アルファ・ロメオの天国と地獄

アルファ164Q4を始めとする「ちょっと古いイタ車」にまつわる天国と地獄をご紹介します。実はどちらも天国だったりして・・・??

海外部品輸入地下組織のオシゴト

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いつの間にか海外から部品を調達するようになってしまいました。
当初は自分のために始めた輸入で、一番最初に輸入したのはアルファ・ロメオ、フィアットの部品を扱うアメリカのInternational Auto Parts(IAP)からだったと思います。その後にイギリスのDemon Tweeksなどにもオーダーするようになったのですが、一般的な通販と同じで、在庫の照会から発送手配まで各社毎に対応が異なっており、新しい相手にオーダーする場合は、本当に無事に届くかヒヤヒヤしたものです。それでも頼んだ部品が到着して、その中味を検品するのは楽しみで、いつの間にか日本国内で欠品している部品だけでなく、その他のものも頼むようになり、さらに現在では自分のための部品というより、仲間のための代理手配ばかりとなってしまっています。

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殆どのユーザーは通常は整備工場が部品をオーダーして交換してしまいますので、こうして部品に触れたりする機会はないのですが、個人で部品手配をするとその部品を詳細に観察することができるため、金属加工の精度であったり、その構造や材質を見て、壊れるべくして壊れたことを妙に納得できたりして、それだけでも手許に部品が来ることは随分と勉強になったと思います。
もちろん海外で部品を調達する最大の理由は国内では手に入らないからなのですが、この手に入らない・・・というのが曲者で、自動車部品には様々な流通経路があり、一概に手に入らないとは言えない部分もあるのです。

アルファ・ロメオを例に取ると、通常の調達ルートはインポーターであるフィアットグループ・オートモービルズ・ジャパン(旧FAJ)からとなります。インポーターは責任在庫として自分達が輸入したクルマの部品は日本国内で在庫を持っていますので、殆どの整備工場はこの調達ルートで部品をオーダーします。ディーラーなどは在庫データベースの端末を持っており、その場で在庫の有無を確認することができますので、もし幸いなことに国内で部品があれば、中1日程度で部品を手に入れることが可能です。しかし、不幸にも国内在庫がなく、本国在庫であった場合には暫く待たなければなりません。これが一般的に「本国オーダー」と呼ばれているもので、1個の部品をイタリアから日本に送るのはあまりに不経済ですので、通常は数ヶ月に一度、まとめてこうしてオーダーされた部品が送られてきます。タイミングがうまく合えば1ヵ月程度で部品は届くのですが、最悪だと半年ほど待たされる場合もあります。

そして本国在庫もない場合は、「欠品」という状態になるのですが、欠品にも2種類あり、一次的な欠品で再生産されるものと、生産中止によりもう二度と手に入らないものがあるのです。
本国の在庫データベースを確認すればそのどちらであるかが分かるそうなのですが、再生産予定のある欠品であったとしても、その再生産がいつになるかは、何せ相手はイタリア人ですので、「神のみぞ知る」という状態ですから、もはやこれは「手に入らない」と考えるのが妥当でしょう。
以上のように、正規の部品ルートでは国内在庫でない場合はまずアキラメるのが普通で、殆どの整備工場は国内在庫がなければ、この時点で投げ出してしまうのが当然だと思います。

それでもアキラメられない場合は、国内二次ルートと呼ばれる独立した部品問屋に在庫を照会することになります。現在では大阪藤栄商会とキオラパーツセンターが有名ですが、これらの問屋は独自のルートで入手した部品を在庫で持っていますので、正規ルートで欠品となっている部品も在庫していることがあります。

通常はここまで探してなければ日本国内にその部品はない・・・ということになりますが、更にスペシャルショップは自分達の顧客のためにこうした手に入りにくい部品を持っている場合があります。
しかし、残念ながらそれを探す方法は、一軒一軒聞いてみるしかありませんし、もし仮にあったとしても前記のように、これらの部品はあくまでその店の顧客のための部品ですので必ずしも売ってくれるとは限らないのです。

