さて気を取り直してClass-Dの出場車をご紹介しましょう。 1962年 PRINCE Skyline Sports Convertibleです。 1960年代以降に多く見られたイタリアのカロッツェリアとのコラボレーションの魁となったのがこのPRINCEのSports Convertibleです。ミケロッティのデザインによる美しいConvertibleはSkylineの中でも希少中の希少なクルマですが、当時の日本でこんなクルマを買える購買層なぞ殆どなかったために、多分に試作的な意味合いが強いモデルだったのでしょう。その細部の仕上げもとても採算が取れるとは思えない仕上がりでした。 ベスト・レストア賞を受賞したのは当然でしょう。
1964年 ALFA ROMEO Giulia TZです。 もはや何も言うことがないモデルです。この個体は昨年のCoppa di Tokyoに展示されていたのと同じクルマですが、そのコンディションは素晴らしく、仔細に眺めればTZのボディが実に複雑な曲面で構成されていることが良く分かりました。 ダイナースクラブ・ベスト・オブ・ザ・パブリック賞(一般投票による優勝車)を受賞したのですが、一般の方が見ても素晴らしいコンディションであったということでしょう。
1966年 DE TOMASO Vallelungaです。 私も初めて見たのですが、そのコンパクトなボディサイズとカロッツェリア・ギアによるスタイリングはとても魅力的でした。デ・トマソはイタリアの自動車メーカーの中でも波乱万丈なメーカーでしたが、それ故に残念ながら今はもうこの世にはありません。このクルマはその希少性からかクラス三位を受賞しました。
1966年 FERRARI 275GTB/4です。 個人的には250GTOよりもクルマとしては美しいと思っているのがこの275GTBです。確かにコンペティションモデルとしては250GTOのほうが遥かに有名ですし、その生産台数からも希少であることは確かなのですが、こちらのピニンファリーナによるデザインのほうが伸びやかなフォルムであると思います。その存在感故にクラス一位を獲得したのも尤もだと思います。
1970年 TOYOTA 2000GTです。 ロータスを参考にしたと言われているX型バックボーンフレームや当時のヨーロッパの様々なGTカーの影響を受けたと思われるスタイリングではあるものの、その全てが純粋に日本の技術で造られた2000GTは日本の自動車史に残る名車であることには変わりないでしょう。面白いことに単体で見るとバタ臭いスタイリングもこうして他のクルマと並べて見るとちゃんと日本車に見えるから不思議です。
1973年 FERRARI 365GTB/4 Daytonaです。前回に引き続き特別審査委員長を務めたレオナルド・フィオラバンティの代表作なのですが、歴代のピニンファリーナのデザインによるフェラーリの中でも特異な存在ではないかと思います。それは単にエレガントなだけでなくダイナミズムと融合したスタイルであることで、後のフロントエンジンフェラーリのスタイリングに多大な影響を与えたモデルであると言えます。クラス二位を獲得したのは決して審査委員長に気を遣ったからではないでしょう(笑)
1973年 MERCEDES BENZ 600 Pullman Limousineです。 異色の出品車と言ってよいでしょう。770Kグロッサーメルセデスやマイバッハの流れを汲む戦後のメルセデスですが、どうしてもヒトラーの愛車のイメージが見え隠れしてしまうのはクルマにとっては悲劇でしょう。それでも純粋にクルマとして見たときには極めて先進的で、ロールスやディムラーの独壇場であった高級リムジンの市場において、メルセデスが単に伝統あるプレステージだけでなくテクノロジーでもリードすることができたのがこのPullmanだったと思います。
1975年 FERRARI 365GT4/BBです。 高級スポーツカーマーケットで一人勝ち状態であったフェラーリをある意味で震撼させたのがランボルギーニ・ミウラで、そのミウラ・ショックに対する回答がこのフィオラバンティがデザインした365BBでした。時代はミッドシップでなければスーパーカーとして成立できないほどで、もはやフロントエンジンのDaytonaでは顧客を満足させることはできなくなっていました。
