、一機をあまり深追いして追加工作をせずに、むしろ様々な機種を数多く作って楽しむ方が精神的にも健全ではないかと思います。
その意味でも、AIRFIX社からこれから発売されるであろう新金型のキットは、パーツの精度も良くストレスなく組みあがりますし、筆塗りに適した適度な深さのスジ彫りと上質なカルトグラフのデカールに加えて、爆安価格ですのでオススメできるキットだと思います。



筆塗りの塗装でも、機体表面に様々な技法を使って「使用感」を表現することにより、このような小さなキットでもオモチャっぽくなるのを避けられたのではないかと思います。


写真では分かりにくいのですが、零戦の特徴でもある主翼の「捩り下げ」と呼ばれる微妙な角度もちゃんと再現されています。正直言って、これには本当に驚きました。AIRFIX恐るべし・・・です(笑)。


しかしながら、こうして書くのは簡単ですが、やはり
筆による塗装は塗料の濃度調整や筆運びなど、多くの部分に「手の慣れ」が必要で、しばらくプラモデルを造っていないとこうした手先の感覚が鈍ってしまい、再び思い出すまでには失敗を繰り返すこととなってしまいます。
様々な分野の職人の手先が超人的な技を生み出しているのは、決して才能や訓練だけではなく、毎日の作業でその手が慣れているからで、ブランクが開いてしまうと職人もやはりその手先の感覚を戻すのに苦労するそうです。
久しぶりに筆塗りをやって見ましたが、やはりプラモデル造りの原点は筆塗りだと思います。私たちの年代のモデラーは皆、お小遣いをためて塗料を買って、はみ出た接着剤でベトベトになったプラモデルに、学校で使う図工用の丸筆一本で塗料をベタベタと塗るところから始めたのです。
よく、「昔はよく造ったけどなぁ・・・」と嘆いている「引退モデラー」の方がいらっしゃいますが、昔と比べるとキットも工具も確実に進歩しています。不思議なもので、自転車のように一度身体が覚えたその感覚は、僅かのリハビリ?と練習で取り戻せますので、その
「手の感覚」さえ戻れば確実に昔よりも上手く造ることができるはずだと思います。
今回のAIRFIXのキットと基本的な工具や塗料を買い揃えても、総額で3,000円もあれば充分でしょう。
老眼だから・・・とアキラメずに、良く出来たこのような簡単なキットからまた造り始めてはいかがでしょうか?
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模型製作の続きの前に、読者の方から海外には日本のような味方識別の方法はなかったのか?というご質問をいただきましたので、前回の記事でご紹介した味方識別帯のハナシをしたいと思います。
確かに、敵か味方かを識別する問題は交戦国双方の課題であったろうと思いますが、イギリス機の一部に主翼前縁に色を塗った例があるくらいで、恒常的なカラーリングの例はありませんが、例外的なカラーリングがInvasion(侵攻) Stripeと呼ばれる黒と白のストライプです。

写真はイギリス空軍のスピットファイアに描かれたInvasion Stripeですが、これは連合軍のヨーロッパ大陸への大規模な反撃作戦のきっかけとなったノルマンディ上陸作戦に参加する機体に描かれたものです。様々な機種が多数この作戦に参加したために、地上から味方に攻撃されないためや空中での同士討ちを避けるために、作戦期間中限定(ヨーロッパ大陸に侵攻するにつれて引き続き残された例もあり)で描かれたカラーリングです。確かにこれだけ派手だと目立ちますので間違いも少なかったでしょうが、結果は地上の味方を鼓舞するという成果はあったものの、ノルマンディ上陸作戦当日に反撃したドイツ空軍機は2機のフォッケウルフFw190のみで、これだけ周到に準備したにも関わらず、空中での同士討ちはおろか、空中戦そのものがなかったというのは皮肉な史実です。
さて、本題に戻りますがクルマのモデルと違って、飛行機のモデル(特に軍用機)は単に綺麗に色を塗っただけでは、いかにもプラモデルといった感じになり、それが小さいモデルであっても全体的にのっぺりと見えてしまいがちです。
したがって、仕上がりでより実感を高めるためには、
クルマのモデルの塗装とは異なったアプローチが必要となります。

まずは
機体上面の退色表現です。前述したように、この機体は工場ではなく基地で整備員の手で機体上面色を塗装されたように思われます。すなわち、工場と違ってそれほど念入りには塗装されなかっただろうと想像できますので、紫外線で退色した表現をするために主翼上面と水平尾翼のところどころを1500番~2000番程度の細かいペーパーで削ってやります。そうすることによって、最も紫外線が当たる翼の上面に最初に下地として塗ったカーキグリーンを部分的に露出させることができます。
南方のラバウルなどに配属された機体だと、相当退色が激しかったと思われますが、内地配属の機体ですのであまりやりすぎないように止めます。
ペーパーで機体表面を削りますので跡が残りますが、これはこの後の工程である程度修正できます。それでも削る箇所は最小限に止めるようにします。