こうなると海外で部品を探すしかないのですが、海外でもこの部品調達の構造は同じで、アルファ・ロメオを販売している国の通常ルートで探して国内在庫があればOKですが、仮に在庫が無いと結局イタリア本国オーダーとなり、日本からオーダーするのと同じ結果となってしまいます。しかし、アメリカなどは上記の二次ルートが充実しており、実際に様々な欠品部品が独自に再生産されて在庫されているのです。しかし、一方でこういった再生産品の中にはオリジナルとはかけ離れた粗悪なものがあったり、反対にオリジナルよりも改良され遥かに素晴らしい品質のものもあったりで、その見極めが重要となってきます。
さらに、OEM品と呼ばれているものの情報も重要です。これはアルファ・ロメオに部品として納入していた外注メーカーが独自に販売している部品で、基本的には純正部品と同品質です。しかし、アルファ・ロメオの在庫データベース上には表示されないために、この部品はどのOEM部品が適合する・・・という情報を持っていなければ手配ができません。
そして加えて言えば、ちょっとした加工で取り付けることができる部品や、分解して一部を取り替えることにより再生できる部品の情報など、裏ワザに類する知識も必要で、こうした情報を総動員して部品を調達してくるのですから、その部品を手にするまでのストーリーは本当にエキサイティングなものとなるのです。

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(115Spider用のフロントライトリムです。国内の二次ルートで現在も入手可能ですが、お値段は倍ほど違います。)

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(アルファV6エンジン用のカムシャフトギアです。こんな部品も海外からならば入手することができます)

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(必ず一度は破れるアルファ164用のヒーターコアです。もはや国内在庫はない部品です)

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(これは裏ワザ部品です。アルファ164用の燃料ポンプですが、通常の部品は外側のケースと一体となっており、生産中止品です。しかし交換するのは内部のポンプ本体のみですので、該当するものをOEM製品で探し出し、燃料ポンプをバラして取り替えることにより、燃料ポンプを復活させることができます)

ここまでお読みいただければお分かりかと思いますが、海外で部品を調達するには・・・、

1.いかに多くの国にネットワークがあるか
2.再生産品の品質評価が適確であるか
3.OEM製品の適合情報を持っているか
4.裏ワザ?の知識があるか

があることに加えて、代金決済の方法や処理の仕方が妥当であるか、パッキングの丁寧さ、メールのレスポンスなど、通常の通販業者としての標準的なレベルをクリヤしている業者といかに出会い、そしてお互いの信頼関係を構築できるか・・・に繋っていると思います。

現在は紆余曲折があったものの、Alfissimo Internationalというアメリカの業者に出会うことができたため、こうしてありとあらゆる手段により部品を調達しているのですが、アルファ164を手放してしまった現在のほうが、以前よりアルファ164の部品に詳しくなっているのもフクザツな心境です(苦笑)

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悲しきA112

街中を歩いていても、ついイタリア車には目が行ってしまうものです。
アルファ・ロメオはもちろんのこと、それは走り去るマゼラーティであったり、下品な爆音のフェラーリだったりもするのですが、ちょっと使い込んだFIAT PANDAなんかが荷物満載で走っていたりするとそのオーナーの生活感までも好ましく思えてしまうのは、イタリア車を単なる実用車ではなく、ライフスタイルを表現する車として見てしまうからなのでしょう。

しかし一方で、放置されているイタリア車を見かけると、悲しくなると同時に何とかならないものか・・・と思ってしまうのも悲しい性で、それがジャンクヤードではなく、街中の駐車場などで見かけてしまうと、胸が締め付けられるような思いがしてしまうのです。

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私の職場の近くのある駐車場にいつもぽつんと駐まっているのが、このアウトビアンキA112 ABARTHです。
以前の「地獄クルマを訪ねて」でもご紹介したモデルですが、従来からABARTHが直接手がけた最後のモデルとして人気があり、新生ABARTHの復活とともに更に注目を浴びているのがこのA112 ABARTHなのですが、現在の軽自動車よりもコンパクトなボディに、最終モデルでは排気量1050ccにまで拡大され、出力も70hpにまで高められたエンジンが搭載されていました。ちなみに車重は700kgですから、ホットハッチとしての資格は充分で、実際にも小気味良いドライビングが楽しめるクルマです。