1948年 CISITARIA 202 SC Coupe by Pininfarinaです。 素晴らしいコンディションで鈍いシルバーのボディが照りつける太陽に輝き、実に魅惑的な色をしていました。 その先進的かつ美しいPininfarinaデザインのボディは、MoMAにおいて自動車として初めての永久展示品となりました。このクルマがクラス三位を受賞したのも当然でしょう。
1957年 ALFA ROMEO 1900CSS Coupe by Touringです。 戦後に量産車メーカーとして転進したALFA ROMEOが初めて発売したモデルが1900シリーズですが、その中でも最も高性能なバージョンがこのSprintです。Sprintの標準がこのトゥーリング社のボディで、後のBertoneデザインのGiulietta Sprintに大きな影響を与えました。その意味では重要なモデルでクラス一位を獲得しました。
1931年 ASTON MARTIN International Le-Mansです。 戦前のASTON MARTINは現在の高級スポーツカーというよりももっとコンペティション寄りのメーカーでした。 当時のライバルはブガッティやベントレーで、こうしたモデルを購入するユーザーは自らがレースに出場するためにクルマ選びをしていました。まだレースがプロフェッショナルドライバーのものではなかった旧き良き時代です。
1932年 FORD Model-A Cabrioletです。 T型フォードは世界初の量産モデルとしてあまりに有名ですが、その後継モデルがこのA型で、そのバリエーションの一つがこのCabrioletです。
1937年 ROLLS-ROYCE PhantomⅢ Sedanca de Ville by Hooperです。 今までの説明から難しいと言われているROLLS-ROYCEのモデル名も規則性がちゃんとあることがお分かりいただけたのではと思います。PhantomⅢですから最上級モデルの第三シリーズということになります。PhantomⅢの最大の特徴は当時の流行でもあるV12気筒エンジンを搭載していることなのですが、このV12気筒エンジンと聞くと思い出すのが傑作航空機エンジンであるマーリンエンジンでしょう。第二次世界大戦の連合国にもしこのROLLS-ROYCEのマーリンエンジンがなければ、戦争に勝利することができなかったのではとまで言われている技術がこのPhantomⅢには詰まっているのです。ボディ製作はコーチビルダーの名門フーパー社によるもので、クラス2位を受賞しました。
1938年 BMW 327 Cabrioletです。 昨年のコンクールに出品されたBMW328の発表後にデビューしたのがこの327で、328がスポーツモデルであったのに対して、この327シリーズはグランドツーリングカーという位置づけでした。そのスタイリングは実に先進的かつ洗練されており、河岸のイギリス車のスタイリングと比べると一時代違っているように見えます。
1909年 La Licorneというクルマです。Licorneとはフランス語でユニコーン(一角獣)のことで、La Licorneはそのユニコーンをエンブレムとして1901年から1950年まで自動車の生産を続けたメーカーです。何となくド・ディオン・ブートンに似ていると思っていたらこのクルマはド・ディオン・ブートンのエンジンを搭載したモデルでした。
1921年のBetley 3Litre Tourer by Gairnです。このクルマはBentleyが初めて製造したモデルで、この個体は現存するBentleyの中でも5番目に旧く、しかも製造されたときのボディがそのまま残されていることからトータルでは世界一旧いBentleyと言われている個体だそうです。最もオリジナル性が保たれているクルマということで日本クラッシックカー賞を受賞しました。
1926年 Bugatti Type 37Aです。Type37は直列4気筒1.5Lエンジンを搭載しており、さらにこの37Aはスーパーチャージャーを装備してGPマシーンと同等の性能を発揮したと言われています。日本に限らずクラッシックブガッティの人気は近年さらに増しており、日本に新しくやって来るクルマも増えているそうです。いずれも丁寧にレストアされているのが特徴で、このクルマはクラス3位を受賞しました。
1927年 Rolls-Royce Phantom Ⅰ Tourer by Bakerです。有名なシルバーゴーストの後継モデルとして発表されたのがこのPhantomで、その後もPhantom Ⅱ,Ⅲ…とPantomはロールスの最上級モデルとして君臨し続けます。