次にエナメルシンナーにレッドブラウンをベースにフラットブラックを少し混ぜた塗料を垂らす程度に薄め、そのシンナーを大き目の平筆で機体の進行方向(つまり機首から後方へ)に塗ります。これはウォッシングという技法で、
機体の汚れを表現する方法です。最初は色がついているかいないか程度に薄めて、物足りないようであれば少しずつ色を足して塗り重ねるほうが良いでしょう。
ここまで出来上がったら残った注意書きのデカールを貼ります。全て貼ってからウォッシングをしても良いのですが、小さなデカールはウォッシングの際に剥れてしまうリスクがありますし、折角の繊細な注意書きがウォッシングのせいで隠れてしまうのも残念なのでこの順序としました。どのデカールを先に貼っておくかはその大きさをベースに決めれば良いと思います。

主翼上面に貼る赤い警戒線はデカールでは「ロ」の形になっていますが、貼るときに曲がってしまいますので、「ロ」ではなく「コ」状にカットしておきます。私はそれを怠って左側が少し曲がってしまいました(泣)。また貼ってから気づいたのですが、右翼側にだけ記載のある「足踏」という文字が天地逆になっています。やはり日本語の読めないスタッフが校正をしたのでしょうから仕方ないでしょう(苦笑)。もしこの記事をご覧になって製作される方は、予め文字部分を切り取っておいて逆に貼ってください。(全く目立ちませんが・・・)
他の注意書の中にもアヤシイものもありますが小さくて読めませんし、単調な塗装の機体が少しでも賑やかになりますので一応指定どおり貼ることにします。
さらにこのキットの最大の特徴でもある良くできたスジ彫りにスミ入れをして
パネルラインを強調します。
機体上面にはブラック、下面の明灰白色部分はブラックだとハイライトが付きすぎますので濃いグレーでスミ入れをすることにしました。


スミ入れには以前ご紹介したガンダム用の
リアルタッチマーカーを使用します。リアルタッチマーカーはスジ彫りのみを残して綺麗に拭き取るのではなく、すこし汚れを残し目にして拭き取ります。ちょっとやりすぎの感がありますが、この辺は好みの分かれるところだと思います。

加えて、
塗料が剥げてジュラルミンの地肌が露出した感じを表現するために、面相筆でエナメルのクロームシルバーを部分的にポツポツと塗って行きます。これはチッピングという技法なのですが、主翼上面の20mm機関砲の装填ハッチ、カウリングの継ぎ目、主翼付け根の搭乗員が踏む部分、地上で機体の向きを変えるために整備員が押す水平尾翼の前縁など、実際に塗料が剥れやすい場所を想像しながら、規則的にならないように注意して自然な感じを出すように表現します。今回は内地の機体であることから控え目にしました。

さらに表現を加えて行きます。
この当時の日本の航空燃料は相当品質の悪いものであったと思われます。またエンジンの潤滑油やガスケットも同様で、ある程度のオイル漏れもあったでしょう。従ってかなり排気管からススが出たと思いますので、
排気管からの排気汚れを表現します。これまた以前ご紹介したウエザリングマスターを使います。このときに注意すべきは主脚カバーで、飛行中はカバーが閉まっていますので、後で忘れないようにカバー側にも同様に汚れを表現します。
最後に主翼の20mm機関砲を発射した際に
銃口と薬莢排出口から出る汚れも併せて表現して見ました。
この機体は訓練機でしたので、実際に実弾発射訓練を行ったかどうか定かではありませんが、教官が操縦して防空戦闘にも出撃したようですので、ここは敢えて汚して見ました。
このように
機体表面に起こる様々な現象を再現することにより、モデルとしての実感がどんどん増して行くと思うのですがいかがでしょうか。
ちなみに、航空燃料といってもレシプロ機の場合は基本的には自動車用と同じガソリンで、最低でも現代のレギュラーガソリン程度のオクタン価がないと、エンジンが不調になったりして所期の性能が発揮できなかったようです。当時の標準的な日本の航空燃料のオクタン価は91で、後に開発された高性能エンジンはオクタン価100を前提として設計されていたそうですが、敗戦時までこのオクタン価のガソリンが安定して供給されることはありませんでした。
事実、戦中戦後に米軍に鹵獲接収された日本軍の軍用機を性能評価のために、米軍側できちんとメンテナンスし、ハイオクタン燃料(140オクタン)を使って試験飛行をしたら、その性能は全てにおいて日本で把握していた最高性能を上回ったと言われています。

例えば、当時米軍が世界最高という自信を持っていたP-51D マスタングに対して、陸軍の四式戦(キ-84)「疾風」はこのハイオクタン燃料を入れて高性能プラグ(米軍機の標準プラグ)に交換したところ、最高速度は高度6,000mにおいて687km/hをマークし、これはP-51Dより速かったと言われています。
また操縦性能も良好で、総合評価で米軍のテストパイロットにより、「日本の戦闘機のベスト」と評価されました。
その当時の国力の差を思い知らされるもう一つのエピソードをご紹介しましょう。