搭載されるエンジンは直4OHVで、それを横置きに搭載し、さらにエンジンの脇にトランスミッションとデフを配置し、不等長のドライブシャフトで前輪を駆動するという「ダンテ・ジアコーサ式FFシステム」が採用されていました。このシステムは先にランチア・プリムラとFIAT128に採用されたシステムで、フィアットのダンテ・ジアコーサが考案し、後の世界中のFFシステムに大きな影響を与えることになったのですが、A112にはこの技術の試験量産版という役割が与えられており、本来ならば短命で終わるはずのモデルでした。

確かにA112を語るときにその先進的とも言えるメカニズムも重要なのですが、やはりABARTHというチューナーの存在の方が今となっては重要で、FIAT130TC ABARTHと並び、「最後のABARTH」と呼ばれるA112 ABARTHの存在は、それゆえに試験的量産車であったA112が20年間の長期に亙り生産され続けることになった原動力でした。特に日本ではこのA112 ABARTHの人気は高く、その可愛らしい外見に似合わず、ドライビングは限りなく硬派で、Mini CooperSと並んで、「ナメてはいけないクルマ」の代表格でした。

そんなA112 ABARTHですが、やはり廉価な小型車の宿命でどんなに大切に乗ったとしても、外板の錆、内装のソリ、剥がれによりどんどん朽ち果ててしまい、現在の生存個体は何らかの形でレストレーションの手が入っているものが殆どです。
そんな貴重なA112 ABARTHなのですが、この個体はいつ見ても動いた形跡がなく、ずっとこの場所に佇んでいます。

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思い切って近づいて観察して見ると、雨風による汚れが酷く、一見すると朽ち果てる寸前に見えたのですが、意外にそのボディはしっかりしています。

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すぐ劣化するバッジ類も揃っており、見かけによらず程度が良いのです。

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汚れた窓越しに室内を覗いてみたのですが、シートもオリジナルで破れもありません。
また、すぐに割れてしまうダッシュボードも綺麗な状態を保っています。

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タイヤは空気が抜けてしまっていますので、このままでは走ることはできないでしょうが、ホイールはオリジナルのアルミホイールが装着されており、これまた貴重品です。

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マフラーはオリジナルのマルミッタ・アバルトかどうか定かではありませんが、残念ながら錆が出ており、恐らく排気漏れしていると思われます。

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直感だけですが、この個体の素性はなかなかのものだと思います。もちろんこのままでは朽ち果てて行くだけで、すぐにスクラップとなってしまう運命だとは思いますが、今ならば少し手を入れるだけで随分と程度の良い状態に戻せるのではないかと思います。
ナンバープレートを見る限り、新車から乗り続けているオーナーではないと思いますが、何とか大切に維持してもらいたいものです。

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憧れのポケール

私の手許には、恐らく後の人生で全て作れるとは思えない程のプラモデルがあります。そしてそれらは一度は「組み立てた」ものなのですが、その組み立て方は殆どのモデラーが一度は罹患する「積んどく病」という病気によるものです。

この病気は別名「未完成病」とも呼ばれ、プラスチックモデルを買うと、箱を開けてパーツを検分し、組み立て説明書を見ながら、あそこをあーして、こーして・・・とアタマの中で組み立ててしまうというもので、それをひとしきりやった後は、「とりあえず」満足してしまい、キットそのものは積んで置かれてしまうこととなります。かくして、どんどん実際には組み立てていないキットばかりが溜まっていくという副作用を生むことになるのです。

そして、そのアタマの中でのシュミレーションで、恐らく二度と箱を開けることのないものと、ひょっとしたら本当に作るかもしれないものに分類されるのですが、二度と箱を開けることのないものとは、あまりにパーツ割やバリが酷かったり、自分のスタンダードレベルで完成させるためには相当の改造を要すると判断されたものなのですが、じゃぁ何故そんなキットを買ったのか・・・と言うと、これまた悲しい性で、以前の記事でご説明した「一期一会」の法則に従ったまでのことなのです。

それらは圧倒的に輸入キットに多く、店頭で一度手にしてしまうと、「これを逃したら二度と手に入らない・・・」という脅迫観念に襲われ、気がつくと買ってしまったものなのですが、そんな中にあって、永年そのどちらにも分類できずにいたキットがポケール社のFerrari Testarossaです。

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サイズが分かるようにタバコの箱を一緒に写してみました。1/8スケールを実感していただけるかと思います。

ポケール(Pocher)社はイタリアの精密模型メーカーで、その1/8スケールという大型模型はワンオフで作られるハンドメイドのモデルと競合するほどの出来栄えでした。素材はプラスチックをメインにしていながら、ボディはダイキャスト製の焼付け塗装済みで、併せてその個々の部品に様々な素材を組み合わせて作られたキットはマニアの垂涎の的となっていました。
設立当初はごく普通のプラスチックモデルを製造していたポケール社ですが、その精密射出成型の技術に目を付けた、同じくイタリアのリバロッシという鉄道模型のメーカーの傘下に入ります。
リバロッシは精密な金属製の鉄道模型を製造しており、これからの素材としてのプラスチックに着目していたからなのですが、奇しくもポケール社はこのリバロッシの傘下に入ったことにより、一方で精密な金属部品の製造が可能となり、勇躍1/8スケールという前代未聞の組み立てキットを開発することになります。
当初、選ばれた題材はクラッシックカーのラインアップでした。大スケールのこれらの自動車模型のマーケットは完全にオトナのもので、実際のクルマが買えるほどの大金を投じてハンドメイドの模型を購入する顧客層があったため、その高価な値段でも充分販売が可能だと考えてのことでした。
特筆すべきはリバロッシ社の金属加工技術を導入したワイヤースポークホイールで、その素晴らしい出来栄えがなければ1/8スケールという大スケールでのクラッシックカーは成立しなかったでしょう。

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ずっしりと重い箱を開けると整然とパーツが詰まっています。

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ダイキャストパーツは焼付け塗装されています。ボディシェルは強度も充分で経年変形もありません。

ロールス・ロイス、ブガッティ、アルファ・ロメオ、メルセデス・ベンツなどの戦前のモデルが続々と開発され、その精密な出来栄えにマーケットは目を見張りました。もちろんそのお値段も超弩級で、発売当時は為替の問題もあったとは思いますが、優に5万円〜10万円近くしたと記憶しています。
後に、クラッシックカーのラインアップから手を広げ、今回ご紹介するFerrari TestarossaやF40、さらにポルシェ911など現代のクルマも手がけるようになったのですが、従来と同じコンセプトで作られた1/8スケールのこれらのキットはどれもが決定版と呼べるもので、モデラーなら一度は作ってみたいと思わせるものでした。

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プラスチックパーツです。パーツ割りや部品点数は標準的だと思いますが。やはり1/8スケールだと全てが大きいです。

しかし、その後のポケール社は様々な問題を抱えることになります。一番の問題が版権で、ロールス・ロイスやフェラーリのモデルを新規に開発したり販売できなくなってしまいました。また親会社であるリバロッシが倒産してしまったこともあり、現在は活動を完全に休止しており、ポケール社そのものが倒産したのかどうか定かではありませんが、結果としてポケール社の全てのモデルは絶版となってしまいました。確かに再販を願う声は世界中にあるのですが、版権の問題に加えて金型の権利、製造技術などの点から、他社においてもおいそれと再販はできないと思われます。

日本に輸入されたポケール社の製品は少なく、このTestarossaも苦労して入手したのですが、さすがにこれだけのキットとなるとアタマの中でシュミレーションするのも困難で、買ったは良いけど放置してあったというのが実情です。
内容はご覧のとおりで、組み立て説明書を見るだけで、実車の構造が分かる優れものです。ただし、組み立てることを前提に良く見ると、この説明書は結構不親切なところもあり、田宮模型の組み立て説明書のように、そこに書いてある通り組めば出来上がる・・・というシロモノではありません。