それは同じく陸軍の三式戦(キ-61)「飛燕」についてです。この戦闘機は日本では珍しく空冷エンジンではなく液冷エンジンを装備していました。液冷エンジンとは殆どの自動車と同様にラジエーターを装備しエンジンを冷却するタイプのエンジンですが、当時の同盟国であったドイツでメッサーシュミットMe109に搭載されていたダイムラー・ベンツ製のDB-601というV型12気筒エンジンをライセンス生産することにより搭載していました。しかし、物資不足からクランクシャフトの材質にニッケル合金を使うことができず、さらに精密工作機械がなかったことから、本来ならば型鋳造で量産するべきクランクシャフトを手造りでの切削加工(旋盤加工)で製造せざるを得ず、結果として所期の性能が発揮できない機種となった上に、エンジン製造が間に合わず、工場では「首なし」機体が溜まる一方という体たらくだったそうです。ちなみにこの「飛燕」も米軍のテストでは好成績を収め、「メッサーシュミットよりも良い」という評価を受けました。
ちなみに、このDB-601エンジンは同じくイタリアでもライセンス生産され、その生産を担当したのがアルファ・ロメオで、レースでの宿敵であったドイツのエンジンを製造することが余程悔しかったのか、アルファ・ロメオのエンジニアはさらなるチューニングを施し、アルファ・ロメオ製のDB-601は、オリジナルが1,100hpであったことに対して1,175hpを発揮したと言われています。
結局、戦争の勝敗は局地的な戦闘の勝利によって決まるのではなく、兵器ひとつを取って見ても、こうした要素技術や材料の品質などの積み重ねによる双方の国力の差で決まるものなのでしょう。仮にフェラーリのようなスーパーカーを設計し、製造することができても、粗悪な部品と組み立て技術に加えて(かつてのイタリア車のようなハナシですが・・・)、品質の劣る燃料を入れてしまえば、とてもマトモに走ることもできす、結局はナニゴトもなく走る軽自動車にも及ばないのと同じことなのですが、そんなことすら分からなくなってしまうのが戦争なのでしょう。
随分と脱線してしまいましたが、次回はいよいよ最終仕上げを行います。
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続けて機体上面の塗装です。
下面色との塗り分け部分はマスキングゾルでカバーしておきます。
最終的に使用するのはMr.カラー124番、暗緑色(三菱系)という色なのですが、後に退色している表現をするためとモールド色である明るいグレーをそのまま下地色としてしまうと色載りが悪いので、まずはMr.カラー54番、カーキグリーンを塗ります。

あくまで下地ですのである程度筆ムラが残っても構いません。むしろ塗膜が厚くなってモールドが埋まってしまう方がボテっとした仕上がりになってしまいますので縦、横の一度塗り程度で終わりにします。
乾燥したら続いて機体上面色である暗緑色を塗装します。すでにベースにカーキグリーンを塗っていますので、シンナーで薄めた塗料で同様に塗装します。

とにかくラッカー系の塗料を使った筆塗りのコツは
一度に塗ろうとせずに、薄めた塗料を乾燥を繰り返しながら塗り重ねることです。面倒かも知れませんが、結果として部屋もそれほど汚さず、気楽に短い時間で作業できますので、作業環境に制限があったり製作時間の限られたモデラーには筆塗りを極めるのも楽しい作業ではないかと思います。
機体上面の塗装が終わったら保護のために塗っておいた下面部のマスキングゾルを剥がします。

機体上面と下面の塗り分け部分は波状のようですので、平筆ではなく丸筆でその部分のみを塗り分けます。機体が小さく、主翼も取り付け済みですので胴体部分の塗り分けに際しては機体を固定することが重要で、私の場合はカマボコ板を両面テープで机に貼り付けて固定冶具としています。

塗り分け部分は少しボカシを入れたいと思います。スプレー塗装の場合はこのボカシはマスキングテープを浮かせることにより比較的簡単に再現できるのですが、
筆塗りの場合は上面色と下面色を1:1に混ぜた塗料を境目に塗ることにより表現します。

もっと自然にボカシを入れたい場合は、さらに上面色と下面色を2:1と1:2に混ぜた塗料を先ほどの1:1で混ぜたラインの両端に描き込めばより自然な感じに仕上がります。
この筑波航空隊所属の実機も、元々は開戦初期に機体全面を明灰白色で塗られて工場からロールアウトし、後に基地で整備員により機体上面を暗緑色で塗装されたものと思われますので、ちょっと雑くらいで丁度良いのではと思います。
カウリングは艶消しのブラックとブルーを1:1に混ぜた色を塗ります。表面が乾燥したらカウリングの裏側はエナメルのブラックで塗っておきます。
排気管は胴体側にモールドされていますので、レッドブラウンにシルバーを少し混ぜた塗料で焼けた排気管を表現します。

胴体にエンジンを取り付けたらカウリングを接着します。1/72スケールだとエンジンは殆ど見えません(泣)