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例えばエンジンパーツだけでもこれだけの部品が用意されており、パイピング程度で特に追加加工をせずとも精密な水平対抗12気筒エンジンが組みあがります。と書きましたが、このキットの組み立てには結構な組み立てスペースと、それなりの技術が必要ですので、初めてモデルを組み立てる・・・というヒトには向かないと思います。また、前述したように組み立て説明書の不親切な部分は、作り手がある程度自動車の構造を理解しているという前提でのもののようですので、それらの知識も多少は必要かと思います。

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オークションなどを見ていると完成済みのものはたまに出品されていますが、全くの未組立品は殆ど見ませんので、どうやらこれは貴重品のようです(苦笑)
しかし、このまま持っていても一生組み上がるとは思えませんので、どなたかちゃんと組み上げてくださる方にお譲りしようと思います。
オークションに出品していますので、欲しいという方は是非入札をお願いしますね(笑)

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バブルの功績〜アルファ・ロメオの広報誌〜その弐

前回ご紹介したアルファ・ロメオの広報誌の日本語版「Quadrifoglio」に関しては、予想外に多くの反響をいただきました。それらは「懐かしい・・・」というものから、「初めて見た・・・」というものまで様々なのですが、懐かしいと感想をお寄せいただいた方の中にもどこかに失くしてしまった・・・という方もおり、今回ネタにさせていただいたことで、改めて残念がっていらっしゃるようです。

こうしてブログを書いていて思うのですが、文章を世の中に残すというのは結構難しいことで、単行本として世に出たものであれば、例え売り切れたとしても再版されれば、半永久にその文章は世の中に出続けることとなります。一方で雑誌などは一度印刷されると追加されることはありませんので、その記事は基本的には読み捨てられてしまうのが運命で、一度発行された雑誌の記事はそのダイジェスト版(最近の流行のようですが)などが出版されない限り、ヒトの目に触れ続けることはありません。さらにご紹介している広報誌などはもっと悲惨で、それを発行した企業ですら保管していないケースが多々あるのです。

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そんな儚い雑誌や広報誌の記事の中にも、読み捨ててしまうのはあまりに勿体無い力作が多々あり、今回ご紹介しているアルファ・ロメオの広報誌もその中の一つだと思います。
手許に送られてきた当時は、創刊号の内容の濃さに驚いたものですが、こうしてご紹介するために改めて全体を読み返してみても、その驚きは色あせることがありません。
本日ご紹介する第2号は創刊号から半年後の1992年6月に発行されたもので、創刊号に負けず劣らずの内容です。

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巻頭特集は創刊号と同様にイタリアの文化を紹介したもので、「ベネチアと肩を並べるもうひとつの水の都トレヴィーゾ」と題して、日本人には殆ど知られていないもう一つのイタリアの水の都を紹介しています。

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ベネチアが海水の都であることに対して、トレヴィーゾはアルプス山脈の伏流水が流れ込む真水の都で、中世にベネチアを外敵から守るための要塞都市として築かれ独特の文化を持つ街・・・だそうです(苦笑)

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他の広報誌と一線を画すのがこの「Quadrifoglio」で、新型車であるアルファ155の紹介記事がなんと見開き1ページしかないのです(笑)
本来ならば大々的に採り上げるべき題材も、そんなものをこの広報誌の読者が望んではいないことを良く知っているのか、自分たちがどーでも良いと思っているのか・・・不思議な広報誌です。

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そして遥かに多くのページを使って特集しているのが、「アンティーク時計の歴史にその名を記した逸品の輝き」と題した、機械式のアンティーク腕時計の紹介ですから恐れ入ります。

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そして続けて特集されているのが、「ハリウッド黄金時代のスターが愛した名車たち」と題して、パリのバガテル公園で開かれたエレガンス&レストレーション・コンクールの模様を紹介しています。