この段階で機体にデカールを貼り付けます。デカールの貼り付けには以前にご紹介したマークセッターを使って念入りに密着させます。特に機体番号などの余白部分があるデカールは注意が必要で、
クルマのモデルと違って塗装表面が荒れているために、透明なデカール部分が密着していないと白くボケて見えるシルバリングという現象が起こってしまいます。これを避けるためには念入りに透明な部分を切り取ってやればよいのですが、当然のことながら失敗のリスクも高まります。また、このキットのデカールには細かい機体の注意書きまで再現されているのですが、これらは後に貼り付けますので、この段階では日の丸と主翼下と尾翼の機体番号、主翼前縁の味方識別帯のみ貼り付けます。

この味方識別帯についてですが、実は日本の大戦機特有のものです。
空中戦に際して最も重要な点は、敵よりも早く相手を見つけることなのですが、さらに重要なことはそれが敵か味方かを瞬時に識別することです。自機に向かってくる飛行機が一番の脅威ですので、真正面から見えた姿から瞬時にそれが自機を攻撃してくる敵機か、自分を援護してくれる僚機かどうかを判断しなければあっという間に撃墜されてしまいます。しかし飛行中に敵味方を識別するのは容易ではなく、ましてや相手の機種を見分けるのはさらに至難です。

あの撃墜王として有名な坂井三郎氏も、後方機銃を備えたSBDドーントレス爆撃機の編隊を、

前方機銃しか持たない敵の戦闘機(F-4F ワイルドキャット)と見誤り、

不意打ちのために後方から接近した際に敵の編隊から集中砲火を浴びて空中で重傷を負うというミスをしています。
坂井氏はこのときに頭部に銃弾を受けてしまい、意識朦朧状態になりながらも奇跡的に帰還するのですが、右目の視力を失ってしまいます。普通であれば戦闘機はおろかパイロットとしての寿命は尽きてしまうのですが、その実戦経験の豊富さから戦闘機パイロットとしての復帰を果たします。もちろん本人もそれを望んだのでしょうが、次々と戦死するベテラン搭乗員の不足から、上司としても止むを得ない決断であったのでしょう。
そして片目のまま戦闘を続けた坂井氏は、またも敵味方を見誤ってしまいます。硫黄島の防衛戦が激化する最中、坂井氏は敵のF6Fヘルキャットの編隊を味方編隊と見誤り、

合流するために単機で接近してしまいます。敵のF6Fは15機の編隊で、15対1というとんでもない劣勢で空中戦を行うこととなってしまいました。それでも坂井氏は次々と攻撃してくる敵機を翻弄しながら脱出し、機体には一発の被弾もなかったと言われています。
日本に限らず、こうした空中戦の証言にはどうしても戦果を過大に解釈してしまったり、後に誇大に語られた部分も多く、事実かどうかは後世において様々な検証と敵味方の双方からの確認を必要とするのですが、この15対1の激戦はその戦闘に参加した米海軍パイロットの証言とも一致しており、当時の零戦対F6Fの性能差(圧倒的にF6Fが優位)を加えると、坂井氏が類稀な操縦技術と永年実戦に参加することによって会得した勝負カンを持っていたことが分かるエピソードです。
このように日本の大戦機が主翼の前縁にオレンジ色の帯を書いていたのは、正面から見たときにその色で味方であることをアピールするためで、仮に敵機にもそれでバレてしまったとしても、それ以上に同士討ちの方が問題だったのでしょう。
さて、普通であればこのままどんどん組み立てて完成!ということになるのですが、子供であればともかく、私はオトナですので(笑)、これからの仕上げ段階で幾つかのテクニックを使って実感を増して見ようと思います。
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仮組みによるチェックが終わったら、実際の組み立てを始めます。
まずはコクピットの組み立てです。昔の1/72の飛行機モデルはコクピットなどは「椅子がついていれば良い」という状態で、また実際にキャノピー(風防)をつけてしまえば殆ど見えないので、全然気にならなかったのですが、最近のキットではスゴいことになっています。ちゃんと零戦のコクピットが再現されており、計器板も三種ものデカールを貼り付けてそのメーター類を再現できるようになっています。また零戦が軽量化のためにあちこちに穴を開けていたのもちゃんと再現されています。


まずは機体内部色を筆で塗り、部分的にフラットブラック、シルバー、レッド、ブルーなどでスイッチ類などを塗ってやります。厳密な考証をしても完成してしまえば殆ど見えませんので、適当に塗ってしまいます(苦笑)。

さらにエナメルの薄めたフラットブラックを塗ってスミ入れを行い、使い込まれた機体をイメージして、ドライブラシと呼ばれる塗装方法なのですが、筆につけたシルバーを一旦拭き取り、コクピットの床に擦れたように塗ってやれば完成です。
零戦は機首に取り付けられていた7.7mm機銃の後部がコクピットに突き出しているのですが、それもちゃんと別パーツで再現されていますので、フラットブラックで塗っておきます。

エンジンはちゃんと栄21型複列星型14気筒エンジンが再現されています。出来上がってしまえば殆ど見えませんので、特に追加工作などせずに簡単にバリやパーティングラインを削って、筆塗りでメタリック色を塗って、部分的にシルバーでアクセントをつけて終了です。

胴体はコクピットを組み込んで左右のパーツを接着するという極一般的な構成となっています。パーツの合わせは良好ですので、特に加工をせずに組み合わせることができます。胴体の接着は、まず接着剤を塗らずに輪ゴムで部品同士を合わせます。そして流し込みタイプの接着剤(サラサラのもの)をパーツの合わせ目に付属の筆で数箇所に置いてやると毛細管現象でパーツの隙間に接着剤が行き渡ります。
充分に乾燥したらパーツの合わせ目を600番~800番のペーパーで磨いて継ぎ目を消します。1/72スケールと小さい飛行機ですので、削りすぎてしまうとそのダメージが大きいので、最初は多少作業性が悪くとも細か目のペーパーの方が安全だと思います。クルマや現用機と違って第二次大戦の飛行機ですので、表面はそれほど神経質にならなくても良いと思いますので、特に表面仕上げのための1200番以上の再ペーパーがけは必要ないと思います。

同様に主翼も貼り合わせます。

そして胴体と主翼を合体させるのですが、ここは少し合わせの悪い部分です。最終的にはパテなどで補修しなければならないと思いますが、それでも最小限にしたいのでできる限り接着段階で密着させたいところです。
写真ではQuick Gripというクランプを使っていますが、輪ゴムや大きめの洗濯バサミで充分ですので接着したら部品が浮いてしまわないように固定しておきます。

こうして接着してもやはり主翼と胴体との合わせ目に気になる箇所がありました。このレベルであれば、気にならない方には補修する必要はないでしょう。

しかし、私の場合はパテで埋めて補修することにしました。また段差ができている左翼の付け根部分をペーパーで削ってスムーズなラインとなるように整えます。
こうした作業をしているとスジ彫りが消えてしまうのですが、消えてしまったスジ彫りは最後に彫り直しておきます。スジ彫りの工具には最近様々な工具が販売されていますが、今回は一般的な
アクリルカッターを使います。
通常のカッターナイフと異なり、一定の角度で手前に引くとプラスチックに線を彫ることができます。一度に深く彫ろうとせずに少しずつ他の線とのバランスを見ながら彫り直すと修復することができます。このスジ彫りの補修についてはいずれ詳しくご説明したいと思っています。
後、一点間違いの説明ですが、仮組みの段階で尾翼を上下逆に組んでしまいましたが、本組み立ての際にはちゃんと正しく接着してありますので、もし気が付かれた方がいらっしゃれば「突っ込み」はご容赦ください(苦笑)。

まぁスケールも1/72ですので、あまり神経質にならずにある程度で妥協をして、作業を先に進めましょう。
まずは主脚収納部を機体内部色で塗っておきます。機体はジュラルミン製でその腐食防止のため、各国で異なる処理がされていたのですが、日本の場合は青竹色と呼ばれる色で塗られていましたので、まずはその色で塗装します。塗料が乾燥したらこれからの機体の塗装に備えてこの部分をマスキングしておきます。マスキングには
マスキングゾルを使います。

このマスキングゾルは昔から販売されているのですが、所謂、液体のマスキングテープで、塗って乾燥するとフィルム状となり、水溶性なので剥がすときに塗料を侵さないものです。乾燥したらはみ出した部分をあらかじめデザインナイフで切って取り除いておきます。
ちなみにマスキングゾルにはこうして後からカットできるものと、単にマスキングするだけでカットできないゴム系のマスキングゾルneoの両方がありますので購入する際には注意が必要です。
いよいよ機体の塗装ですが、まずは明るい下面色から塗ります。使用する塗料はMr.カラーの35番、明灰白色1と呼ばれるものです。
実は日本の大戦機の塗色については諸説あって、近年では様々な考証の結果から、三菱航空機(零戦など)で製造された機体と中島飛行機(隼など)では色が違うとか、初戦時の海軍機の機体塗装は明るいグレーではなく、少し黄味がかった飴色だったとか、過去の通説とは異なる事実が分かって来ました。しかし、私自身はあまり厳密に考えてはおらず、前回のストラトスの記事にも書きましたが、
遠くから見る大きな物体とそれをスケールダウンして近くで見るのとでは、人間の目が感じる色彩は異なった印象を与えるのではないかと思っています。
例えば、高速道路を走っていて遠くから見る山の緑が、近づくにつれ段々と濃く見えた経験がある方は多いのではないかと思いますが、これが光の反射スペクトルによる影響で、
距離があるほど可視光の屈折が大きくなり色が異なって見えるのです。また分光特性によって人間は色を識別しますので、全ての波長の光が乱反射する白と、光が反射しない黒との間にある様々な色は、その色がどう見えるかは単に距離だけでなく、
同じ条件で見ていても個々人によっても異なるものです。
つまり、
スケールの小さいモデルほど遠くから見ているとも言えるため、実際の色よりも明るめの色を塗ったほうが、人間の見え方に近いと言えるのではないかと思います。例えば同じ車種のカーモデルでも1/12と1/43では、1/43スケールの方に明るめの色を塗ったほうが人間の目の見え方に近いということになります。
また、塗装してすぐの色と紫外線で劣化した色は異なりますし、当時の塗料は現在のものと異なり劣化が早かったため、
自分自身のイメージに従えば、正解、不正解はないのではと思います。何せ、私自身は一度も当時の実際の零戦を見たことがないのですから・・・(笑)
缶スプレーやエアブラシによる今までの塗装法とは異なり、筆で塗る場合はどうしても筆ムラが発生します。それが味と言えばそうなのですが、なるべく均等に塗るために塗料を薄めて、一方向に塗ります。そして乾燥したら今度は90度向きを変えて同じ方向に塗り重ねていきます。つまり、縦、横と薄く塗り重ねることにより筆ムラを消してやることができるのです。
最初の1回目の塗装です。まだ色が充分載っていないので下地が見えます。