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ここで採り上げられているのは往年のハリウッドスターが所有していた名車たちで、その中にちゃんとアルファ・ロメオも含まれています。
戦前から富の象徴はロールス・ロイスではありましたが、それだけでなく、ブガッティ、イスパノ・スイザ、デューセンバーグなどと並んで、アルファ・ロメオもそのスポーティさからハリウッドスターに愛されたモデルであったことが分かります。

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そして、「サーキットを駆ける百戦錬磨マシンと若き精鋭」と題して、イタリア国内レースで活躍する新進ドライバーとそのマシンを紹介しているのですが、日本では殆ど知られることのないイタリア国内レースの事情が分かり興味深い内容となっています。

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紹介されている写真はどれも美しくも、珍しいものばかりで、やはり日本語で読めることがありがたいその記事の内容とともに楽しませてくれます。

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最後は創刊号からのシリーズ企画で、「レースに勝てるファミリーカーづくりに燃えた男たちの栄光と挫折」と題して、カロッツェリアの歴史を紹介しています。

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その栄光側はスタビリメンティ・ファリーナで、その創設者であるジョヴァンニ・ファリーナとその弟であるピニン・ファリーナの存在により、現在までもカロッツェリアの代表的会社として有名であるのに対して、挫折側はファルコで、あの有名なアルファ・ロメオのワークスドライバーであったアントニオ・アスカリの兄であるヴィットリオ・アスカリによって設立されたファルコ社は、後にその営業譲渡によりツーリング社にその業務は引き継がれ、社名は消滅してしまうという運命を持つ会社です。

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それにしても何という広報誌でしょうか。確かに新型車の紹介は他の自動車雑誌などに多く特集されていますし、広告も出していますので、わざわざ広報誌で採り上げる必要はないのかも知れませんが、社運をかけてFIAT Tipoとシャーシーを共有し、FF化した新型ベルリーナであるアルファ155よりも、昔のカロッツェリアの紹介に遥かに多くのページを割くような編集方針は、本気で広報誌を営業ツールとして考えているとは思えません。

それがアルファ・ロメオの良いところと言えばその通りなのですが・・・(笑)

次回は第三号の内容をご紹介したいと思います。

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バブルの功績〜アルファ・ロメオの広報誌〜その壱

ようやく底を打ったと言われているこの不景気ですが、生活者としてはあまり景気が上向いているという実感はありません。
それでも、大型電気量販店に行くと、品定めをする客でごった返していますので、実際に買うかどうかはともかく、消費者の購買意欲は戻りつつあるのかも知れません。

そんな中で、最近何かと引き合いに出されるのがバブル景気の時代のことで、あの狂乱の高景気の中で、個人も企業も投資/消費に明け暮れていた時代は、現在の不景気な時代からすると、その後のバブル崩壊の悲劇より、楽しかったことのほうが取り上げられることが多いような気がします。

企業も潤沢な経費予算を使って、税金を払うよりは・・・と随分無駄なこともしましたが、その中でこのときとばかりにそれまで経費予算がつかず、作ることの出来なかった社史や広報誌などが続々と発行されたことは意外と忘れ去られてしまっているようです。
当時は、制作会社や出版社などから多くの企画が寄せられ、本当に立派な装丁の社史が作られたものです。こういった企画を実現するには調査や編集に膨大な経費がかかり、また出来上がった本も売るためのものではなく、社員や関係者に配ってしまうので、100%企業の持ち出しになるのですが、バブル景気の追い風を受けて制作されたこれらの社史は、今尚、企業にとってはかけがえのない財産となっていることを思えば、あの狂乱も決して悪いことばかりではなかったと思えます。

広報誌も同様で、おおよそ直接的な販売に結びつくとは思えない広報誌が続々と制作されました。当時は「企業メセナ」(文化活動)という名のもとに企業の製品やサービスのPR活動だけでなく、直接的には関係のない題材も取り上げられ、中には学術的にも価値のある研究論文などもあったのですが、もちろんバブル崩壊とともに真っ先に予算が削られ、これまた泡のように消えてしまいました。
しかし、これらの社史や広報誌はその企業の製品の変遷を記した歴史的な資料としても価値があり、その多くが非売品であったこともあり、現存するものは少なく、古書店ではコレクターズアイテムとして高値で取引されたりしているそうです。