縦、横の塗装を2回繰り返した状態です。筆塗りでの塗装はどうしても塗膜が厚くなってしまいますので、表面を均す意味でも、最後はシンナーを大目に混ぜて薄めた塗料で塗ってやります。

ここまで筆塗りで塗装をしたのですが、ようやく気が付いたことがあります。それは機体表面のスジ彫りの深さです。キットを塗装前に見たときには日本製の最近のキットに比べて少し無骨かな・・・と思っていたのですが、こうして筆で塗装をした後に見ると、そのスジ堀りの深さも丁度良くなっていたのです。
前回のブログでも書きましたが、現在AIRFIX社と塗料メーカーであるHumbrol社とは同グループ内に位置しています。実際に全ての塗装指示はその
Humbrolの色番号で指定されていますし、AIRFIX社のキットの中にはスターターセットと称して、小分けにしたHumbrol塗料がセットされているものもあります。
ここからは想像なのですが、
このキットはそのお値段も含めて、子供がまだエアブラシなどという道具を使わず、筆塗りで仕上げることを前提として設計されているのではないかと思います。しかもHumbrolはエナメル系の塗料で隠ぺい力に優れており筆ムラも出にくいものですので、そのエナメル塗料の一回か二回塗りを前提として、このスジ彫りの深さや太さは決定されたのではないかと思えたのです。
プラモデルという産業がこれからも生き続けて行くためには、子供にこうしたアナログ的な組立作業を実際に体験して、「格好良い~」と満足してもらわなければ次はありません。私たちが子供の頃にはプラモデルで多くの挫折を味わいましたが、それに替わる趣味がそうそうなかったために、「よし、次はもっと・・・」とチャレンジし続けましたが、現代の子供は他の遊びがいくらでもありますから、仮に親がプラモデルを買い与えても、うまく作れなければそれで終わり・・・ということにもなりかねません。最近の日本のスケールモデルが大人に焦点を絞って開発されていることに対して、
AIRFIX社はまだこれからの顧客層である子供達の市場をアキラメてはいないのではないかと思います。
ヨーロッパではベルリンの壁の崩壊に伴い、プラモデルのマーケットが旧東欧圏の国々に拡大していると聞きます。それまで西側の素晴らしいキットに触れたことのなかった人々や、入手できたとしても法外な値段で購入していたモデラーがこれらの旧西側のキットを身近に手に入れることができるようになり、モデラーが続々と増えているようです。実際に旧東欧圏の新興プラモデルメーカーはマニアックなモデルを矢継ぎ早に開発し、西欧圏の大人のモデラーにアピールしていることに対して、イギリスのAIRFIX社が子供を対象にマーケットを掘り起こそうとしているのであれば、それは実に対照的な現象ではないかと思います。
いずれにせよ、このキットは普段エアブラシを使っているモデラーの方も、是非筆塗りで仕上げてそのAIRFIX社の意図の真偽を感じていただければと思います。
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テーマ:模型・プラモデル - ジャンル:趣味・実用
ようやく完成したLANCIA Storatos HFですが、その製作記事ではプラモデル工作のための様々な秘密兵器やエアブラシなど、これから模型を造って見ようという方に、少しでも参考になるように工具類を含めてご紹介してきたのですが、
これらの工具を一から揃えるとなると大変なのも確かだと思います。しかしこれらの工具がないとプラモデルが造れないかと言うとそんなことは全くなく、作業性が良くなったり失敗が少なくなるという効果はあるものの、私と違って手先の器用な方や老眼(笑)ではない方であれば、
身の周りにある道具に加えて最小限のものを買い揃えるだけで充分プラモデルの工作は可能だと思っています。
特にこれから模型を造ろうという方にとっての最大の障害はエアブラシではないかと思います。こと塗装に関しては私も子供の頃は筆塗りで仕上げていましたし、近年は
エアブラシによる塗装に関しては賛否両論あり、誰が作っても同じような個性のない作品になってしまうと敢えてエアブラシを使用しないモデラーもいるようです。
今回は敢えてエアブラシを使用せずに筆塗りでプラモデルを作ってみたいと思います。またご紹介してきた数々の秘密兵器?も極力使用せずに、なるべく普通の工具のみを使用してどこまで造れるかやってみたいと思います。

用意したキットは1/72スケールの零戦(正式には零式艦上戦闘機21型)です。なぜクルマのモデルではないかというと、クルマの場合はボディ表面の塗装を行うには残念ながらスプレー塗装が一番優れているのですが、
飛行機のモデルはその表現方法のバリエーションが多いため、筆塗りの塗装で造り手の個性を表現できるのです。
しかし正直言って零戦を造るのは40年ぶりで(苦笑)、しかも今回造るのはイギリスのAIRFIXというメーカーのものです。昔から零戦は日本各社のメーカーが一度はキット化した一般的な機種で、残念ながら
零戦に関して言えば日本製ののキットが一番優れているのは当たり前かも知れません。
ところがこのAIRFIX製の零戦を模型屋で見たときにビックリしてしまったのです。それは「新金型」ということでランナーについたままのパーツにスジ掘りのみにスミ入れをしてディスプレイされており、その機体表面の表現センスが素晴らしかったのです。
日本の模型メーカーにとって零戦のモデルは「鉄板」で(笑)、その時代の最新の考証に基づいて、如何にライバルメーカーのものと差別化をするかに苦心して造られているのですが、一方で力が入りすぎているというか今さらというか、頑張りすぎているところがどうも苦手だったのですが、このAIRFIX社のキットは他国の機種ということもあり肩の力が抜けおり、自然体で零戦を表現しているところに好感が持てたのです。
AIRFIX社はプラモデルメーカーの中でも老舗で、私が子供の頃は日本製のキットと比較すると数段優れており、「舶来上等」という価値観を身をもって体感したものでした。現在は世界のトップメーカーである田宮模型も、「いつかAIRFIX社のような模型メーカーになりたい」と目標にしたほどのメーカーでした。
当時のイギリスはAIRFIX、FROG、MATCHBOXと多くのプラモデルメーカーが存在したのですが、時代の流れの中でその殆どは活動を止めてしまいました。これらのメーカーの中でもAIRFIX社は1939年創業という歴史のあるメーカーで戦後にプラスチックモデルに参入し、業績を伸ばしたのですが1981年に倒産し、現在は鉄道模型のメーカーであるHornby社の傘下で再生しています。
以前は過去のモデルを再販していたのですが、最近は積極的に新しいモデルを開発するようになり、この零戦も新たに開発されたもので、新しい金型で新発売されたものです。加えて素晴らしいのがそのボックスアートで、敵機役がP-47という考証ミス(太平洋戦線には配備されていない)を除けば、これだけでも随分と得をしているキットだと思います。


零戦の中でも21型という初期の機体をモデル化しているのですが、このキットの魅力は一般的に再現されるであろう真珠湾攻撃に参加した空母艦載機のデカールではなく、箱書の説明では201空所属と書いてありますが(苦笑)、実際は
筑波航空隊所属機というおそらく日本のメーカーでは見向きもしないであろうマイナー?なカラーリングをチョイスしているのです。
しかもそのデカールはカルトグラフ製で、機体の細部の注意書までデカールで再現されているという贅沢なキットでありながら、昨今の円高のお陰でお値段は630円という信じがたい爆安価格なのです。
これが外国人の企画センスなのか日本製のキットとの差別化なのかは定かではありませんが、最近は別売りのデカールも販売されていますので、どうしてもメジャーな機体を再現したければこうした市販のデカールを使用することもできるでしょう。しかし、ここはAIRFIX社の企画センスに敬意を表して、付属するデカールの仕様で仕上げてみたいと思います。
この筑波航空隊は戦闘機専修搭乗員の教育を推進するため、戦闘機に搭乗するまでの訓練の最終過程を担当した訓練部隊で、主に予科練・操縦訓練生の中から戦闘機操縦の特性がある者を選抜し、実際の戦闘機を用いた最終訓練を行っていました。使用された戦闘機は解隊された大分海軍航空隊から移管し使用していたようですが、最新機種は前線に投入されていたためにこの零戦21型のように、開戦初期に活躍し、前線部隊が新型に機種改編されて余った機体が割り当てられたのであろうと思います。
訓練機であるこの機体には、地上から無電で指示ができるように機体下面に機体番号が書かれており、恐らく地上から機番を見ながら操縦指示をしたのでしょう。
筑波航空隊はこうして前線に戦闘機搭乗員を送り出す役割とともに、後に本土防空という実戦任務も行うようになります。操縦訓練を行っていた教官は同時に防空戦闘にも参加することとなったのですが、最後には特攻作戦に参加し、筑波航空隊所属であった教官の64名のうち55名が特攻により惨禍してしまうという悲惨な末路を迎えることとなります。
ちなみに筑波航空隊の跡は比較的多く残っており、飛行場があった跡地に建てられた県立友部病院の管理棟は司令部をそのまま転用しており、隊門やグラウンドもそのまま友部病院が活用しているそうですので、機会があれば一度訪れてみたいと思います。
模型を単に造るだけでなく、
こうした背景を調べて見るのもモチベーション維持には重要で、新たに発見することも多くあります。例えばこの調査からこの零戦21型は前線から戻ってきた使い込まれた機体であったことが分かりましたので、
ピカピカの新造機ではなく少しくたびれた感じを再現できたらと思います。