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私の手許に3冊の広報誌があります。それはアルファ・ロメオのインポーターであったフィアット アンド アルファ ロメオ ジャパン株式会社が発行した広報誌「Quadrifoglio」で、バブル景気の最中である1991年のクリスマスにその第一号が発行されたものです。
定価1500円で販売されていたこの広報誌は、当時の新車オーナーには無償で配布されており、私のところにも定期的にコーンズ・モータースより送られてきていたのですが、第三号が1993年の4月に発行されて手許に送られてきたのを最後に途絶えてしまいました。

その広報誌の内容は、他の自動車メーカーがクルマを販売するために制作した広報誌とは一線を隔しており、広報誌という目的を超えてイタリアとアルファ・ロメオの文化を紹介したものでした。
本国ではすでに定期的に発行されていたのですが、その広報誌の日本語翻訳版が発行されたということは、当時のアルファ・ロメオが日本の市場に注目していたことを窺わせます。
その、巻頭言にはこのように書かれています。

(前略)
「発行の目的は、日本の多くのアルファ・オーナー、あるいはアルファを愛してやまない方々に、その歴史と伝統についてはもちろん、イタリアの生活の様式、文化、気候風土などをご紹介するためにあります。アルファ・ロメオの神話は、イタリアの価値観と、伝統ある文化や歴史が礎になっていることを読者のみなさんに少しでも実感していただければ幸いです。」
(後略)

当時のアルファ・ロメオは日本人に単にクルマを売るのではなく、イタリアの伝統ある文化を代表するものとしてアルファ・ロメオを紹介しようとしていたことが良く分かります。
それがこの広報誌によって成功したかどうかはともかくとして、まだ1991年当時には、アルファ・ロメオを買うということは、それを数あるクルマの選択肢の中から選ぶのではなく、オーナー自身がアルファ・ロメオでなければならない理由を持っていたと思います。

そんな気合の入った時代のアルファ・ロメオの広報誌の内容を第一号から少しご紹介しましょう。

第一号は4つの特集から構成されています。

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まず最初は「歴史の中から姿を消したエトルリア人の謎」と題して、ローマ時代より前に近代的な文明を確立していながら、消え去ってしまったエトルリアの遺跡を紹介し、近年の考古学によるその検証を紹介しています。これを創刊号の巻頭特集に持ってくるあたりが、イタリアの文化を紹介することも目的としたこの広報誌の高い意識を感じます。

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次の特集は「マニアを驚嘆させた5+1リラの切手」と題した記事で、世界各国で発行されたアルファ・ロメオを図案とした切手を紹介しています。
これまたマニアックな記事で唸らせてくれます。

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ようやく本来の広報誌らしい?記事が「世界で最も速く走る車をつくった男、ウーゴ・ザガート」で、ZAGATOの歴史を紹介しています。この記事は14Pにも亘っているのですが、実に良くまとめられており、私もブログの参考にさせてもらっています。

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そして、最後が「つねに貪欲な挑戦者であり続ける職人たち、カロッツェリアの歴史」と題した戦前から戦後の中小カロッツェリアを紹介した記事は素晴らしいもので、名前すら知らない零細なカロッツェリアを丁寧に紹介しています。
Allemano、Balbo、Boano、Boneschi、Borsani、Brianza、Campari&Sorniotti、Casaro、Colli、Dvx、Ellena。
さて、皆さんはこの特集で紹介されている上記のカロッツェリアのうち幾つご存知でしょうか?

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この広報誌が発行された当時、私は広報業務も担当しており、制作会社からサンプルとして様々な会社の広報誌をいただき、目を通していたのですが、それらと比較してもこれほど読み応えのある広報誌を私は知りません。
このまま続けて発行されていれば・・・と思いますが、予算的にはムリなことだったでしょう。
有料でも良いので再開してくれないでしょうか・・・。

次回は第二号をご紹介しましょう。

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