パーツ割はこんな感じで極平均的なものですが、それでも幾つか拘っている部分はあります。まずはエンジンで零戦に搭載されていた栄12型エンジンが素晴らしいモールドで再現されています。
次にこの零戦21型の特徴である翼端の折り畳み部分が伸ばした状態と折り畳んだ状態の両方を選べるようになっています。これは航空母艦に搭載することを前提とした設計で、格納庫内でのスペース効率を考えてのことなのですが、日本のメーカーであればともかく、よくイギリスのメーカーがこの設計をしたものだと思います。

チェックしているときに発見したのがプロペラの破損でした。輸入キットには良くあるのですが、輸送中の破損だろうと思われます。昔のAIRFIX社の1/72スケールのキットは箱にすら入っておらず、ビニール袋にパーツが入っているだけでしたので細かなパーツの破損などは当たり前で、子供だった私は交換してくれ…と言えずに泣き寝入りをしたものでした。今回は修復できるのでこのまま造ろうと思います。
外国製キットのもう一つの特徴は離型剤で、日本のモデルに比べると金型からパーツを抜くための油が表面に多く残っています。もちろんメーカーによって多少の差はありますが中性洗剤で念入りに洗っておかないと塗装をするときに塗料をはじいてしまいます。私は中性洗剤で洗いましたが、やはり不充分で塗装前に再度エナメルシンナーを使って脱脂しなければなりませんでした。
飛行機の模型にはポイントが幾つかありますが、そのうちの一番重要なのが機体全体のバランスです。クルマの模型はほぼ実車と同じ部品構成となっています。特にボディはほとんどの模型が一体成型ですので問題はないのですが、飛行機の模型の場合は実際の飛行機の構造とは全く異なっています。模型の胴体は左右に分割されて成型されているのが一般的ですが、実機の場合は胴体は最初から丸い状態で製造されています。また主翼も同様で、胴体を貫いた主桁を基にリブと呼ばれる構造材を組み合わせた上に外板を張っていくのですが、模型の場合は一体でモールドされています。ですので、
「仮組み」と呼ばれる主翼、尾翼、胴体といったメインのパーツをまずランナーから切り離し、最初に組み合わせて見るのです。そうすることにより全体のバランスや本来あるはずのない部品同士の隙間などをチェックし、その後の組み立ての際の修正箇所を予めチェックしておくことができます。
飛行機のモデルで重要なのが左右のシンメトリックで、もしパーツ割で左右の主翼が別々になっていると、その取り付けに際しては左右の角度を揃えることに注意をしなければなりません。そして機種にもよりますが主翼は胴体に水平に取り付けられているのではなく、機種ごとに固有の上反角度を持っており、厳密にではないにせよ、その角度も揃えなければ出来上がりが不細工なものとなってしまうのです。このキットのパーツ割は良く考えて設計されており、この飛行機モデルの佇まいを決める主翼の上反角の角度が狂わないように
主翼下部パーツは左右が繋がった状態で成型されています。
また、上下貼り合わせ式の主翼構造だと翼端のエッジが二重になってしまい見た目が悪いのですが、このキットは主翼後端を上翼パーツに一体で成型することによりエッジをシャープにしています。

しかし胴体と左右主翼上部パーツとの間に隙間ができてしまうようなので、この部分は実際に組み立てる際には修正が必要でしょう。一方で胴体の組み合わせは良好ですので左右の継ぎ目を消すのは造作ないでしょう。総じて言えば組み立てやすいパーツ割でよく考えてあるキットだと思います。
全体の形状はどこから見ても零戦で(笑)、大きくバランスを崩している部分はなさそうです。昔のキットは国内外産を問わず、飛行機には見えるもののその機種には程遠いものがあったのですが、さすがに現在はそんなことはありません。もちろん細かいことを言えばキリがないのでしょうし、特に飛行機のモデラーはその辺りにウルサイ方が多く、○○型のアンテナは・・・とか、この部分の絞込みはもっと・・・とか実際の考証と個人の主観とが入り混じった批評をする方が多いのですが、私自身は余程のことがない限り、細かいことにはコダワラないようにしています。特に
飛行機のモデルに関しては、それに拘って資料と見比べながら修正に修正を重ねて完成に時間がかかって疲れてしまうよりは、そんなことを考えずに組み上げてしまう方が楽しいと思っています。
という考えですので、零戦21型のここは・・・など細かい考証はせずに、まずはこのAIRFIX製のキットの良い部分を強調して組み立ててみることにしましょう。
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